完結R18BL/君を愛することはないと言われたので、悪役令息は親友になってみた

ナイトウ

文字の大きさ
上 下
11 / 60

11, コンパ② ビンゴ大会

しおりを挟む

コールで弾みがついたのか、より一層場は賑やかになった。

俺はその後オージの隣に座ってミミさんや家族と話したり、オージと酒を飲んだりした。
少しお酒に酔ったのだろうオージは、頬が上気して見つめてくる目もトロンとしていて、何故かちょっと目のやり場に困る。

しばらくしてテーブルで各々始まったコールが落ち着いてきた所で、俺は予定通り前に出て話し始めた。
けど、場が盛り上がっていて張り上げても中々声が通らない。
どうしようかと思ったら、オージが俺の背後に立って口元に手を添えてきた。
体勢としては二人羽織でやっほーと山びこをしているみたいな感じ。

びっくりしてオージを振り返ると、話してみてと言われる。

「あの!今からゲームします!」

俺の声が会場全体に聞こえる音量に拡張されて響く。
スピーカーみたいだ。これもオージの魔法か。すごいな。

「ビンゴってゲームです。みなさんのお皿の下に、一人一枚数字がマス目に書かれた紙がありますか?」

みんな自分のお皿を持ち上げて、敷かれた紙を取り出してくれた。

「今から番号を読み上げますので、手元の紙にその番号が書かれたマスがあったら点線に沿って穴をあけて下さい。」

用意したお手本の紙で実際に紙に穴をあける様子を見せてみる。

「穴があいたマスが、立て、横、斜めのどこか全てで揃ったら、大きな声で『ビンゴ!』って言って下さい。また、後一個で揃う!って時は『リーチ!』って言います!」

更に何回か丁寧に説明して、ルールを浸透させる。

「ビンゴになった人は、ゲームあがりです!」

「最初に上がった人はどんなご褒美があるんだ?」

スパヴェンタさんがヤジを飛ばしてくる。まあ、だよな。無いんだけどね。

「えー、揃った人先着3名に……俺からキスをプレゼントします!」

精一杯のウケ狙いだ。誰かつっこめ!滑りませんように。

「やったぁ!じゃあおいら頑張る!」

カルノくんが声を上げた。いや、そういうのっかりはいいから!
けど、カルノくんだけじゃなくてあちこちのテーブルがざわめきだした。

「カナト様のキスだって!」

「わぁ!」

まさかの大盛り上がり。え、何で?何でこんなに俺の好感度高いの?話したことすらない人もいるよね?
よく分からないけど、今更冗談とも言いにくいな。

「じゃあ、皆さんはりきってわぷっ……」

続けようとしたらスピーカーをしてくれていたオージの手が俺の口をふさいだ。
そのままオージの方に引き寄せられて抱き込まれる。
俺の言葉を遮ったオージが、代わりによく通る声で告げた。

「と言うのはカナトの冗談で、早くあがった人には一つお願い事を僕が叶えるよ。」

えっ

「オージ、それは申し訳ないからっ」

口から手が離れたので、振り返って遠慮する。

「でも、その体はドロテオのものだろう?勝手に誰かとキスしちゃダメじゃないかい?」

じっと目を見て言われ、はっとする。

「あ……ごめん。」 

オージの指摘はもっともだ。考えが足りてなかった。

「大丈夫。僕に任せて。」

「うん、ありがとう。」

オージがお願いを聞いてくれる、と言うのそれはそれで嬉しかったらしく、みんなノリノリでビンゴの紙とにらめっこを始める。

「最初は……34番!34と書いてあるマスに穴をあけて下さい!」

それから数字を書いた紙の山から引いては読み上げ、引いては読み上げた。

やがて、ちらほらリーチの声が挙がる。

「びんご!」

初めてあがりの声を上げたのは、ミミさんの子供だった。
人間でいったら三歳くらいの女の子だろう。花柄のワンピースを来て首に赤いリボンが巻かれている。
ミミさんに促され、トコトコと紙を持って前に進んで俺に紙を渡してくれた。ちゃんと読み上げた数字に穴が開けてあることを確認してオージに目配せする。

「ルル、どんなお願いを叶えて欲しいのかな?」

オージが子猫の目の前にしゃがんで名前を呼んで尋ねた。微笑ましい光景過ぎる。本当に良い王様だよな。

「えっとね、たいこうしゃま、かたぐるましてくだしゃい!」

ルルちゃんが元気よく言う。な、何て可愛いお願いなんだ!思わず身悶えだ。

「る、ルル!大公様に失礼だよ!肩車ならパパがしてあげるから。」

「えー。やだ。たいこうしゃまのせのがおっきいもん。」

ルルちゃんのお父さんが慌てて止めるけど、ルルちゃんにはいまいち伝わらなかった。

「ふふ、良いよ。」

一国の王様であるオージは、なんのためらいもなく笑顔でルルちゃんを抱き上げて肩に乗せた。ルルちゃんがきゃあ!と楽しそうな歓声をあげる。

見ているだけで笑顔になる光景だな。こういうのを尊いって言うに違いない。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」 え?勇者って誰のこと? 突如勇者として召喚された俺。 いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう? 俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

処理中です...