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13, トト、犬になる
しおりを挟む結局その後も何やかんや屋敷のみんなで盛り上がって、宴もたけなわという所で一本締めでお開きになった。
後片付けまでしっかり参加して、大分みんなと仲良くなれたと思う。
肝心の1番仲良くなりたかったオージはいなかったけど。
そして次の日。
なんだかしょんぼりしたオージと朝食を食べた。
二日酔いかと思って聞いたらそんな事はなくて、単にワインを一気飲みした後の記憶が無くて残念がっているだけだった。
普通そうだったのに、記憶無いのか。俺にご褒美迫ったことも覚えてないんだろうな。
日本の会社員だったら酔ってセクハラして失敗するタイプに違いない。
ここが異世界でよかったな。
朝食後オージは仕事をするのかと思ったら、俺に書斎に来て欲しいと言った。
「良いけど、俺何かした?」
「いや、悪い事は何も。来る時に、君のトトを持ってきてくれないか。」
「わかったけど何で?」
「内緒だよ。」
思わせぶりに笑ってくる。また何か揶揄おうとしているのか。とにかく言われた通りに部屋に置いてあるトトを持って書斎まで行った。
「ありがとう。トトを貸して貰っていいかな?」
オージに言われて手渡すと、オージはそれを書斎の床に置いた。
置いた場所には昨日は見掛けなかった直径30センチくらいの魔法陣みたいな模様が書かれている。
「魔法を使うの?どんな?」
尋ねても、やっぱり内緒としか帰って来なかった。
オージが床の父に向かって杖を振る。
「オブジェクト指定、トト。コンソールプロパティ、素材は…プラスチック?ふむ……拡張性はありそうだな。」
オージが興味深そうに杖を振る。
だんだんとキーホルダーが輝きを帯びて、ふわりと浮き上がった。
「四足動物の生体反応スクリプトを呼び出してっと。形状は、そうだな、体高……体長……体重それぞれこんな感じで。」
オージが杖を振るとぐんぐんトトのサイズが巨大化して、小型犬の大きさになっていく。
「性格はカナトみたいに明るくて優しい子……あとは、細かい反応はモジュール読み込みにしておいて、うん、ふふ、良い感じ……。」
最後にオージがさっと杖を振ると、ぱっとトトを包んでいた光が消え、今まで消えていた重力が復活したようにトトの体が地面に落ちた。
そこで、シタッとトトが滑らかな動きで着地し、フルフルと体を震わせる。
その体はプラスチックの固いのものではなく、ふさふさなダークグレーの毛皮が動きに合わせてゆれた。
「なっ、なっ……」
びっくりしている俺をみつけたトトが、ぱあぁっと明るい顔をして弾むように寄ってくる。
小さい体でヒョイっと前足を上げて俺の体に飛びついた。
顔はつるりとしていて、質感はまるでプラスチックなのに生き物の皮のように柔軟に動いている。
そっと毛皮を撫でてみれば暖かい。ハッハッと舌を出して呼吸もしている。
「凄い。トト、犬になっちゃった……」
しゃがめばトトが精一杯体を伸ばして顔をペロペロ舐めてきた。
よだれで顔が濡れる。
「気に入ったかい?僕から、昨日のお礼とお詫びなんだけど。」
「へ?あ……かなり驚いてるけど……」
まだしつこく俺の顔を舐めてくるトトを抱き上げた。
見つめると、つぶらな瞳でじっと見つめてくる。
これが、ずっと持ち歩いていたトトなんだ……。
頭を撫でると嬉しそうに目を細めてきて、何とも可愛い。
「ありがとう。犬飼うの夢だったんだ。」
ぎゅっと抱きしめれば、オージが優しく微笑んでくる。
「何か、オージって『オズの魔法使い』みたいなんだよ。みんなのお願い事を叶えてくれるし。」
思っていたことを思わず話した。
当たり前だけど、オージがそれは何?という顔で首を傾げる。
「俺が元いた世界にあった物語でさ。主人公の女の子が、やっぱり異世界に飛ばされちゃって、帰るためにオズって魔法使いを訪ねるために旅をするんだ。」
「君以外にも、稀にだけど過去に異世界から召喚された人はいたから君の世界にも話が残っているのかもしれないね。」
「なるほど。世の中の違う世界に行く小説とか漫画とか、誰かの体験談も紛れてたりして。」
冗談めかして言えば、トトが賛同するようにワン!と鳴いた。
「物語の女の子は、ちゃんと魔法使いに会って元の世界に戻れるのかい?」
オージが話の中身を興味深そうに聞いてくる。
「うん。道中色々あるけど、オズ自体は黄色いレンガの道を進んだ先にいるのが分かっててたどり着くよ。それで、また色々あった後元の世界に戻るんだ。結局女の子を返したのはオズじゃないけど。」
「それはオズがその子を帰したがらなかったから?」
「いや?オズも元々女の子と同じ世界から来た転移者なんだけど、アクシデントがあって先に帰っちゃうんだよね。」
「羨ましいな。同じ世界に戻れるんだ。」
「ん?あー、まあね。話の悪役の悪い魔女以外はみんな望みが叶ってハッピーエンドだよ。」
「カナトも、元の世界に戻れればハッピーエンドかい?」
ふいにそう尋ねられて、オージの顔を見つめる。
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