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結局、顔合わせ当日にあっさり花嫁をチェンジしたヴァーノ王子は何の非難をされるでもなく場は大団円ムードでお開きになった。

訳がわからないよ。

王子が謎の力で人心を操ってるんだろうか。
通されたゲストルームで一人頭を抱える。

因みにアモルと他の従者たちはあっさり帰っていった。
俺も付いて行こうとしたら、王子に今日から宮殿に住むように言われさっくり幽閉状態。

別れ際の「おめでとう」というアモルの屈託無い言葉には耳を疑った。
あの、君、結婚するはずだった相手に乗り換えられてるんですが、いいんすか。
そう言いたいのを堪えて見送った俺の気持ちわかるか。

いくらアモルが素直だからって、結婚相手に捨てられてあんなノーダメってある?
実は内心嫌だったのかな。いや、何だかんだ子供の頃から世話係として仕えてきたけどそんな二面性のある奴じゃない。
あれは本心の祝福だ。
信じがたいことに。

考え込んでいるとドアがノックされた。
返事をすると扉が開き、ヴァーノ王子が入ってくる。
慌てて立ち上がって礼をした。

「フェン、君は私の奥さんなんだからそんなことしなくていいんだよ。」

王子が俺の肩に触れて前に倒していた体を引き上げると、自然に体を寄せて腰を抱いてきた。
下半身が密着して、綺羅綺羅しい顔がかろうじてピントが合うくらいの距離に迫る。

ひぃ、シームレスに恋人距離になるの止めてくれませんかね。

「あの、まだ、結婚してないので……」

そうだ。だってずっと準備してたアモルの結婚と違って、色々足りてない。
親父の許可をとって、教会の許可を取って、うん。1週間はかかるな。
その間に王子に考え直してもらうよう説得しよう。

「そんなこと気にして、真面目で可愛いね。じゃあ今すぐ結ばれようか」

王子が俺の腰を抱いて奥のベッドに進み始める。
待て。それは待て。

「あー!何か今すんごく王子の奥さんになった気分!いいないいな結婚ていいなぁ!!」

貞操の危機を感じて足を突っ張っり必死に告げた。

「ふふ、照れちゃって可愛いね。私を試したのかい?いけない人だ。」

立ち止まった王子が俺の鼻の頭にキスをする。ひぃ!やめて脂浮いてるから!

ガタッ!

直後、背後で何か音がした。

振り返ると部屋の隅の衝立から知らない男が飛び出して来ている。
手にはナイフを持っていた。

唖然として動けない俺をかばうように抱き寄せて、王子が腰の鞘から何か引き抜くとそれを襲ってくる不審な男に投げつける。

「ぐあっ!」

男が次の瞬間崩れ落ちた。
苦しそうな顔で足にグッサリ刺さった金属の串を押さえて悶絶する。

「すまないね。麻痺薬が塗ってあるからしばらく動けないよ。」

王子が申し訳なさそうに言う。

「お、王子……いったい……」

「怖がらせてすまない。私は少しばかり命を狙われる事が多くてね。」

さらっと俺の頬を撫でた後、王子が蹲る男に近づく。
おいおい危なくない?

「王子っ、近づかない方が……」

「大丈夫。ねえ君、乱暴なことをしてすまない。すぐに手当をするから。」

「っ……。」

男は言葉も発せないようだ。

「もうこんな事はやめて、これからは私のために生きてくれないか?」

王子が静かに男を見つめながら言うと、険しかった男の顔がじわじわ穏やかになりコクリと頷く。
直ぐにやってきた衛兵が彼を部屋から連れ出し、メイドが足から流れた血液をきれいに掃除した。
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