【R18/完結】没落オメガと溺愛アルファのパーフェクト子づくりっ!

ナイトウ

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「何やってんだ!!鶯院から離れろ!」

 怒鳴り声に少し我に返って声のした方を見ると、棚垣が酒瓶を突き出しながらこちらを睨んでいた。

「あっ……」

 あちゃー。棚垣のこと、忘れてた。

 これはキヨミちゃんだから大丈夫と言おうとするけど、舌がもつれて言葉が出ない。

「棚垣さんだねぇ。麟太がお世話になったみたいで。」

 キヨミちゃんが最後に小さくチュっと僕の胸を吸った後、口を離して爽やかな笑顔で言った。
 それで凄い手際でささっといくつか外れたままのボタンを留め直し、僕の体を引き上げて立てるように補助してくれる。でもまだ足腰が怪しいのでキヨミちゃんの腕にしがみついて体を支えた。

 ……ん?僕棚垣の名前キヨミちゃんに教えたっけ?まあ、知ってるって事は会話の中で出したんだろうな。

「鶯院の知り合い、ですか?」

「あ、ほらっ、キヨミちゃんだよ棚垣っ!前に話しただろ?僕の……」

 初恋の人と言いそうになってかろうじて飲み込んだ。
 本人を前にしたら流石に気恥ずかしくて言えない。

 それでも棚垣はピンときたようで、「キヨミ……」と呟きながらまじまじとキヨミちゃんを見た。

「……どう見ても男なんだが?」

「そ、そうなんだ。何かキヨミちゃん男の子になってて……。」

「はあ?」

「麟太君、私は生まれた時からずっと男の子だよぉ。」

「えっ、でも昔会った時は……」

「服装が女の子だったのは古い風習のせいだよ。私は生まれた時結構体が弱くて、元気に育つおまじないで7歳まで女の子の格好をしてたんだぁ。」

「そうだったの!?」

「うん。それに名前もキヨミじゃなくて、麒麟のキに家臣のシンで麒臣(きおみ)だよ。」

「し、知らなかった……ごめんなさい。」

「ふふ、いいよ。今から覚えてくれたら。麟太君と私の名前を合わせると麒麟になるんだよ。これってきっと運命だよねぇ。」

 そう言ってキヨミちゃ……じゃなくて麒臣……君?が僕をぎゅっとする。

 確かにそうだ!へへっ、凄いや。
 僕もぎゅっと抱きしめ返した。

「あー、お取込み中悪いが戻って来てもらっても?」

 棚垣が酒瓶を振りながら呆れたように声をかけてくる。

「あっ、ごめん!」

 ジトっと恨めしそうな目で麒臣君と僕を交互に見てきた。

「まあ、……うーん、……うん。再会できてよかったな、鶯院。さっきは悪ふざけが過ぎてごめん。酔ってたわ。」

「ありがとう!全然気にしてないよ。」

「私はもっと気にして欲しいなぁ麟太。」

 麒臣君がにっこり笑って言う。
 何だろう。圧がすごい。

「で、結局2億はどうするんだ、鶯院。」

 棚垣に言われて思い出した。
 そうだった。

「ど、どうしよう……。」

「あの、麒臣さん、」

「私の苗字は菱一(ひしかず)だ。」

「あ、はい。菱一さん、俺が言う事じゃないかもしれませんが、鶯院が今ちょっと困った事になってまして……。」

「チラシを見たら大体想像はつくさ。私が何とかするよ。」

「……2億ですよ?」

「大した事ない。棚垣さん、君はもう帰った方がいいと思うよ。下宿の門限があるだろう?」

「……何で知ってるんですか?」

「貧乏学生の暮らしなんて似たり寄ったりだからねぇ。」

「貴方がちゃんと鶯院を助けられる根拠があるなら帰ります。」

「んー生意気だねぇ。麟太にしたこと見逃してやるだけじゃ足りないかい?」

「はい。」

「仕方ないな。特別にこれあげるよ。」

 麒臣君が内ポケットから名刺ケースを取り出した。
 取り出した名刺を裏返してペンでサラサラと何かを書きつけ、表に戻して棚垣に渡す。
 それに目を落とした棚垣が固まった。

 いいな。麒臣君の名刺……。

「麟太君も欲しい?」

 僕にも1枚くれたので、同じように目を落とす。

 えーと、菱一財閥 欧州菱一株式会社 総支配人 菱一、きおみ……

 菱一財閥って、三大財閥のひとつじゃんか。

「やっぱりあんた菱一財閥の人間かよ……」

 棚垣が呆然と呟く。

「まだ前職のままだけど、明日からは本社の専務に変わるから。財閥の総裁は私の祖父だ。足りるかな?」

「……はい。本当にありがとうございます。」

 棚垣が深々と頭を下げる。

「いいねぇ、そういう君の要らないプライド持たないところ気に入っちゃった。裏に採用通知書いといたから。卒業したらうちに来て欲しいな。」

「お断りします。」

「そう?残念。間接キスした仲なのに。」

 棚垣が一瞬引きつった顔になった後、僕たちの前を横切って玄関に向かう。
 見送るために僕と麒臣君もその後をついていった。


「鶯院、よかったな。お前が頑張ったから、ちゃんとヒーローが現れたじゃないか。」

 玄関を出る前、振り返った棚垣が言った。
 月明かりの方が室内灯より明るいせいで、逆光で表情はよく見えない。

「うん。棚垣、色々ありがとう。」

「感謝されるようなことしてない。俺には、逃げろって言うしか出来なかったから。」

「でも、僕、棚垣の切符すごい嬉しかった。」

「あはは。じゃあな。おやすみ。」

「うん。またね?」

「……またな。」

 棚垣は後ろ手で戸を閉めて、早足で去っていった。
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↓めちゃくちゃ世話になっている。
B L ♂ U N I O N
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