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11, コンパ② ビンゴ大会

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コールで弾みがついたのか、より一層場は賑やかになった。

俺はその後オージの隣に座ってミミさんや家族と話したり、オージと酒を飲んだりした。
少しお酒に酔ったのだろうオージは、頬が上気して見つめてくる目もトロンとしていて、何故かちょっと目のやり場に困る。

しばらくしてテーブルで各々始まったコールが落ち着いてきた所で、俺は予定通り前に出て話し始めた。
けど、場が盛り上がっていて張り上げても中々声が通らない。
どうしようかと思ったら、オージが俺の背後に立って口元に手を添えてきた。
体勢としては二人羽織でやっほーと山びこをしているみたいな感じ。

びっくりしてオージを振り返ると、話してみてと言われる。

「あの!今からゲームします!」

俺の声が会場全体に聞こえる音量に拡張されて響く。
スピーカーみたいだ。これもオージの魔法か。すごいな。

「ビンゴってゲームです。みなさんのお皿の下に、一人一枚数字がマス目に書かれた紙がありますか?」

みんな自分のお皿を持ち上げて、敷かれた紙を取り出してくれた。

「今から番号を読み上げますので、手元の紙にその番号が書かれたマスがあったら点線に沿って穴をあけて下さい。」

用意したお手本の紙で実際に紙に穴をあける様子を見せてみる。

「穴があいたマスが、立て、横、斜めのどこか全てで揃ったら、大きな声で『ビンゴ!』って言って下さい。また、後一個で揃う!って時は『リーチ!』って言います!」

更に何回か丁寧に説明して、ルールを浸透させる。

「ビンゴになった人は、ゲームあがりです!」

「最初に上がった人はどんなご褒美があるんだ?」

スパヴェンタさんがヤジを飛ばしてくる。まあ、だよな。無いんだけどね。

「えー、揃った人先着3名に……俺からキスをプレゼントします!」

精一杯のウケ狙いだ。誰かつっこめ!滑りませんように。

「やったぁ!じゃあおいら頑張る!」

カルノくんが声を上げた。いや、そういうのっかりはいいから!
けど、カルノくんだけじゃなくてあちこちのテーブルがざわめきだした。

「カナト様のキスだって!」

「わぁ!」

まさかの大盛り上がり。え、何で?何でこんなに俺の好感度高いの?話したことすらない人もいるよね?
よく分からないけど、今更冗談とも言いにくいな。

「じゃあ、皆さんはりきってわぷっ……」

続けようとしたらスピーカーをしてくれていたオージの手が俺の口をふさいだ。
そのままオージの方に引き寄せられて抱き込まれる。
俺の言葉を遮ったオージが、代わりによく通る声で告げた。

「と言うのはカナトの冗談で、早くあがった人には一つお願い事を僕が叶えるよ。」

えっ

「オージ、それは申し訳ないからっ」

口から手が離れたので、振り返って遠慮する。

「でも、その体はドロテオのものだろう?勝手に誰かとキスしちゃダメじゃないかい?」

じっと目を見て言われ、はっとする。

「あ……ごめん。」 

オージの指摘はもっともだ。考えが足りてなかった。

「大丈夫。僕に任せて。」

「うん、ありがとう。」

オージがお願いを聞いてくれる、と言うのそれはそれで嬉しかったらしく、みんなノリノリでビンゴの紙とにらめっこを始める。

「最初は……34番!34と書いてあるマスに穴をあけて下さい!」

それから数字を書いた紙の山から引いては読み上げ、引いては読み上げた。

やがて、ちらほらリーチの声が挙がる。

「びんご!」

初めてあがりの声を上げたのは、ミミさんの子供だった。
人間でいったら三歳くらいの女の子だろう。花柄のワンピースを来て首に赤いリボンが巻かれている。
ミミさんに促され、トコトコと紙を持って前に進んで俺に紙を渡してくれた。ちゃんと読み上げた数字に穴が開けてあることを確認してオージに目配せする。

「ルル、どんなお願いを叶えて欲しいのかな?」

オージが子猫の目の前にしゃがんで名前を呼んで尋ねた。微笑ましい光景過ぎる。本当に良い王様だよな。

「えっとね、たいこうしゃま、かたぐるましてくだしゃい!」

ルルちゃんが元気よく言う。な、何て可愛いお願いなんだ!思わず身悶えだ。

「る、ルル!大公様に失礼だよ!肩車ならパパがしてあげるから。」

「えー。やだ。たいこうしゃまのせのがおっきいもん。」

ルルちゃんのお父さんが慌てて止めるけど、ルルちゃんにはいまいち伝わらなかった。

「ふふ、良いよ。」

一国の王様であるオージは、なんのためらいもなく笑顔でルルちゃんを抱き上げて肩に乗せた。ルルちゃんがきゃあ!と楽しそうな歓声をあげる。

見ているだけで笑顔になる光景だな。こういうのを尊いって言うに違いない。


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