神・悪魔・人間・罪

悪魔の囁き

悪魔の囁き

秋の夕暮れ、静かな町の片隅にある小さな教会の中で、私は祈りを捧げていた。心の奥底で神を知りたいと願い、過去の痛みを乗り越えようとしていた。しかし、祈りを深めるたびに、心の中に忍び寄る影があった。それは、息子の小太郎に対する悪魔の囁きだった。

小太郎はまだ幼い。7歳の彼は、明るい笑顔を絶やさない天真爛漫な子供だが、最近、何かに悩んでいる様子が伺えた。学校でのいじめや友達との関係に苦しんでいるのかもしれない。そんな時、私が神に向かって手を伸ばすと、悪魔はまるでそれを待っていたかのように、小太郎を責め立てる。

「お前はダメな子だ。友達がいない、母親も頼りにならない。神なんて、そもそもお前を見ていない。」その声は私の耳元でささやき、心を揺さぶる。私は何度も祈った。「神よ、私を助けてください。私の息子を守ってください。」しかし、そのたびに、悪魔の声は大きくなっていく。

ある日、私は小太郎の学校に呼ばれた。先生から、彼が友達とトラブルを起こしたことを聞かされた。心臓が高鳴り、恐れと不安でいっぱいになった。教会での祈りが無駄になってしまったのではないかと、自問自答した。私の信仰は、果たして本物なのか？

帰宅後、小太郎を抱きしめながら、彼の気持ちを聞こうとした。彼は私を見上げて、涙をこらえながら言った。「ママ、友達が僕をいじめるんだ。神様がいるなら、どうして助けてくれないの？」その言葉に、私は言葉を失った。彼の純粋な問いは、私の信仰を揺るがせた。

「小太郎、神様は私たちを見守っているよ。私たちが頑張っている姿を見ているんだ。」そう言ったが、心の中では「本当にそうなのか？」と疑念が湧いていた。悪魔はその隙を突き、私を責め続ける。「神を信じるお前が、息子を守れない。お前は母親として失格だ。」

その夜、悪夢にうなされながら目を覚ました。夢の中で、小太郎が暗い場所で泣いていた。「助けて、ママ！」その声は消え入りそうで、私の心に深い傷を残した。私は再び祈りを捧げた。神に対する信仰が揺らいでいることを認めながら、それでも私は助けを求めた。

日が経つにつれ、悪魔の囁きはますます激しくなっていった。「お前は無力だ。息子は孤独だ。何もできない母親に、神がいるわけがない。」私は耐えきれず、教会に駆け込んだ。聖書を手に取り、神に対する怒りと悲しみを吐き出した。

「神よ、どうか私を助けてください。悪魔の声が、私と息子を引き裂こうとしている。どうして私たちを見守ってくださらないのですか？」その瞬間、教会の静けさが私を包み込み、どこかから温かい光が差し込むのを感じた。

ある晩、小太郎が再び学校での悩みを打ち明けてきた。彼は友達と話し合い、問題を解決しようとしたのだ。彼の成長を目の当たりにし、私は涙がこぼれた。「小太郎、すごいね。あなたは立派だよ。」その瞬間、私は彼の中に神の愛を感じた。

「ママ、神様は本当にいるの？」小太郎が不安そうに尋ねた。私は彼を抱きしめ、「きっといるよ。私たちを見守ってくれている。私たちが愛をもって生きる限り、神はそばにいてくれると思う。」その言葉が、私自身にも力を与えた。

それからというもの、私は悪魔の囁きに耳を傾けることなく、神の愛を感じながら日々を過ごすことができた。息子との絆が深まるにつれ、私たちは悪魔の影を振り払う力を得ていった。小太郎は自分の足で立ち上がり、友達との関係を築いていった。

最終的に、神を知ろうとする旅は、私自身の内面を見つめ直すことでもあった。悪魔の囁きに惑わされず、愛と希望を信じることで、私は息子と共に生きる道を見つけた。私たちはこれからも、神の愛のもとで、共に歩んでいくのだ。