【R18/完結】没落オメガと溺愛アルファのパーフェクト子づくりっ!

ナイトウ

文字の大きさ
上 下
5 / 26

4

しおりを挟む
ゲートルームに入って、壁面の表示が変わっているのに気がついた。
一から十までの表示になってる。これは階層を表してるんだな。
一を選んでタップする。

転移時の浮遊感と共に、見慣れた一階層の小部屋に立っている。
ダンジョンの出入り口はすぐ傍だ。
念のために壁に手の平を当てる。すぐに二から十までの数字とGの文字が浮かび、床が青白く光る。うん、チュートリアル通りだ。これでいつでも行き来できる。

ダンジョンの出口には見張り番のおじさんが立ってて、訝しそうに僕を見る。
僕が一人で、何も持ってないのに気がつくと、何とも気の毒そうな顔をした。
ポーターが置き去りにされるのは良くある事なので、それを察したんだ。
「坊主、良く無事だったな」
「うん、何とか逃げられたよ」わざと弱々しい声で答えておく。

僕たちのねぐらは街を通って流れる川に渡った橋の下。
端切れ板を組み合わせて、何とか雨風を凌げるようにしたオンボロだ。
入り口のぼろ布をかき分けて中に入る。
「ただいまー」
「アッシュ!」一斉に声がかかる。

「パーティーが全滅したって聞いて。もう駄目かと思ってたよお!十日もどうしてたの?」
カティが抱きついてきた。十歳の女の子。痩せてガリガリだ。食べ物がお土産だって言ったら喜ぶだろうな。

でも、十日って?潜って三日、管理者ルームに居たのは一日くらいだったぞ?
一番ありそうなのは、僕が亜空間に入ってゲートに出現するまで、何日か掛かっていたんだと思う。多分、ダンジョンが僕を解析するのに必要な時間だったんだろう。その間の記憶が無いのは、おそらく感覚が遮断されていたんだ。

「うん、囮にされたんだけど、うまく逃げられた。あれ、ターニャはまだ?」
カティを抱き返しながら、周りに聞く。
「ギルドに行ってるよ。アッシュがどうなったか確かめるって」
オルトは帰ってるか。僕より二つ上の兄貴分。僕より頭一つ高い。ひょろひょろだけど。
「あいつら、全滅か。自業自得だな」
僕には何の感慨も浮かばない。バックパックに入ってた筈の装備が無くて焦っただろうな。

「怪我してない?治癒魔法掛けようか?」
ミルカが駆け寄ってくる。七歳なのにもう魔法が使える。天才の女の子。
奥の方で眠そうに目を擦っているのはダイン。九歳の男の子。なぜか料理は一番うまい。
「あれ?アッシュ?幽霊?ゾンビ?」
「殺すなよ、ダイン。あ、そうだ、皆に良い土産があるよ」
僕は亜空間から、パーティーから預かっていた食料を取り出す。
「あいつら全滅したんだからもう要らないよね?」

全員が目を剥く。そして一斉に舌なめずり。
うん、僕たちはいつも空腹だ。食料が足りていない。
ポーターは、まあ、そこそこ稼ぎになる。でも途切れなく仕事にありつける訳でもない。
ターニャは今年十六。もう冒険者登録して稼いでいる。まあ、F級なのでポーターよりは良いけど、それ程の稼ぎはない。今でも僕らを見捨てないで稼ぎを入れてくれる。それでもギリギリ。

ダインが早速、食材を見繕って料理を始めた。
川縁に組んだ石のかまどに拾い集めた木材を燃やし、どこかでくすねてきた鍋で色々放り込んで煮ている。良い匂いがしてきた。
出来上がるまで、保存食の干し肉を皆でかじる。

「アッシュ!」
ターニャが帰ってきて、いきなり僕を胸に抱きしめる。
いや、ターニャはもう十六なんだからね。色々育ってきて当たるんだからね。
「心配掛けたね、ターニャ。でも大丈夫だから」
軽く髪を撫でる。感謝を込めて。

