ラスト・クリスマス

雪の中で見つけた絆

「雪の中で見つけた絆」

雪が舞い散る中、ユキとトモヤはリフトを降り、スキー場の広大な雪原へと足を踏み入れた。雪は新雪が積もり、まるで絵画のように白く輝いている。トモヤはユキの手を引き、足元に注意しながら歩く。

「寒いけど、なんだか気持ちがいいね。」
ユキが深呼吸をしながら雪の香りを楽しんだ。冬の冷たい空気は、どこか清々しく感じられる。

「そうだな。ここで過ごす時間、ずっと前から楽しみにしてた。」
トモヤが少し前を歩きながら振り返り、微笑んだ。ユキはその表情を見て、自分も自然と笑顔になる。

二人はスキー場のロッジに向かって歩きながら、日常の喧騒から離れ、冬の静けさに包まれていた。どこまでも続く雪の大地、白く輝く景色に心が落ち着く。

「そういえば、あの時のこと、ちょっとだけ思い出した。」
ユキがぽつりと呟いた。トモヤがすぐに反応する。

「何か思い出すことがあったの？」
ユキは少し悩んだように息をつき、続けた。
「タカシと…別れたこと。あの時はすごく辛かったけど、今思うと、あれがあったからこそ今の私がいるんだって感じる。」
トモヤは少し黙ってユキの隣を歩きながら、優しく彼女の肩に手を置いた。
「うん、それに、今は俺と一緒にいるんだよ。」

その言葉にユキは思わず目を伏せる。雪の上に落ちる自分の足跡を見ながら、彼女はしばらく黙って歩いた。
「あの時は、どうしても自分が足りないように感じて、タカシを追いかけていた。でも、今はトモヤといることで、自分を認められるようになった。」
ユキは振り返り、トモヤの顔を見た。その顔にはどこか安らぎを感じさせる優しさが漂っていた。
「トモヤと過ごすことで、私はもっと自分らしく生きられる気がするんだ。」

その言葉にトモヤは微笑みながら、ユキの手を握り直した。二人はスキー場の中を歩きながら、徐々に心が通じ合っていくのを感じていた。雪の中で交わす言葉一つ一つが、二人の絆を深めていくようだった。

しかし、突然、ユキの目に知った顔が飛び込んできた。ロッジの入り口付近で、タカシが新しい彼女と一緒にいるのが見えた。彼女は長い髪を軽くまとめ、スポーツウェアに身を包んで、笑顔でタカシと話している。

ユキは立ち止まり、トモヤの手を少し強く握った。心の中で思わずタカシと新しい彼女を見比べてしまう自分がいた。彼女は、以前の自分が抱いていた理想にぴったりだった。ユキが感じたのは、どこか嫉妬のような、または劣等感のようなものだった。

「大丈夫？」
トモヤが心配そうにユキの顔を見て言った。ユキは一瞬、深呼吸をしてから、穏やかに答える。
「うん、大丈夫。私はもう、過去に縛られたくないんだ。」

そして、ユキは思いきってタカシと目を合わせることなく、トモヤの手を引いてロッジへと向かって歩き出した。雪の白さが、今の自分を照らし出しているように感じられた。