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令嬢、王子にびいえるを語る1
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約束通り、次の日ルドルフ王子がやってきました。
ジンジャーの髪を短めに切りそろえて、凛々しい眉毛がはっきり見えます。
少し繊細な印象のあるサミュエル王子と違って健康的で力強い騎士然とした殿方ですわ。
社交会でご婦人方にたいそうな人気なのも頷けますわ。
「突然の訪問申し訳ありませんナタリー様。」
ルドルフ王子は応接室のソファで対面するなり仰いました。
本当は歳頃の殿方と二人きりで会うのは良くないのですが、相手は王子ですし今はわたくししか屋敷にいないのでわたくしが当主代理です。
「ナタリーでよろしくてよ殿下。それに言葉も。」
「いえ、貴方は時期王妃ですので。」
「それはもう分からないですから。」
「俺は貴方こそ王妃にふさわしいと思っています。」
ルドルフ王子がはっきりと言いました。
「昨日のことは本当に申し訳ありません。兄が愚かなことを。一瞬の気の迷いなのです。虫の良いお願いですが、どうか兄を許していただきたい。」
「でも……」
わたくしが婚約を続けたらサミュエル王子とカミーユが引き裂かれてしまいますのよね。
もちろん障害が立ちはだかって離れ離れになる展開は素敵ですけれど、それは最後に結ばれるから途中のすれ違いが美味しいのであって……
「わたくしこの件はお父様に預けましたの。」
わたくしには決められない問題ですもの。
「それが良くない方向に行こうとしているから来たのです。ナタリー様も、貴方の考えをはっきり仰ってください。それとも破棄に賛成ですか?」
困りましたわ。確かにわたくしは12歳でサミュエル殿下と婚約してから5年間、王妃になるべく研鑽してきたので婚約破棄に賛成なんて出来るはずもありません。
でも、サミュエル王子とカミーユの素敵な恋がわたくしのせいで終わってしまうのも切なすぎます。
「わたくしは、陛下とお父様の裁定に従うのみですわ。」
改めてルドルフ王子に申し上げました。
「貴方は自分の意思がないのか。それとも兄への気持ちがその程度なのですか?」
ルドルフ王子が少し険を含んだ物言いになりました。
この方は、どうしてそんなにわたくしをサミュエル王子の妃にしたがるのかしら……
まさか
「ルドルフ王子、まさかカミーユのことを……まあ、まあ、まあ!」
「は?」
そうですわ。きっとそうなのですわ。ルドルフ王子もカミーユに想いを寄せていらっしゃるのね。
だから二人の仲を引き裂くためにわたくしとサミュエル王子の婚約を続けさせたいのですわ!
「隠さなくてよくってよ。わたくしびいえるを愛する者として殿方の殿方への恋心は全面的に支持いたしますの。」
「………………………何の話ですか。」
「ルドルフ王子のカミーユへの切ない恋心はよく分かりました。ふたりを引き裂きたいと思うのも当然ですわ。素敵な殿方たちが愛らしい弟を激しく奪い合う、甘美ですわ……」
上質なメロドラマの予感にほう、っとついため息が漏れてしまいます。
ルドルフ王子は口をパクパクさせて二の句が継げないよう。図星を指されて動揺しているみたいです。
「ナタリー様。勘違いをされているようですが、俺はカミーユを愛していません。
あの頭かるふわの問題児が兄の後ろ盾で王宮を好きに暴れまわったらどうしようと心配はしてもね。」
ルドルフ王子が紅茶を一口飲んで動揺を落ち着けてから仰いました。
確かにカミーユは少し考え足らずなところがあるけど暴れまわるなんて。最近はじっと座っていることもできるようになりましたわ。
「確かに至らないところも多い弟ですが、まだ子供ですの。サミュエル王子に支えられながら成長していきますわ。」
支え合い高め合う情熱と信頼で結ばれた関係……くふふ。
「16歳は王宮では立派な大人です。ただでさえ国王になるべく日々責務を負っている第一王子の足を引っ張るようでは困ります。兄は庶民のようにくだらない恋愛にうつつを抜かせるほど軽い存在ではないのです。」
ルドルフ王子ってちょっと堅物で、少しお父様に似てますわ。
けど兄上であるサミュエル王子のことを心配していらっしゃるのはすごく伝わってきます。ご家族を大事にされてるのね。
はっ!?
「も、もしかしてルドルフ王子の想い人はサミュエル王子なのですか!?いけませんわ兄弟でそんなっ」
きゃあ、禁断も禁断ですわぁ!
「喜ぶな!その恋愛脳をどうにかしろ!」
ジンジャーの髪を短めに切りそろえて、凛々しい眉毛がはっきり見えます。
少し繊細な印象のあるサミュエル王子と違って健康的で力強い騎士然とした殿方ですわ。
社交会でご婦人方にたいそうな人気なのも頷けますわ。
「突然の訪問申し訳ありませんナタリー様。」
ルドルフ王子は応接室のソファで対面するなり仰いました。
本当は歳頃の殿方と二人きりで会うのは良くないのですが、相手は王子ですし今はわたくししか屋敷にいないのでわたくしが当主代理です。
「ナタリーでよろしくてよ殿下。それに言葉も。」
「いえ、貴方は時期王妃ですので。」
「それはもう分からないですから。」
「俺は貴方こそ王妃にふさわしいと思っています。」
ルドルフ王子がはっきりと言いました。
「昨日のことは本当に申し訳ありません。兄が愚かなことを。一瞬の気の迷いなのです。虫の良いお願いですが、どうか兄を許していただきたい。」
「でも……」
わたくしが婚約を続けたらサミュエル王子とカミーユが引き裂かれてしまいますのよね。
もちろん障害が立ちはだかって離れ離れになる展開は素敵ですけれど、それは最後に結ばれるから途中のすれ違いが美味しいのであって……
「わたくしこの件はお父様に預けましたの。」
わたくしには決められない問題ですもの。
「それが良くない方向に行こうとしているから来たのです。ナタリー様も、貴方の考えをはっきり仰ってください。それとも破棄に賛成ですか?」
困りましたわ。確かにわたくしは12歳でサミュエル殿下と婚約してから5年間、王妃になるべく研鑽してきたので婚約破棄に賛成なんて出来るはずもありません。
でも、サミュエル王子とカミーユの素敵な恋がわたくしのせいで終わってしまうのも切なすぎます。
「わたくしは、陛下とお父様の裁定に従うのみですわ。」
改めてルドルフ王子に申し上げました。
「貴方は自分の意思がないのか。それとも兄への気持ちがその程度なのですか?」
ルドルフ王子が少し険を含んだ物言いになりました。
この方は、どうしてそんなにわたくしをサミュエル王子の妃にしたがるのかしら……
まさか
「ルドルフ王子、まさかカミーユのことを……まあ、まあ、まあ!」
「は?」
そうですわ。きっとそうなのですわ。ルドルフ王子もカミーユに想いを寄せていらっしゃるのね。
だから二人の仲を引き裂くためにわたくしとサミュエル王子の婚約を続けさせたいのですわ!
「隠さなくてよくってよ。わたくしびいえるを愛する者として殿方の殿方への恋心は全面的に支持いたしますの。」
「………………………何の話ですか。」
「ルドルフ王子のカミーユへの切ない恋心はよく分かりました。ふたりを引き裂きたいと思うのも当然ですわ。素敵な殿方たちが愛らしい弟を激しく奪い合う、甘美ですわ……」
上質なメロドラマの予感にほう、っとついため息が漏れてしまいます。
ルドルフ王子は口をパクパクさせて二の句が継げないよう。図星を指されて動揺しているみたいです。
「ナタリー様。勘違いをされているようですが、俺はカミーユを愛していません。
あの頭かるふわの問題児が兄の後ろ盾で王宮を好きに暴れまわったらどうしようと心配はしてもね。」
ルドルフ王子が紅茶を一口飲んで動揺を落ち着けてから仰いました。
確かにカミーユは少し考え足らずなところがあるけど暴れまわるなんて。最近はじっと座っていることもできるようになりましたわ。
「確かに至らないところも多い弟ですが、まだ子供ですの。サミュエル王子に支えられながら成長していきますわ。」
支え合い高め合う情熱と信頼で結ばれた関係……くふふ。
「16歳は王宮では立派な大人です。ただでさえ国王になるべく日々責務を負っている第一王子の足を引っ張るようでは困ります。兄は庶民のようにくだらない恋愛にうつつを抜かせるほど軽い存在ではないのです。」
ルドルフ王子ってちょっと堅物で、少しお父様に似てますわ。
けど兄上であるサミュエル王子のことを心配していらっしゃるのはすごく伝わってきます。ご家族を大事にされてるのね。
はっ!?
「も、もしかしてルドルフ王子の想い人はサミュエル王子なのですか!?いけませんわ兄弟でそんなっ」
きゃあ、禁断も禁断ですわぁ!
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