46 / 60
46, しかしてない
しおりを挟む完全に昼の時間を過ぎた頃、ベッドでぐったりしている俺にオージが水を持ってきてくれた。
体を起こさなくては、と思っているとオージが抱き起こしてくれて、水を口元に持ってきてくれたのでありがたく頂く。
「ありがと。」
コップの中身を全部飲み干して、お礼を言った。
「体が辛かったら魔法で回復しようか?痕も消せるよ。」
体中に付けられたキスマークのことを言ってるんだろう。
それでここ数時間の蛮行がチャラになるとでも?
「いいよ。そこまででもないし。体は流したいかも。」
「うん、お風呂入って、ご飯食べよう。」
オージがオウムにお風呂を準備するように伝える。
「おなか空いた。」
朝エルファさんたちと話した時に、紅茶とクッキーを少し口にしただけだ。
ずっとぶっ通しでセックスしてたからな。
「そうしたら、お風呂に入るまでに少し摘まめるもの持ってきて貰うよ。ちゃんとしたご飯はお風呂が終わってから食べようね。」
オージがそれもオウムにお願いする。
「うん、オージありがと。」
甲斐甲斐しく世話をされて、ヤりすぎだろと呆れていた気持ちが少し収まった。
まあ、俺もすごく気持ちよかったしな。
体をきれいにしたあと食事をして、満たされた気持ちで部屋のソファでくつろぐ。
オージは休んだとはいえ急だったから何か仕事でもするのかなと思ったけど、俺の部屋で一緒にいてくれた。
特に2人ですることもないので、いろいろな話をする。
俺がずっと話しそびれていた働きたい話をしたら 、俺の好きにしていいって言ってくれた。
「でも、あと数日はどこにも行かないで。一緒にいたい。」
抱きつかれて、仕方がないなとオージの背中をぽんぽん叩く。
「それと、明日カナトのことをみんなに紹介したいから、お城にいっしょに来てくれる?」
「え、うん。会うだけなら……」
みんなって、軽く言うけどこの国の大臣とかだよな。本人は王様だけどさ。改めて、すごい人と付き合ってると思う。
この国の人から見て、俺ってどう見えてるんだろう。自分の国の王様が、どこの馬の骨ともしれないやつと付き合ってるわけで。
「ありがとう。みんな大歓迎だと思うよ。」
そ、そうか?
「なら良いんだけど、もし反対されても、俺はオージと離れたくないな。」
そう何の気なしに言えば、抱きついてきていたオージが俺の顔を覗きこんだ。
「カナト、僕も……離れたくない。」
そう絞り出すように言ってキスをしてくる。
な、なんだかトーンがマジっぽくない?本気で考えちゃったのかな。ちょっと可愛い。
キスから舌が入ってきて、俺の背中に回った手がシャツをまくり上げてきた。
「ちょっと、ま、またエッチするの!?」
ソファに押し倒されて、思わず口に出る。
「カナトがかわいいから、また抱きたくなっちゃった。少しだけだから。」
前言撤回だ。全然可愛くない。
オージ、実はすごい性欲が強いタイプなんじゃ……。
俺の心配をよそにどんどんコトを進めるオージに、結局流されて、少しとか言ったくせに終わったのはすっかり日が暮れてからだった。
え、今日俺、ほぼエッチして1日終わったんだけど。
そして次の日は、オージが言った通りにお城に行く事になった。
もうオージが全員をお城の広間に集めていて、そこに俺が行く。朝先に城に行ったオージが、約束の時間に書斎で待つ僕の前に現れる。
「準備はいい?」
「うん。緊張するけど。」
「大丈夫。みんな素晴らしい僕の仲間だから。」
オージは俺の肩を抱いて杖を振った。
足元に魔法陣が現れ、光を放った直後に視界が変わる。
目の前の広間には、礼服を着たたくさんの男女が立っていた。
その前に、オージと俺がいる。
俺たちの姿を見た人達にざわめきが走った。
俺に対する視線もあるけど、大半の注目がオージに注がれていた。
あれ、そうか。今のオージ、人形に隠れてないんだ。
「恐縮ながら、大公陛下と、カナト様でしょうか。」
一人が僕たちに話しかける。
あ、この人、中庭で会った人だ。たしか法務大臣のエディオさん。
「ああ、そうだよ。今まで見せなくてすまなかったね。これが、僕の本当の姿なんだ。それで、この人がカナト。先に説明しておいた通り、僕の大切な人だ。」
オージが告げると、その場に歓声とどよめきが半々であがる。
「本来のお姿にお会いできて光栄です陛下。正直なところ、まだ受け止め切れていない部分もありますが。カナト様、以前中庭でお会いしました総務大臣のロバート・ジャムです。その節は知らなかったとはいえ失礼いたしました。」
ロバートさんが微笑みながら言う。
事情は全部、オージが事前に話してくれたからみんな知っている。
もちろん、呪いのことも。
「ありがとうございます。俺も、素敵な皆さんと会えて光栄です。」
緊張するなか頑張って笑顔で返したら、ロバートさんがにっこり笑って返してくれた。
「陛下が夢中になるのも納得ですな。うちの妻にもカナト様の1/10でもいいからもっと可憐さがあれば……。」
「え、えっと……」
「相手しなくて良いよ。すぐ奥さんの話を始めるやつなんだ。」
オージが肩をすくめて言うけど、その言葉には親しみの気持ちが滲んでいる。
116
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中
きよひ
BL
ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。
カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。
家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。
そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。
この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。
※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳)
※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。
※同性婚が認められている世界観です。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる