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56, 黄色いレンガの道(終)

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トトがスクリーンに消えてしまってから、慌てて魔法でスクリーンをまた出そうとしたけど魔法は発動しなかった。どうやら、呪いを解くので持っていた魔力を使い切ってしまったようだ。

「南の魔女さん、トトは大丈夫ですかね。」

後ろにいるはずの彼女に話しかけて振り返るけど、その姿は部屋のどこにもない。

『ごめんなさい。私、そろそろあの人のところに行くわ。寂しがり屋で、すごい執念深い人だから、これ以上待たせたくないの。』

頭の中に彼女の声がした。
そうか……この人はもう……。

「わかりました。南の魔女さん、本当にありがとう。おかげでオージを助けることが出来ました。」

『ドロシーよ。私の名前。』

「ドロシーさん、たまたまあなたに会えてマジで良かったです。」

『偶然じゃないの。いくつもの上位と下位の世界が干渉し会う中を渡り、少しずつ、少しずつ、色々に世界を変えたわ。そして、ついにあなたが生まれたの。』

何か暖かいものが、頬に触れた。

『あなたは、私たちへの神様からの贈り物よ。』

そう言われて、何だかストンと腹落ちした。
そっか、俺、オージを救うために生まれてきたんだ。
俺の人生、全部ちゃんと意味があったんだ。
そう思ったら、目から涙が一筋流れた。

「俺、またオージに会いたいんです。もう一度向こうの世界に召喚されたら、俺の体が保たないらしいんですけど。」

こんなに会いたいのに、もう二度と会えないのかな。
そう思ったら、ふふ、とドロシーさんが笑った。

『大丈夫よ。あの子、きっとあの人に似て寂しがり屋で執念深いから。ほら、後ろ見て。』

言われて振り返ると、道が出来ていた。
空間に人が通れる高さのアーチ上の穴が開いていて、奥は光っていてよく見えない。その地面には輝くような黄色いレンガの道が敷かれ
光りの先に続いている。


黄色いレンガの道を、辿った先にいる人は……。


それを見たとたん、なにも考えず走り出していた。

レンガを踏みしめながら、全速力で先へ先へ駆けていく。

走り続けても、不思議と疲れなかった。

早く会いたくて仕方がなかった。

「オージ!!!」

光の中に人影が見えて、走る勢いのまま名前を叫んで飛びつく。
体が触れた途端に力強く抱きしめられて、その大好きな体温と匂いに胸がいっぱいになった。

「おかえり、カナト。」

優しい目でこちらを見つめるオージに顔を寄せて、目一杯のキスをした。






おわり


ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!
BL大賞に参加してますので、もしお気持ちを頂けるようであればどうか作品ページの投票お願いします。

本編はここで完結となりますが、その後の2人をエピローグとしてもう少し投稿します。


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