言の葉でつづるあなたへの想ひ

言の葉でつづるあなたへの想ひ

言の葉でつづるあなたへの想ひ

桜が舞い散る春の日、私はあなたと初めて出会った。それは偶然ではなく、運命という言葉がふさわしい瞬間だったのかもしれない。私は大学の文学部の一角で、古びた書物を手にしていた。その場所は、普段から誰も来ない静かな空間だった。それなのに、あの日、あなたは突然、私の前に現れた。

「すみません、この本を探していたんですが…」

あなたの声に驚いて顔を上げると、そこには柔らかな笑みを浮かべた青年が立っていた。黒髪が桜の花びらと同じ風にそよぎ、その瞳は温かさと知性を感じさせた。私は一瞬言葉を失い、心臓が強く脈打つのを感じた。

「え、ええ、こちらです。」

思わず立ち上がり、棚から探していた本を差し出す。『言の葉集』、それは日本の古典文学の一つで、私も学生時代に心を奪われた一冊だった。

「ありがとうございます。助かりました。」

あなたは笑顔で本を受け取り、すぐに席に着いて静かにページをめくり始めた。その仕草がとても自然で、どこか懐かしさを感じさせた。気づけば、私は再び自分の席に戻り、あなたのことをちらちらと気にしていた。それが私たちの最初の出会いだった。

それからというもの、あなたは頻繁にその文学部の一角に足を運ぶようになった。いつも同じ本棚の前で立ち止まり、まるで私がここにいることを知っているかのように。次第に私たちは自然と会話を交わすようになった。話す内容は、主に古典文学や詩について。それでも、あなたの言葉にはいつも優しさと丁寧さが感じられ、私は次第にその温かさに惹かれていった。

ある日の夕暮れ、図書館が閉まる時間になり、私たちは外に出た。桜はすでに散り始めており、足元には淡いピンクの花びらが敷き詰められていた。あなたと並んで歩くそのひとときが、とても特別なものに感じられた。

「桜の花びらって、儚いですね」と、あなたが静かに言った。

「ええ、でもだからこそ美しいんだと思います。一瞬の輝きがあるから、私たちはその瞬間を大切に思えるんです。」

私がそう返すと、あなたは一瞬黙り込んで、ふと私の方を見つめた。その瞳には、何か伝えたいことがあるように見えた。

「あなたと話していると、言葉が特別なものに感じます。まるで、ただの音が心に響いて、言葉そのものが命を持っているように…。」

その言葉に、私は胸が熱くなった。言葉は、私たちにとって何よりも大切なものだった。文学を愛し、言葉に感動する者同士。そんな私たちが、今この瞬間を共にしていることが、何よりも幸せに思えた。

その日を境に、私たちの距離はさらに縮まっていった。毎日少しずつ言葉を重ね合い、互いの気持ちが確かめられていくのを感じた。あなたの言葉には、いつも思いやりと誠実さが込められており、私は次第に、あなたへの想いが大きく膨らんでいくのを止められなかった。

そして、ある夜、私は勇気を振り絞ってあなたに手紙を書くことにした。あなたへの想いを、どうしても伝えたかったからだ。言葉を慎重に選び、心の中の気持ちを一つ一つ言の葉に乗せて綴った。

拝啓、

桜の花びらが舞い散る季節に、あなたと出会えたことを心から感謝しています。あなたとの時間は、私にとってかけがえのないものであり、あなたと交わす言葉の一つ一つが、私の心に深く刻まれています。

あなたと話すたび、私は自分の中にある何かが変わっていくのを感じました。あなたの優しさ、知性、そして温かさに、私は惹かれていくばかりです。言葉では表現しきれないこの気持ちを、どうか受け取っていただけるなら、幸いです。

もし、あなたも私と同じように感じているなら、これからも一緒に言葉を紡いでいけたらと思っています。

敬具

手紙を渡すその日は、まるで運命に導かれているかのように感じた。私たちがいつも会う図書館で、私はあなたに手紙を手渡した。あなたは驚いた表情を浮かべたが、すぐにそれを受け取り、静かに頷いた。

その翌日、あなたからの返事を待ちながら、私は一日中落ち着かずに過ごしていた。そして、夜が更けた頃、あなたから短いメッセージが届いた。

「ありがとう。僕も、同じ気持ちです。」

その瞬間、私は胸の中で何かが弾けたような感覚を覚えた。言葉の力が、私たちの心を繋げ、愛情を確かなものにしてくれたのだ。

その後、私たちは言葉を通じてさらに深く繋がっていった。言葉には形がなく、儚くも強い力がある。私たちはその言葉に導かれ、これからも共に歩んでいくのだろう。

春の風が吹き、再び桜の季節が巡ってくる。その時も、きっとあなたと一緒に、言の葉を紡ぎながら歩んでいきたいと、私は心から願っている。