R18/短編/それなり転生平凡貴族はキラキラチート王子に娶られてしまった

ナイトウ

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その後迎えた披露宴は順調に進み、まさに今盛況に終わろうとしている。

最近の王子の手腕とカリスマ性はますます磨きがかかっているので、俺がどんな準備をしようとヴァーノ王子が主役なだけで大盛況だとは思うけど。

婚姻の儀後のパーティも終盤、来賓も大分減って来ていた。

「フェン、疲れてないかい?もう退出しようか?」

薄紫の美麗なジュストコールで正装した王子がいつもより何倍増しかのキラキラで話しかけてくる。
はあ、格好いい。やっぱりこの色にして良かった。
今日100度目くらいに噛みしめる。

「あの、もし良ければ最後の来賓の方までまでお見送りしたいです。」

「そう?君がそう言うならそうしようか。」

にっこり微笑む様はまさに王子の中の王子。
優しい。優しいよーー!

やっぱり好きだ、と実感して決意を強くする。
俺は式が全部終わったら、王子に自分の気持ちを伝えると決めていた。
もちろん王子にしてみれば望んでない事だろう。けど、どんどん王子を好きになってしまって、王子が振る舞う仲睦まじい夫婦のフリが辛くなってきてる。
王子の俺に対する気遣いだとしてもどうせ中継ぎなんだからそんな振りしなくたって良いだろうし、俺の気持ちを知ればもう不用意な事はしなくなるはず。

振られるのは辛いけど、気持ちを伝えてすっぱり断られたら諦めもつく気がする。
とかなんとか言って、俺自身もう好きな気持ちが抑えられないだけかも。
チラリと王子を見やると、目が合った所でふんわり微笑まれた。
それだけで胸がきゅうっとなる。
あ、諦められるか自信なくなってきた……。

結構前から俺が王子を見ると向こうも俺を見てるんだよな。
流石、気配察知もチート級といった所だろうか。

はあ、今日も王子が心臓に悪い。告白で頭がいっぱいになる前に、もう一つの今日のミッションを遂行しとくか。

俺が会場の隅に目配せすると、目当ての人がすすっと近寄ってきて俺たちの前に傅いた。

「王子、今日のために尽力してくれた方を紹介していいですか?」

そう言って目前の人物を指し示す。
スラリとした赤毛の好青年だ。

「行事補佐官のロイです。前に少し話した。」

ロイには本当に色々助けて貰った。彼がいなかったら、俺が今日の行事を全部纏めるなんて出来なかっただろう。
これくらいしか恩返しできないし、王子にとっても優秀な人物と引き合わせるのは悪いことじゃないはず。

「そう……」

あれ。

王子はロイを見るなり朗らかな表情を一変させた。
見た事ないような冷たい表情。
きっと労いの言葉を掛けてくれると思ったのに。

「お、王子……?」

「私の妻が世話になった事は感謝する。が、どうかこのまま黙って去ってくれないか。」

王子はきっぱりとそう言った。

「なに言って……」

目を白黒させる俺と反対に、ロイは動じない。どころか、いつも優しい顔をしていた彼も見た事ない無表情だ。
何かがおかしい。

「かしこまりました……貴方が死ねばね。」

最後の言葉はかろうじて聞き取れる程だったけど、それを聞いてとっさに俺はロイに飛びついた。

ドッ

腹部に衝撃が走る。

「フェン!!」

初めて聞く叫びに近い感情的な王子の声。

ロイの体がバッと離れ、逃げ去ろうとした所で来賓に紛れて潜伏していた衛兵に取り押さえられた。

そろっと衝撃のあった下を見ると腹から何か飛び出ている。

それがナイフの柄だと気づいたのは、自分の純白のベストに赤い血が染み出してからだった。

ロイ……お前暗殺者かよ……

視界がグラリと揺れる。
倒れる間のスローモーションみたいな視界の隅で来賓の貴婦人が叫んでいるのが目に入ったが不思議と音は何もしない。

覗き込んでくる真っ青な顔の王子がだんだん掠れてきて、最後は真っ暗になった。








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