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30, 何か出てきた

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未遂ですが、受けが攻め以外のキャラに襲われる描写があります。



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頷いて良いか一瞬迷ったけど、俺にこの状況を嘘で切り抜ける技量はない。
諦めて頷くと、2人は改めて礼をしてくれた。

「あ、お気遣いなく……。」

こんなときにどうしたらよいか分からず、アタフタしてしまう。

「ようこそ我が国にお越しくださいました。暮らしには慣れましたでしょうか。」

「あ、はい。オー、大公様が良くして下さるので。この国は、とても素敵な所ですね。」

俺が無難に返すと、2人は怪訝そうに顔を見合わせた。
な、なんだ?

「あなたは、本当にドロテオ様ですか?」

エディオと名乗った大臣に聞かれて心臓がはねる。

「えっ!な、何故?」

「私の妻はウィンスラントの貴族出身でして、向こうの晩餐会でドロテオ様をお見かけしたこともあるのです。何と申し上げますか、印象がまるで別人で。」

こんなド社交辞令で接しても疑われるって、ドロテオマジでどんだけ非常識なやつなんだ……。

「あ、え!?嫌だなぁ!私はまごうことなくドロテオですって!あはは、あは。あっ、ちょっと用事が……失礼しまーす!」

これは、ボロが出る前に退散しよう。
そう判断した俺は、言うなりきびすを返してその場を後にした。

それからは、反省して部屋を出ずに過ごした。
大臣2人が追ってこなくて良かったよ。もう晩餐会が終わるまで引きこもっていよう。

そう決めて、暇だからベッドに横になっていたらいつの間にか寝てしまった。

コンコン。

無くなった意識が、部屋に響いたノックの音でふと戻った。
オージかな、と思い起き上がって扉を開けにいく。

「開けるのが遅い。」

「へ?」

開いた扉の外に不機嫌そうに立っていたのは昼間に散々悪口を言ったウィンスラントの第二王子で、それを認識する前にぐいっと部屋に押し入られてしまった。王子からは仄かに酒の匂いがしている。

「は?ちょっと、何ですか?」

「昼間にここから出てくるのを見かけたから、来てみたんだ。オズバルドとの逢い引き部屋か?お盛んだな。」

「ち、違います!仕事が終わるのを待ってるだけで……」

「その、俺と婚約していた時と全然態度が違うのが気に食わない。お前、まさかあの呪われた大公に本気で惚れたのか?死ぬのに愚か極まりないな。」

反論しようとしたところで、第二王子に腕を掴まれて力付くでベッドまで引きずられた。
そのままマットに押し倒されて、上から覆い被さられる。
力は相手の方が強いから、逃げたくても逃げられない。それに、すごく怖くて体がすくんでしまった。

「俺にはちっともヤらせなかったくせに、あいつとはヤりまくってんのか?確かめてやるよ。」

ズボンに手をかけられ、引きずり降ろされそうになった。
嫌だと思ったそのとき、急に視界が真っ暗になり、意識を強い力で引っ張られるような不思議な感覚に襲われた。気がつけば、真っ暗な空間の目の前に四角いスクリーンが浮かんでいるような、そんな場所にいる。

スクリーンの向こうには、さっきまで自分がいた部屋の光景が映し出されベッドで揉み合うドロテオと第二王子の姿があった。

「ざけんじゃないよ!私の体に触れて良いのはあんたでもオズバルドでもない!一人だけなんだから!」

スクリーンのドロテオが叫び、思いっきり第二王子の顔を引っ掻いた。それこそバリっと音がしそうなくらいに。
なんだ?ドロテオを動かしてるのは俺のはじゃないぞ。
俺の意識は完全に俯瞰でその光景を見ている。
怯んだ第二王子を思いっきり突き飛ばす光景まで。

そこまで見て、今度はスクリーンに吸い込まれるように体が浮いて強くそっちに引き込まれ始めた。

(ちょっと!信じらんない!何で戻るのぉ!)

そんな叫びと、全身が真っ白な幽体みたいな姿のドロテオとすれ違ったのが一瞬見えた。
次の瞬間には、俺は部屋に戻っていていた。
目の前でうずくまる第二王子が立ち上がる前に、慌ててベッドから起き上がって扉に逃げた。
部屋から出るときに、鳩が目に入る。

「オージを呼んで!」

「カシコマリマシタ!」

部屋を出ようと扉を開けたら、目の前にオージがいた。もう来てくれた。安心して思わず名前を呼んで抱きつくと、抱き留めてくれる。

「何が起きてるんだい?」

緊張した顔でオージが尋ねるのに、何が起きたかを端的に伝える。

「第二王子が襲って来た。」

「なんっ……ヴィグトール殿、どういうことですか。」

部屋の中で立ち上がった第二王子がオージをみる。

「あんたオズバルドか。そんな素顔だったんだな。豚みたいに醜いから隠れてるんだと思った。」

何だこいつ、本当にムカつく!

「ドロテオの言うとおりなら、こちらも黙っていませんよ。」

「そいつが誘って来たんだ。祖国を追放されたような人間の言葉を鵜呑みにするな。」

はぁ!?俺は違うとオージに伝えるためにぶんぶん首を振った。


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