「今回の仕事は無駄足だったねえ。気を落とさず今度頑張ろうぜ」
優しいターニャは慰めようとしてくれる。パーティー全滅ならポーター料は未払いになるからだ。ほんとに僕たちの頼りになる姉御だ。
「いや、無駄足でもないさ。お土産たっぷりだよ」
僕はにやりとして、亜空間から全滅したパーティーの装備と、討伐した魔物の素材を出してみせる。

ターニャは目を丸くして、すぐに悪い笑みを浮かべる。
「お前も悪よのう、エチゴヤ」
「いえいえ、お代官ほどでも」
これは僕の前世話から、皆がお気に入りになったやり取り。

「この装備、売ったら結構な金になるね」
オルトが早速品定め。
僕がここの仲間になってから、皆に読み書きと計算を教えるようになっていた。
出来るのが八歳まで王子だった僕だけだったから。五才頃から教師が付いていたからね。読み書きとか魔法とか剣術とか。これで他の浮浪児グループより生きやすくなる。

一緒に生きてきた子供達。生き延びるための手段として身につけて欲しかった。
最初は面倒がってたけど、知識があると騙そうとした相手を見破られるのに気づいて、段々熱心になり始めた。ミルカには魔法の基礎を教えた。これで上達が早くなるだろう。
ターニャにも剣術の型を教えた。すぐに僕より強くなったのには参ったな。
教えた子供達の中でオルトが図抜けて優秀だった。彼なら結構良い商店で雇って貰えるだろう。

「こっちの素材、売れるかなあ」
ダインが首を傾げる。食材になる物はとっておく気満々だ。
「まあ、その前に小細工しないとね。そのままホイホイって訳にはいかないさ」
ターニャの言う通り、普通のポーターが素材屋に持って行ったら怪しまれる。
「どうするの?」
ミルカが首を傾げる。うん、その仕草、可愛いな。

「【腐肉漁りスカベンジャー】をやった振りをするのさ」
ターニャがウィンクして、ニヤリと笑った。

しおりを挟む
↓めちゃくちゃ世話になっている。
B L ♂ U N I O N
感想 4

あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

既成事実さえあれば大丈夫

ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。

つまりそれは運命

える
BL
別サイトで公開した作品です。 以下登場人物 レオル 狼獣人 α 体長(獣型) 210cm 〃 (人型) 197cm 鼻の効く警察官。番は匿ってドロドロに溺愛するタイプ。めっちゃ酒豪 セラ 人間 Ω 身長176cm カフェ店員。気が強く喧嘩っ早い。番限定で鼻が良くなり、番の匂いが着いているものを身につけるのが趣味。(帽子やシャツ等)

ミルクの出ない牛獣人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「はぁ……」  リュートスは胸に手をおきながら溜息を吐く。服装を変えてなんとか隠してきたものの、五年も片思いを続けていれば膨らみも隠せぬほどになってきた。  最近では同僚に「牛獣人ってベータでもこんなに胸でかいのか?」と聞かれてしまうほど。周りに比較対象がいないのをいいことに「ああ大変なんだ」と流したが、年中胸が張っている牛獣人などほとんどいないだろう。そもそもリュートスのように成体になってもベータでいる者自体が稀だ。  通常、牛獣人は群れで生活するため、単独で王都に出てくることはほぼない。あっても買い出し程度で棲み着くことはない。そんな種族である牛獣人のリュートスが王都にいる理由はベータであることと関係していた。

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

獅子王と後宮の白虎

三国華子
BL
#2020男子後宮BL 参加作品 間違えて獅子王のハーレムに入ってしまった白虎のお話です。 オメガバースです。 受けがゴリマッチョから細マッチョに変化します。 ムーンライトノベルズ様にて先行公開しております。

処理中です...