【R18/完結】没落オメガと溺愛アルファのパーフェクト子づくりっ!

ナイトウ

文字の大きさ
上 下
14 / 26

【続編・前編】1

しおりを挟む
リクエストの続編です。

傾向: 発情、乳首イキ、連続絶頂
—————————-

琴座のベガと鷲座のアルタイル。
夜空に輝く一等星を恋人に例えた昔の人は、相当なロマンチストだと思う。

その2人を隔てているという天の川は帝都ではもう見えない。
街では数年前から夜でも街灯が煌々と光っているからだ。
人間の目ってのは強い光があると弱い光は見えないから、街が明るいと星は見えなくなるんだって麒臣君が言ってた。

天の川が見えなくなった帝都では、織姫と彦星は毎日逢えるようになったのかな。
それとも、見えぬものでもあるんだからダメって、当世流行りの女流詩人なら言うだろうか。

「麟太様、笹はこちらでいいですか?」

七夕の準備中何となく考え事をしてしまって、声を掛けられてはっとする。
目の前では麒臣君の側近の津田川さんと、長年うちの庭師をやってくれてる熊爺が僕の返事を待っていた。

熊爺は大きくて青々とした笹を地面に立てて持っている。

「あっ、はい。僕あんまりお庭の事は詳しくないけど、熊爺が選んだ場所なら間違いないと思います。」

「そんな事ねぇですよ麟太坊。あっしのいない間もちゃあんと出来るだけ庭の手入れしてらしたって、見て直ぐに分かりましたよ。」

普段からいかつい顔の熊爺が声だけは嬉しそうに言う。
話しながらも手際よく笹はいったん縁側に立てかけ、位置決めした場所にスタンドを組み立てる作業に入った。
大きな笹だからある程度飾りつけしてからまた立てるそうだ。

麒臣君のおかげで、屋敷には以前勤めていたほとんどの人が戻ってきてくれた。
もちろん僕にはみんなを雇い直す稼ぎなんて到底ないので、最初は家を取り戻しても今まで通り独りで暮らすつもりだった。
けど、なぜかどこからか僕がまた人を雇い始めたという噂が広がったらしく、それを聞いた元使用人さんたちが勤め先を辞めて続々と屋敷に戻ってきてしまったのである。
困っていたら、麒臣君が助けてくれた。

麒臣君は帰国後の家を決めていなかったそうで、この家に居候して家賃を払うと言い出した。
その提示された家賃が、戻ってきた人をみんな雇い直してもお釣りがくる額だった。

麒臣君ならタダで住んでも良いくらいなんだから、借金を返してもらって家賃まで受け取るなんてとんでもないと僕は言った。
それに、家がないなんて嘘だ。
奥さんいるんだし。
実際再会してからこの家に泊まったのは数えるほどの回数しかない。
けど、津田川さんが手際よくみんなと雇用契約を結びだし、今の仕事を辞めてまで帰ってきたみんなを今更追い返すことも出来なくなって麒臣君に甘えることにした。

「では、笹の飾りつけに取り掛かりましょう。幾らかは既製品を買いましたが、こういうのは輪っかとか提灯とか手作りもあった方が風情も出ます。麟太様もいくらかお作りになって、麒臣様と飾りつけしてはいかがですか?よろしいですね?」

津田川さんが真顔で七夕飾りの相談をしてくる。
かっちりスーツに七三分けの男の人が子供が遊びでするようなことを真面目に相談してくるの、ちょっと笑えてしまう。

「あっ……はい。」

ニヤニヤ笑うのも失礼だと微妙な返事をすると、津田川さんが家の中に向かって飾りを用意するように指示を出す。
近くで作業していた女中のおみつさんがはぁいと返事をした。

津田川さんは何人かいる麒臣君の側近の一人で、鶯院家の家令も兼務してくれることになった男性だ。
年は麒臣君とそう変わらないように見える。
代々菱一家の番頭を務めてきた家の息子なんだって。
正直うちにはもう管理するほどの財産もないのに麒臣君に言われたら僕には是非もない。
流石に勝手に人を雇いだした時はちょっと任せたことを後悔したけど、結果的にプロフェッショナルなみんなが家をまた手入れしてくれて麒臣君の住環境としては格段によくなった。
今思うと、津田川さんの行動はそのためだったんだろう。
僕は学生だからお仕事のことはよく分からないけど、津田川さんは相当に優秀な人材に違いない。

「今日明日はお忙しくて外泊されるとの事ですが、明後日の七夕は麒臣様も早く帰るそうですよ。」

「あっ、はい。嬉しいな。」

「それで、お迎えの衣装ですが、せっかくですし少し唐代風のガウンなど手配しては如何でしょう。京の方に絹を大変薄く織る有名な職人がおりまして……」

「えっ、いいよ、そんなわざわざ……」

浴衣くらいは着ようかと思ってたけど、七夕のための衣装なんて僕は興味ない。

「そうですか。麒臣様はお喜びになると思うのですが……。」

津田川さんがこちらの様子をちらっと伺う。
物言いたげな視線にはっとした。

そうだった。
僕は本妻の座を狙う愛人なんだから、出来ることはなりふり構わず何でもしろと津田川さんは言いたいに違いない。
津田川さんだって、愛人の家令よりは本妻の家令の方が体裁がいいだろう。

この2日間麒臣君が帰って来ないってことは、本妻さんと過ごすのだろう。
僕には全く情報がない麒臣君の本妻さん。
津田川さんに聞いても本妻さんを庇っているのかそんな人はいないと教えてくれなかった。
麒臣君は否定してないんだからいないはずないのに。

そんな見えない敵と戦うのに、悠長でいいのか!?

「津田川さん、衣装お願いします!」

自らの怠惰を反省し、気合いを入れてお願いする。

「はい。かしこまりました。」

「僕、良くしてくれる津田川さんの体裁のためにも頑張って麒臣君の本妻になりますね!」

「良くわかりませんが、麒臣様が喜べば特別手当が入りますのでわたくしも嬉しいです。」

普段無表情の津田川さんが薄く笑う。
僕も志を共にする頼もしい同士に対してニカっと笑った。
しおりを挟む
↓めちゃくちゃ世話になっている。
B L ♂ U N I O N
感想 4

あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

既成事実さえあれば大丈夫

ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。

つまりそれは運命

える
BL
別サイトで公開した作品です。 以下登場人物 レオル 狼獣人 α 体長(獣型) 210cm 〃 (人型) 197cm 鼻の効く警察官。番は匿ってドロドロに溺愛するタイプ。めっちゃ酒豪 セラ 人間 Ω 身長176cm カフェ店員。気が強く喧嘩っ早い。番限定で鼻が良くなり、番の匂いが着いているものを身につけるのが趣味。(帽子やシャツ等)

ミルクの出ない牛獣人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「はぁ……」  リュートスは胸に手をおきながら溜息を吐く。服装を変えてなんとか隠してきたものの、五年も片思いを続けていれば膨らみも隠せぬほどになってきた。  最近では同僚に「牛獣人ってベータでもこんなに胸でかいのか?」と聞かれてしまうほど。周りに比較対象がいないのをいいことに「ああ大変なんだ」と流したが、年中胸が張っている牛獣人などほとんどいないだろう。そもそもリュートスのように成体になってもベータでいる者自体が稀だ。  通常、牛獣人は群れで生活するため、単独で王都に出てくることはほぼない。あっても買い出し程度で棲み着くことはない。そんな種族である牛獣人のリュートスが王都にいる理由はベータであることと関係していた。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

処理中です...