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41, 両思いになったけど
しおりを挟むオージは一回出して冷静になったのか、果てすぎてぐったり脱力している俺を介抱しはじめた。
自分の身繕いもそこそこに、魔法で用意した蒸しタオルで俺の汚れた体を吹き上げ、濡れた衣服を綺麗にし、着衣の乱れを直す。
そのまま俺の部屋に俺を抱いて転移してベッドに寝かせてくれた。
「ありがと、オージ。」
やっと放心状態から脱して話しかける。
「無理させてごめん。途中から、歯止めが効かなくて。」
「ううん、気持ちよかったよ。良すぎておかしくなるかと思った。」
「カナト、あまり可愛い事言わないで。我慢できなくなる。」
まだその気があるらしいオージの発言に、これ以上はこっちがまずいと話すのをやめた。
「夕食の用意して貰うから、それまで休んでて。」
優しいかおで俺のおでこにキスをし手から、オージが言う。
「それで、食事の後は、これからの話をしようか。」
少し沈痛な面もちをした後、安心させるように俺に笑いかけてオージは部屋を出て行った。
そして夕食の後、俺の部屋のベッドで2人で寝転がって呪いについての話をした。
トトがベッドを上ってきて、俺とオージの体の隙間に収まってまったりしている。
端から見たら平和な団らんに見えそうだけど、話の中身は大分切実だ。
「俺たち呪いが発動してもすぐに死ぬ訳じゃないんだよね。」
オージに尋ねる。
実際、今の俺の体には胸元に痣ができた以外なんともない。
「ああ。呪いは遅効性で、徐々に進行する。僕の母は14年、父はそこから1年で死んだ。
トニトルス家の呪い保持者の方が数ヶ月から数年、愛した相手より遅く死ぬんだ。そうして最愛の人の死に苦しむのが、西の魔女の復讐だから。」
「本当に極悪な発想だな。」
「凶悪な魔女だったからね。呪いの発動から死までの期間は個人差があって、これまでの例だと魔法を使う力に秀でている代ほど、死ぬまでの期間が短い。最短は初代で、半年くらいだったみたい。」
「え、そうしたら子供は……?」
初代は男だったって聞いてる。つまり、妻の方が結ばれて10ヶ月より短くて死んだなら、子供は産めないんじゃないか。
「初代の妻には魔女の呪いが効かないんだ。彼女は南の魔女だったから。魔女同士は魔法が効かないからね。」
南の魔女って、初代スマラルダス大公と西の魔女を倒して行方不明になった人だっけ。奥さんでもあったのか。
「それで、二代目からは南の魔女の血で少し呪いへの抵抗力ができて、死ぬまでの期間が年単位になったというのもある。僕は、結構魔法が強い方だけど、それでも呪いが命を奪うまでには何年かかかるはずだ。」
「うん、ちょっと安心した。」
俺は間にトトを挟んで隣に寝るオージの体に擦りよった。押し付けた頭をオージが撫でてくれる。
「まだ時間はあるから、僕はどうにか呪いを解く方法を探すよ。絶対にカナトを、呪いで死なせたくない。」
真剣な眼差しでこちらを見つめてくるオージ。
それはきっと、これまでのスマラルダス大公がみんな試みたことだ。
そして、誰も成功しなかった。
それは分かってるけど、俺はオージを信じることにして頷いた。
「ありがとう。呪いのことだけじゃなくて、二人のことをちゃんと進めていこう。ドロテオとの婚約破棄についてはもう片が着いているんだ。だから、次はカナトと婚約して、直ぐに結婚の手配を進めるよ。」
オージのだいぶん前のめりな話に流石にびっくりしたので、目を丸くしてオージを見た。
「え、婚約?結婚?俺たち、今日両思いになったばかりだよね。早すぎない?」
俺が何の気なしに言うと、オージはショックを受けた顔をした。
でも、お付き合いって本来的もっと段階的なものじゃないだろうか。
「カナトの世界では、愛してる相手とすぐには結婚しないのかい?僕は今すぐにでもカナトと結婚したいよ。」
「する人もいるけど、俺はそこまですぐに考えないというか。本当に結婚して良い相手か、一緒に過ごしながら考えて行くかな。」
俺が言えば、悲しそうだったオージの顔がキリってなった。
「分かった。カナトが僕を結婚相手に選んでくれるように努力する。だから、カナトもそのつもりで僕のことを見て貰ってもいいかい。」
真剣に言われて気恥ずかしい。
これが結婚前提のお付き合いってやつか。
「う、うん。それならいいよ。」
返事をしたら、オージがトトごと俺を抱きしめてきたので、俺たちの間でつぶされたトトがキャン!と鳴いた。
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