【過去作まとめ】アホエロ短編集

ナイトウ

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2度目の人生はニートになった悪役だけど、賢王に全力で養われてる

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馬鹿の一つ覚えか、と呆れていたが言葉の力ってやつなのか、なんと奴は私が見てきたより5年も早く玉座に座ってしまった。

あれよあれよという間に近隣国との紛争を収め、貴族諸侯も第三身分も味方につけてなかなかの暴君で人気が無かった前王を排斥してしまったのだ。
議会は満場一致で奴を王に認めた。

戦に出しても先陣切って敵をなぎ払い、交渉の場では堂々たる駆け引きを繰り広げる。

若くして稀代の名君を戴いた国は愛国心が盛りに盛り上がっている。
それを間近で見てきて、王とはこういうものなんだってほんの少しだけ思った。

いや、私だって本気出せば似たような感じだけどね?
体格のせいで鎧映えしないから戦場に出るのは向いてないけど、頭脳戦なら奴をちょっと超えてるまであると思ってるしね?

でも正直なとこ、前回これをやられてたら私が陰謀を巡らす隙も無かっただろう。
長年反目しあっていたスノットランデですらめでたく今は同盟国だ。
まあ、私が優しいからちょっと褒め過ぎてやってるだけだけど。

長年足を引っ張りあってきたグーリデン島の二大国が手を結べば、当然大陸の雄国は面白くない。

レイモンドが王になってからの目覚ましい国の成長を警戒して、特にかつてオングランデを属国にしていたフルドール大国からの弾圧は増している。
オングランデが飛び地として所有している大陸のミレー地方にちょっかいを出してきたのだ。
それを鎮めるためレイモンドは今大陸に遠征中。

でも敵が増えるばっかじゃなくて、フルドール大国と敵対している大陸のエルペーニャ王国なんかは同盟を組みたいようだ。

けどまさにそのせいで、今私は面倒ごとに巻き込まれている。

王が不在の王宮の一室、ベッドに寝そべったまま安眠を阻害された事に眉を寄せた。

ベッドの横には品の良い中年女性が座っている。
レイモンドの母親、俺の叔母だ。

ナイトガウンのままベッドで国母に応対するのは同じ王族だとしてもとんでもない不敬だが、レイモンドが許可してるので私には許されている。

奴が約束どおり私を養ってくれてるので、私も約束通り無能を演じてやって怠惰な生活を送ってやってきた。

その甲斐あって今や私の存在は史上最高の賢王唯一の汚点とまで言われるようになった。
ぶっちゃけ中々複雑だけども、権謀術数が渦巻く世界をかき分けて進んでいた前回の人生に比べたらひたすらぐうたらする生活はまあ気楽だ。

「貴方、彼女のことどう思って?」

叔母はわざわざ使用人に運ばせた大きな肖像画を俺に見える位置で立てさせて尋ねた。

そこには豪奢な薄桃色のドレスに身を包んだ可憐な少女が描かれている。

描きこまれた紋章やアトリビュートから、それがエルペーニャ王クルス3世の二女、マルグレータだと分かった。

「レイモンドの花嫁候補ならレイモンドに見せては?」

同盟の供物に若い花嫁をよこそうという浅ましいやり口だ。
確かマルグレータ王女はまだ12歳くらいだったはず。

それを喜ぶようないい歳した大人だと奴が思われてるとなると不愉快でしかない。
まあ、私にはどうでもいい話だけど。

「王がうんと言わないから貴方に話しているの。」

「引き受けないのはエルペーニャと同盟結ぶのが美味くないからですよ、ふぁぁ……」

ああつまらない話。あくび出ちゃう。

「そんなわけないでしょう。エルペーニャと組むことがどれほど王家の力になるか。議会への圧力も強まるのよ。」

でも、そうするとオングランデの海域でエルペーニャの商船を襲ってる私掠船を取り締まらなきゃいけなくなるしなぁ。
んで、その私掠船には看板隠したうちの海軍も紛れてちょっとやんちゃな外貨稼ぎしてるわけで……。叔母上知らないのかな?

「難しいこと分かりませーん。」

理屈は山程あるけど私は無能なので布団に潜る。
何で私ほどの人間が奴の結婚話に巻き込まれなきゃいけないんだ。

「とにかく、貴方からも王にこの結婚をすすめてちょうだい。」

「うーん。」

「それとも貴方、レイモンドが結婚したら何か不都合でも?」

叔母の声が鋭くなる。
彼女は結構私への当たりがキツイ。
私がレイモンドに養われてる穀潰しをしてやってるのでしょうがないけど、たまにそれ以上にこちらを警戒してる感じもするんだよな。
私が元はレイモンドの敵になりうる存在だって無意識に感じてるに違いない。
奴と私がデキてるなんて裏でコソコソ貴族どもが話してる馬鹿な噂を叔母上が真に受けてるかもなんて私のプライドにかけて絶対に認めない。

「別に不都合はないですけど。」

「じゃあ、お願いね。」

有無を言わさぬ念押し。
なんといっても国母だ。
正直あまり煙たがられたくない。
レイモンドが留守にしてる時に叩き出されたら叶わないし。

「……はい。」

叔母はプレッシャーをかけるように肖像画を壁に立てかけて部屋を去ってしまった。
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