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9, コンパ料理
しおりを挟む調理のためエプロンを借りて、シンクで手を洗う。
この屋敷は上下水道も通ってるし明かりは電灯っぽい。キッチン設備を見たところコンロみたいなものもあった。
つくづく文明の感じは魔法なんてものがある以外本当に地球に似ている。
テレビやスマホは無いみたいだから、発展度合いとしてはいわゆる現代ではないんだろうけど。
この世には互いに少しずつ違う平行世界が無限にあるなんて話を昔テレビで見たけど、この世界もその平行世界の一つなのかもな。
そんなことを考えながら蛇口から水を出して手を洗った。
「では、フライドポテトを作ります。」
俺はアルボさんとミミに向かって告げた。2人とも素直にこくりと頷いてくれる。ポテト、要るよね。大体のコンパで出てくるからね。
「アルボさん、ジャガイモはありますか。」
「はい。」
「それを、皮を剥いて、これくらいの太さの棒状に切って下さい。」
指で太さを示したら、アルボさんは手際よくジャガイモを剥いて細切りしてくれた。
「そうしたら、それを、しばらく水に漬けます。」
ミミさんが木のボウルに水を張って切った芋を入れてくれる。
「揚げ物用の鍋で油を熱します。」
これはアルボさんが用意してくれた。
「水にさらした芋の水気を布巾で拭き取って、小麦粉を軽くまぶします。」
俺が布巾で芋を軽く包んだ後、小麦粉をわしゃわしゃっとまぶした。
「で、これを表面がカリっとなるまで揚げます。」
程よく高温になった油に芋を投入したら、じゅわっと音を立てた。
アルボさんが、それを見て柄の付いた掬い網を渡してくれる。
網でかき混ぜながら、揚げ上がりのタイミングを見計らってすくい上げた。
「お塩を程良く降ります。」
出してもらったお塩をパラパラ。
我ながら上手くできたと思う。
専門学校時代に居酒屋でキッチンバイトをしていたから、簡単なおつまみなら作れてよかった。
「ちょっと熱いけど、冷ましながら食べて下さい。」
そう言うと2人がポテトを摘まんで、十分冷ましてから口に入れた。
味わった後に、ぱっと顔が明るくなる。
「おいしい!!」
ミミさんが言うと、うんと頷くアルボさん。
「そうでしょうそうでしょう。糖と油だから。今は試作ですけど本番はお水には一時間くらい浸けて下さい。」
2人が頷いた。あるんだ、1時間って単位。長さが俺の世界と同じだと良いけど。
それから塩から揚げの作り方も解説して、あとは普通にチーズやハムなんかのおつまみとこっちの料理を用意して貰うことにした。
そうして俺自身配膳やら会場の準備やらを手伝って、開始時間になった。
参加者は50名ほどだ。それが屋敷の使用人として多いか少ないかはよくわからないが、コンパとしてはまずまずだろう。
会場は椅子とテーブルが10セットほどおかれた広間。
本当は座布団とちゃぶ台がよかったけど、流石になかった。
席はくじ引きで決めて、入れ替えは自由。
もちろんオージもだ。
みんなびっくりしていたけど、王様が1人玉座にいるコンパなんて無い。無いよな?
オージのいるテーブルはみんなどことなくそわそわしてるけど、オージは何だか開始前から楽しそうにしている。
着席した様子を見て、司会役の俺は話し始めた。
「今日は皆さんスマラルダス初のコンパにご参加ありがとうございます!準備してくれた皆様、費用を負担してくれたオズバルドさん、ありがとうございます。」
俺がパチパチパチと自分で拍手すると、まばらに一緒に拍手してくれる音が会場に響く。
まあ、初めてだからノリがいまいちなのはしょうがない。これからだ。
「本日は無礼講ですので!途中でゲームもありますよ!では乾杯しましょう。乾杯の合図は、アンネさんにお願いします!」
事前に頼みこんでおいたので、アンネさんがしずしずと立ち上がって杯を持ち上げた。
「わたくし僭越ながら。初めてのことで緊張しております。ラタがやってくれたらよかったのに。」
不満げな口調に会場からクスクスと笑い声が漏れる。アンネさん、恥ずかしがってたけど掴みは中々だ。
「オズバルド様、カナト様、貴重な体験をありがとうございます。皆様、明日少し寝坊しても特別に許しますので、今日は楽しみましょうね。それではご唱和ください。乾杯!」
かんぱーいと会場にみんなの声が響いて、コンパが始まった。
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