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※当て馬に襲われる(未遂)描写があります。
——————————————
何が起きてるのか分からなくて混乱する。
「ほし、ひこさん?」
「最初はただのタケが送り込んできたカモかと思ったけど、発情したオメガってのは俺も運がいい。」
星彦さんが屈んで顔を覗き込んでくる。
本当にかすかに、香に混じってアルファの匂いがした。
星彦さんが頭巾を外すと、鼻から下が厚い布で覆われている。
「暑苦し。……もういいだろ。」
鬱陶しそうに顔に巻いた布も外して、その布で力の入らない僕の手をひとまとめに縛った。
酷い行為のはずなのに、腕に触れる手の感触にゾクリと甘いものが走る。
「はぁっ……あっ」
「うん、抑制薬も抜けたな。」
「ひぃっ……んんっ……」
するっと頬から首筋を撫でられて体が跳ねた。
「ふふっ……感度いいじゃん。」
「あっ……なん、で……」
「なんでって、そりゃ俺みたいな底辺アルファ、こうでもしないとイイ相手が見つからないからさ。」
話しながら僕のシャツのボタンを外していく。
鎖骨や胸板が露出する度に気まぐれにそこを撫でてくるので、その刺激にまた震えてしまう。
「惨めだぜ。自分より優秀なベータがゴロゴロいるってさ。あいつら俺の本当の力も知らないで馬鹿にしてきやがる。」
吐き捨てるようなつぶやきの後、耳元で声がした。
「あんたなら俺を見つけてくれるよな?」
ぐりっぐにぐにぐに、くりゅっ
「んんっ……あっ…あぁっ……やめっ……」
ボタンが全部外れてはだけた上半身の、無防備な乳首を執拗に捏ねられて発情した体が勝手に快感を拾う。
嫌だ。怖い。麒臣くん以外に触られるなんて。
「すごっ……女みたい。こっちも女みたいなのかな。」
「やぁっ……!」
下に伸ばされた手が、ズボンのベルトに触れた。
ドンッ!!
大きな音に思わずした方向を見ると、入り口の扉が蹴破られたのだろう。少し斜めになって入り口の縁にぶら下がっていた。
そして、扉の前には知った顔が二つあった。
「はーいそこまでぇ。」
すぐにそれが大好きな人の声だとわかる。
「き、麒臣くん!!」
体に力が入らなくて、どうにか声を張り上げて呼んだ。
「チッ」
星彦さんが舌打ちして前身頃の合わせに手を差し入れる。
「星彦、やめろ。」
麒臣君の少し後ろに立った樺島さんが低く唸るように告げると、星彦さんの体がビクッと反応した後のし掛かっていた僕の体から離れた。
麒臣くんがスタスタと歩いて僕に近寄り、手際よく手首を拘束する布を解いてボタンをいくつか留めると体を横抱きに持ち上げる。
「麒臣君」
「なぁに?」
「怖かった……」
何とか動く首を回して顔を麒臣君に擦り寄せる。
その額に、麒臣君が自分の額を押し当てた。
「ごめんね、怖い思いさせて。」
恐怖が引いていくと体の熱が上がってきて、上手く声が出せなくなった。
はぁっと息を吐きながら首を横に振る。
「いや、前から体制的に麟太君が出歩くと手薄になるとこあったから。これからは無いようにするよ。」
体制……?手薄……?よく分からないけど、額をくっつけたままチュッと突き出した口で軽くキスをされるとそれだけで頭にふわふわ幸せな気持ちが広がって細かいことは何でもよくなってくる。
発情した体が、麒臣君の体温で煽られて辛い。
もっと深いキスが欲しくて首を必死に伸ばす。
「おい、ここが何処か忘れてないか?」
星彦さんが言うと、お前がいることに初めて気づいたという様子で麒臣君が彼を見やった。
「……あー、まあいいや。私が相手する程じゃないし。」
