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どうしたらいいか分からないでいると、少し前に立つアモルと目があった。

顔は俺と同じで普通だけど、素直な分少しあどけない表情が俺よりだいぶ可愛げがある。嫡男として育てられてるだけあって結構しっかりしてるとこもあるけど。
今日は刺繍の入った白い礼装で精一杯着飾っていて、……どうしてこれで花嫁を間違えるんだ?
俺だって正装だけど、上下とも色は無難な紺だ。
そもそもアモルは前から侯爵の後継として宮廷に顔だしてるだろ。
顔見知りだろ。王子まさかど近眼?

「あの……失礼ながらヴァーノ王子……」

仕方なくやんわり訂正しようとする。

(フェン……!)

視界の端で口パクだけで俺を呼んだアモルに気付いた。
目で訴えながら首を横に必死に降っている。
王子の言葉を否定するなと言いたいようだ。
確かに、王子派の貴族が集まったこの儀式ではっきり間違いを指摘するのは恥をかかせる行為だ。
親父にも言われてるし、ここはアモルとして振る舞うしかない。
……のか?平民もうこれわかんない。

「王子、アモルも幸せです。」

引きつった顔でアモルとして返事をする。
アモルがうんうん頷いたからとりあえず良しとしよう。

「どうしたんだいフェン?いたずらかい?お茶目な君もとても可愛いよ。」

王子があっさり俺の名前を呼んでふんわり笑った。
アモール!アモール!何かおかしいんだが!?

助けを求めるように弟を見ても、困ったように首を傾げている。
ここに来て、黙って見ていた周りの貴族もざわつき始めた。

そうだよな。おかしいよな。うん。
流れが変わるかと思ったところで、王子が柔和な顔つきで周囲を眺めて視線を送る。
そうすると周りがすっと落ち着いて元の上品な空気に戻った。

は?何が起きた?
王子が何かしたのか?

「あ、あの、お、私は確かにフェンセン・ザーハルツです。ヴァーノ王子、お初にお目にかかります。私に爵位をくださってありがとうございます。」

「なんて事ないさ。君みたいに素敵な人だと知っていたら、もっと早く会うために父に頼んで爵位を与えていたよ。」

うん。職権乱用だな。
あとさりげなく腰に腕回して抱き寄せるのやめろな?近いぞ。

「それで、この度はアモル様とのご結婚おめでとうございます。今日は僭越ながらアモル様の付き添いで参りました。」

アモルが首を仕切りに横に降って止めてくるが、これはもう言わなきゃしょうがないでしょ。
そんな意味を込めてじっと困り顔のアモルを見る。

「うん。そのつもりだったけど、私は君と結婚する事にしたよフェン。一目惚れなんだ。」

サングラスが必要なくらいの眩い笑顔で告げられる。

は?

その場は一瞬シンとした後、次第にパチパチと拍手が響きだした。
周りから。
え、まってまって追いつかない。
だんだん手を鳴らす人が増えて、とうとうアモルまで。
おい待て。お前は絶対待て。
しかし豪奢なホールは祝福ムード。

おかしいでしょ!?
この王子なんなの??人を操るチート能力でも持ってるの?

正気に戻れとアモルを見つめる。
励ますようにうん、と頷かれた。
違う、そうじゃない。

やや涙目になっていると、正面から俺にひっついている王子に顎を取られる。
ひえぇ、顎クイ。ガチの王子さまの顎クイ頂きましたが要りません。

「フェン、いくら兄弟だからってあまり他の男を見ないでくれないか?嫉妬で泣きそうになる。」

王子、俺の方が泣きそうです……。
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