ラスト・クリスマス

銀杏並木の約束

「銀杏並木の約束」

次の年の秋。ユキとトモヤは、銀杏並木が黄金色に染まる公園をゆっくりと歩いていた。二人の出会いから一年が経ち、ユキの心には穏やかな日々が訪れていた。

「この景色、すごくきれいだね。」ユキが立ち止まり、黄色い葉が舞い落ちる様子を見つめる。

「うん。」トモヤも同じように立ち止まり、ポケットから小さな箱を取り出した。そして彼はユキの方に向き直り、少し照れたような笑みを浮かべながら言った。「ユキ、僕は来年も、再来年も、その先もずっと…君とこの景色を一緒に見たい。」

ユキは驚きながらも、その言葉の意味をすぐに理解した。

「だから…僕と結婚してください。」

トモヤが差し出した箱の中には、小さな指輪が輝いていた。ユキの胸が熱くなり、涙が頬を伝う。

「はい。」彼女は笑顔で頷いた。「これからも一緒にこの景色を見たい。」

トモヤは指輪をユキの薬指にはめ、二人は銀杏並木の下で抱き合った。黄色い葉が風に舞い、彼らを祝福するように周りを埋め尽くしていた。

クリスマスの約束

秋が過ぎ、クリスマスが近づいてきたころ、トモヤはユキに提案した。

「今年のクリスマス、スキーに行かないか？」

「スキー？」ユキは少し驚きながらも、トモヤの提案に興味を持った。「行ったことないけど、やってみたいかも！」

「友達がロッジを借りてるんだ。一緒にどうかなって誘われたんだよ。」

「いいね！楽しそう！」

こうして二人はクリスマスに向けて準備を始めた。

予期せぬ再会

スキー場は澄み切った青空に覆われ、雪がきらきらと輝いていた。トモヤとユキは初めてのスキーを楽しみながら、ロッジに戻ると、予想もしなかった人物と再会することになった。

「…タカシ？」

そこにはユキの元恋人、タカシがいた。隣には彼の新しい彼女らしい女性が座っている。タカシもユキに気づき、驚いた顔を見せたが、すぐに苦笑いを浮かべた。

「久しぶりだな、ユキ。」

「うん、久しぶり。」ユキは一瞬ためらったが、過去の自分ではないことを思い出し、自然な笑顔で応じた。「元気そうで何より。」

トモヤはユキの肩に手を置き、優しく微笑む。その仕草がユキを安心させた。タカシは少し気まずそうに目をそらしながら、「彼氏か？」と尋ねた。

「うん、婚約者だよ。」ユキは堂々と答えた。その言葉にトモヤは照れたように笑いながらも、嬉しそうに頷いた。

タカシは何も言わず、隣の彼女に話題を振るようにして会話を切り替えた。

今年のクリスマス

その夜、ロッジの暖炉の前でトモヤとユキは並んで座っていた。外は静かな雪が降り積もり、クリスマスツリーの明かりが温かく輝いている。

「今日、タカシに会ってどうだった？」トモヤが静かに尋ねた。

「正直、最初は驚いたけど…」ユキは笑顔で答えた。「なんだろう、全然悲しくなかった。むしろ、あの時の自分を思い出して、今こうしてあなたと一緒にいることがすごく幸せだって感じたの。」

「そうか。」トモヤはユキの手を握りながら言った。「君が笑っていてくれるのが、僕にとって一番大事なことだよ。」

ユキはトモヤの肩に頭を預けながら、心の中でそっと誓った。

「今年は、私の心が涙で濡れないように、大切な人に捧げることにする。」

それは、トモヤと共に過ごす新しい未来への確かな決意だった。

クリスマスの夜空に、星がひときわ明るく輝く。雪に包まれたスキー場のロッジから、ユキとトモヤの笑い声が静かに響いていた。それは二人の幸せを象徴する、温かい音だった。