そう言って僕を抱えたまま玄関に向かう。
「なっ……!!」
「樺島。この貸しは高いよ。君がちゃんとしようね。」
玄関口で立ったままの樺島さんに麒臣君が言った。
「へーいへい。分かりました。惜しいなぁ。タケはともかく、星彦はそこそこ使えたんだがなぁ。」
残念そうな樺島さんの声を気に留めず、麒臣君がまた歩き出す。
はっとして、声を絞り出した。
「星彦さん!」
麒臣君が立ち止まって、僕の体を星彦さんの方にに向ける。
少し間を置いて、火照る体を鎮めてから話した。
「あの……話聞いてくれて、ありがとうございます。僕何も言ってないのに全部当たってて……」
「ばーか。先にタケが来て情報置いてっただけだよ。」
「でも、僕は悩みを話せてスッキリしました。」
「そりゃ……よかったな。帰ってスケスケの服着てそのヤベぇのとニャンニャンしてろ。こっちはお前なんかと関わったせいで破滅だ。くそっ……分かってたのに。何なんだよお前。」
星彦さんが床に座り込んだままガシガシ頭を掻いているのを横目に、麒臣君は僕を抱いて地上に出てしまった。
そのまま外に待機していた車の後部座席に僕を担ぎ込む。
「大丈夫?」
労わるように顔をするりと撫でられる。
今の僕はそれだけで全身に痺れが走ってたまらない気持ちになった。
「っ……はぁ……」
首を横に振って麒臣君を見つめる。
今すぐに抱かれたくてそれしか考えられない。
「そう。でもほら、今はダメだから。家まで頑張って。」
麒臣君の指先が、やんわり首筋から鎖骨にかけてをなぞる。
「ひぅっ……っはぁ……ぁんっ……」
ダメって言うくせに車に乗ってる間ずっと首や腕の弱いところを撫でられ、車内に充満した麒臣君の匂いと相まってどんどん麒臣君が欲しくなった。
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何が起きてるのか分からなくて混乱する。
「ほし、ひこさん?」
「最初はただのタケが送り込んできたカモかと思ったけど、発情したオメガってのは俺も運がいい。」
星彦さんが屈んで顔を覗き込んでくる。
本当にかすかに、香に混じってアルファの匂いがした。
星彦さんが頭巾を外すと、鼻から下が厚い布で覆われている。
「暑苦し。……もういいだろ。」
鬱陶しそうに顔に巻いた布も外して、その布で力の入らない僕の手をひとまとめに縛った。
酷い行為のはずなのに、腕に触れる手の感触にゾクリと甘いものが走る。
「はぁっ……あっ」
「うん、抑制薬も抜けたな。」
「ひぃっ……んんっ……」
するっと頬から首筋を撫でられて体が跳ねた。
「ふふっ……感度いいじゃん。」
「あっ……なん、で……」
「なんでって、そりゃ俺みたいな底辺アルファ、こうでもしないとイイ相手が見つからないからさ。」
話しながら僕のシャツのボタンを外していく。
鎖骨や胸板が露出する度に気まぐれにそこを撫でてくるので、その刺激にまた震えてしまう。
「惨めだぜ。自分より優秀なベータがゴロゴロいるってさ。あいつら俺の本当の力も知らないで馬鹿にしてきやがる。」
吐き捨てるようなつぶやきの後、耳元で声がした。
「あんたなら俺を見つけてくれるよな?」
ぐりっぐにぐにぐに、くりゅっ
「んんっ……あっ…あぁっ……やめっ……」
ボタンが全部外れてはだけた上半身の、無防備な乳首を執拗に捏ねられて発情した体が勝手に快感を拾う。
嫌だ。怖い。麒臣くん以外に触られるなんて。
「すごっ……女みたい。こっちも女みたいなのかな。」
「やぁっ……!」
下に伸ばされた手が、ズボンのベルトに触れた。
ドンッ!!
