【R18/完結】没落オメガと溺愛アルファのパーフェクト子づくりっ！

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「で、当てはあるのか鶯院？」

「や、もうこれがさっぱりぱっきり、

　無い。」


　僕がそう返すと、はあああーっと肺から空気全部絞り出しましたみたいなため息を棚垣に吐かれた。
　棚垣は、大学で1番仲がいい友達だ。1回生の時から付き合いがある。頭が良くて人望もあって、凄い奴。
　背が高くて少し目つきは悪いけど案外優しい性格をしてる。

「まあでも、これから探すさ。よければ棚垣もこれを街に貼るの手伝ってよ。」

　そういって昨日夜なべして書いたチラシを100枚ほどドーンと２人の間に置いた。
　こんなことならもう少し夜会とかに出て顔を売っておけばよかったな。

「……突然退学届出したって聞いて急いで様子を見に来てみれば、家は借金のカタに取られて自分は身売りって貴様……カルマどうなってんだ？」

「僕にもよくわからないけど、せめてアンハッピーセットだけは回避したいんだよっ！」

　チラシの半分を棚橋の胸元に押し付ける。
　そこには、
『急募！2億出せる婿殿！あなたのアルファベビィを生む伯爵オメガが嫁ぎます。家、絶対繁栄』
　と僕が考えた渾身のフレーズが書いてあった。

　棚橋がそれを見て心底嫌そうな顔をする。

「叔父さんに相談したか？」

「したけど、新しい事業にお金がかかってるから用意できないって。元々叔父上には関係ない話だしね。」

「この自由民権が当たり前の時代に、何で男のお前が金の為に他所に嫁ぐんだ。やめとけ。」

「でもそしたら蔭間になるしか……」

「何馬鹿正直にクズがこさえた借金の肩代わりしてんだよ。お前だって何も関係無いだろうが。逃げろよ！どうせ樺島とかいうヤクザだってそう遠くまでは追ってこないだろ。何年かしてほとぼりが冷めたら帰って来たらいい。路銀ならみんなでカンパして協力するから。」

　いつになく必死な棚垣の様子に、本当に心配してくれてるんだなって温かい気持ちになる。

「心配してくれてありがとう。でも、僕が払いたいんだ。」

「……何でだよ。」

「もし、棚垣が僕に保証人になって欲しいって言ってくれたら、僕はいくらでもなるよ。」

「俺はお前に絶対そんなことさせない。」

「もしもだって。父さんも僕と同じ気持ちだったんだと思う。もしダメでも、自分が友達の失敗を精一杯穴埋めしようってきっと本気で思ってたんじゃないかな。」

「お人好しが過ぎる。それで息子に苦労かけて……」

「父さんのことは悪く言うな。僕は父さんの気持ちを継ぎたい。それくらいしか、もう父さんにしてあげられる事がないから。」

　海に船と一緒に沈んだ父さんと母さん、ずっとうちに仕えてくれた家臣たち。
　みんなの骨壺は空っぽのまま、菩提寺の住職が態とらしく恭しそうに抱えて墓に納めた。

「……ずるい。そう言われたらもう反対できないじゃないか。」

　棚垣がチラシを持って立ち上がる。

「困ったら何でも相談しろよ。一番に。何で勝手に退学してんだよ。」

「うん。ごめん。ありがとう！よーし！じゃあ、バス停まで歌で行進！東都商科大学校歌、『嗚呼、東都よ永遠に』、さんっはいっ」

　立ち上がって玄関に向かうと同時にイントロを口ずさむ。

「やめろ恥ずかしい。」

「なんだとっ！我らが学び舎のテェマソングが恥ずかしいわけあるか。」

「勝手に辞めたくせに。」

「うぅっ」

　でも棚垣は何だかんだバス停まで一緒に歌ってくれた。
　やっぱり案外優しいとこある。