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「ディーは、今まで僕が生徒会で活動している時あの子たちと一緒にいたの?」

屋敷に戻った後、ジョシュア様の部屋に連れてこられ、ベッドに並んで座った所で切り出された。

「えっと、はい、たまに……」

ジョシュア様に嘘をつく罪悪感を感じながらも、真剣な面持ちで聞かれて仕方がないので適当に話を作る。

「…………ああいう風に遊んでるの?」

「え?」

「ディーから飛びついたり。だって、お兄ちゃんの僕にはそんな事してくれないのに。」

当たり前だ。ジョシュア様に飛びついて首元を締めるなんてあり得ない。

「えっと、今日はたまたまです。いつもはお喋りしたり……」

否定しなきゃいけない気がして適当に嘘を塗り重ねる。

「じゃあ話して。」

「え?」

「あの子たちに話した事、全部僕にも話して。お友達に話す事は兄弟にも話すものでしょう?」

またジョシュア様の変な兄弟像を知ってしまった。
そして、盛大に墓穴を掘ったことに気づく。

「申し訳ありません。あの方たちと遊んでいたというのは嘘です。今日はたまたまちょっと話しかけられて世間話をしてました。」

「何の話?」

「それは、言えません。申し訳ありません。」

「そう……じゃあそういうことにしておいていいよ。」

「ありがとうございます。」

「ねぇ、今ね、ディーも生徒会に入れるように調整してるんだ。」

「はい?」

「やっぱり、放課後待ってもらってると僕の知らないところでディーが誰かと仲良くなっちゃうかもしれないでしょ?兄弟はいつも一緒にいないとね。」

「待ってください。僕の家柄如きで生徒会なんて……!」

生徒会は、代々王族が会長でメンバーは将来大臣や宰相になる上位貴族出身の生徒ばかりだ。

「大丈夫。僕の補佐役って臨時職だから。基本僕とだけやり取りすればいいんだ。他の人は無視してね。」

「む、無理です。お願いします。それだけは……」

涙が出てきた。ジョシュア様の言う事に反論なんて本当はしたくない。
生徒会に入れたらもっとジョシュア様といられるんだし。
でも、公爵家の威を借りることはお母さんが何よりも嫌がる事なんだ。
貴族学校に通うのだって相当渋った。
決して人の力を自分の力と勘違いしないように。どんなふうでもいいからお父さんみたいに誇りを持って自分の力で道を切り開いて生きていきなさいって。
僕もそうするべきだと思っている。

「そう…………」

ジョシュア様が悲しそうに下を向いた。
それを見て僕の胸も痛む。

「あの……」

「そしたら、ディーが僕の恋人だってみんなに言おうか?」

「はい………はい?」

この人何言ってるの?

は!?いけないいけない。内心とはいえ僕はジョシュア様になんて口を。

「そうしたら、ディーに変に手を出そうとする人はいなくなると思うんだ。うん、それがいいよ。」

さ、さらに目をつけられると思うけど……。
どうしよう。これ、どういう展開なんだ。
何だかドキドキしてきた。

「ジョシュア様、僕は貴方の恋人じゃないです。」

そう返すとジョシュア様があからさまにしょんぼりしてしまった。
その様子に、更に落ち着かない気分になる。

まさか、まさかね。だってジョシュア様は僕のこと弟としか思ってないし。

「でも、兄弟って一緒に悪戯するものだろう?僕たちが付き合ってるって言ったらみんなびっくりして面白いんじゃないかな。」

そう言われて、発言の原因がジョシュア様のおかしな兄弟像のせいだと分かり少し冷静になった。

「う、嘘はよくありません。僕、嘘をつくジョシュア様は、き、嫌いです……」

言ってしまった後に凄く後悔する。
ジョシュア様が好きでもない僕とふざけて恋人の振りをしようとしたことが気に掛かってつい八つ当たりをしてしまった。

ジョシュア様は更にしょんぼりした顔になってる。
ああ、僕って最低。

しかし、その後何かを思いついたようにぱっと顔を明るくした。

「じゃあ、本当に恋人同士になればいいんだよ!」

「え?」

この人何言ってるんだろう。
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