大きな音に思わずした方向を見ると、入り口の扉が蹴破られたのだろう。少し斜めになって入り口の縁にぶら下がっていた。
そして、扉の前には知った顔が二つあった。
「はーいそこまでぇ。」
すぐにそれが大好きな人の声だとわかる。
「き、麒臣くん!!」
体に力が入らなくて、どうにか声を張り上げて呼んだ。
「チッ」
星彦さんが舌打ちして前身頃の合わせに手を差し入れる。
「星彦、やめろ。」
麒臣君の少し後ろに立った樺島さんが低く唸るように告げると、星彦さんの体がビクッと反応した後のし掛かっていた僕の体から離れた。
麒臣くんがスタスタと歩いて僕に近寄り、手際よく手首を拘束する布を解いてボタンをいくつか留めると体を横抱きに持ち上げる。
「麒臣君」
「なぁに?」
「怖かった……」
何とか動く首を回して顔を麒臣君に擦り寄せる。
その額に、麒臣君が自分の額を押し当てた。
「ごめんね、怖い思いさせて。」
恐怖が引いていくと体の熱が上がってきて、上手く声が出せなくなった。
はぁっと息を吐きながら首を横に振る。
「いや、前から体制的に麟太君が出歩くと手薄になるとこあったから。これからは無いようにするよ。」
体制……?手薄……?よく分からないけど、額をくっつけたままチュッと突き出した口で軽くキスをされるとそれだけで頭にふわふわ幸せな気持ちが広がって細かいことは何でもよくなってくる。
発情した体が、麒臣君の体温で煽られて辛い。
もっと深いキスが欲しくて首を必死に伸ばす。
「おい、ここが何処か忘れてないか?」
星彦さんが言うと、お前がいることに初めて気づいたという様子で麒臣君が彼を見やった。
「……あー、まあいいや。私が相手する程じゃないし。」
そう言って僕を抱えたまま玄関に向かう。
「なっ……!!」
「樺島。この貸しは高いよ。君がちゃんとしようね。」
玄関口で立ったままの樺島さんに麒臣君が言った。
「へーいへい。分かりました。惜しいなぁ。タケはともかく、星彦はそこそこ使えたんだがなぁ。」
残念そうな樺島さんの声を気に留めず、麒臣君がまた歩き出す。
はっとして、声を絞り出した。
「星彦さん!」
麒臣君が立ち止まって、僕の体を星彦さんの方にに向ける。
少し間を置いて、火照る体を鎮めてから話した。
「あの……話聞いてくれて、ありがとうございます。僕何も言ってないのに全部当たってて……」
「ばーか。先にタケが来て情報置いてっただけだよ。」
「でも、僕は悩みを話せてスッキリしました。」
「そりゃ……よかったな。帰ってスケスケの服着てそのヤベぇのとニャンニャンしてろ。こっちはお前なんかと関わったせいで破滅だ。くそっ……分かってたのに。何なんだよお前。」
星彦さんが床に座り込んだままガシガシ頭を掻いているのを横目に、麒臣君は僕を抱いて地上に出てしまった。
そのまま外に待機していた車の後部座席に僕を担ぎ込む。
「大丈夫?」
労わるように顔をするりと撫でられる。
今の僕はそれだけで全身に痺れが走ってたまらない気持ちになった。
「っ……はぁ……」
首を横に振って麒臣君を見つめる。
今すぐに抱かれたくてそれしか考えられない。
「そう。でもほら、今はダメだから。家まで頑張って。」
麒臣君の指先が、やんわり首筋から鎖骨にかけてをなぞる。
「ひぅっ……っはぁ……ぁんっ……」
ダメって言うくせに車に乗ってる間ずっと首や腕の弱いところを撫でられ、車内に充満した麒臣君の匂いと相まってどんどん麒臣君が欲しくなった。
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↓めちゃくちゃ世話になっている。
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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