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第3章 学園編
26 助力
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翌週も育成科の授業が終わったら書庫で作業する生活は変わらなかった。
ただ、作業は書庫にある読書台の一つを4人で占領して進めている。
俺が作ったカード目録を渡すと、裏にルドルスやジキスが内容の要約をつけてくれる。
初見から書く俺と違って、大体の本の内容を把握してるからか二人ともすごい早い。
元々二人が優秀だってのもあるだろう。
ミレーユはたどたどしい手つきで本に図書カードを貼り付けているが、日が落ちた後はその日作業が終わった書籍をきっちり片付けてくれた。
珍しいのは、いつもミレーユの首に巻きついているレイラが今日は部屋の隅でジキスの子鹿型の守護獣ネイアと一緒にいる事だ。
2体で身を寄せ合って大人しくしていて、よほど仲が良いのかたまにお互いをグルーミングしている。
守護獣同士が交流しているのが珍しくて最初気づいた時にまじまじと観察していると、
「研究の邪魔だから厩舎に入れてるのにあいつが勝手に連れて来たんだ。大人しくしてるから戻すだけ面倒だし置いてるだけだからな。」
とジキスが聞いてもいないのに言ってきた。
厩舎に入れっぱなしは可愛そうだと思っていたので、これについてはミレーユのファインプレーだと思う。
「あの、失礼します。」
しばらく4人で作業していると、ユーリスのクラスメイトであるティモルが書庫に入って来た。
守護獣のグレは一緒じゃなくて、代わりにティモルに似た感じの小柄で可愛らしい生徒を2人連れている。
グレはおとなしくお留守番ができるようになったみたいだ。
「ネイサム様。ご機嫌麗しく。書籍を借りにいらしたのですか?」
席を立って3人の前に向かう。
「いえ、ルコ様のお手伝いをしたくて。」
「お手伝いでございますか?」
「はい。書庫の整理をされてると聞きました。」
「よくご存知ですね。」
「ユリスフォード様親衛隊としては従者の方の動向も当然の収集情報です!」
ティモルの隣の子猫みたいなつり目の少年がはきはきと言う。
「し、親衛隊……?」
前に耳にしたファンクラブのことだろうか。
そっか、この人たちが……。
「こらっ、まだご本人にお許し頂いてないんだから名乗っちゃダメだよ!」
ティモルが慌てて連れをたしなめた。
弁解するように俺を見て話を続ける。
「あの、勝手にお調べしてすみません。この間のお礼がしたくて……。僕にお手伝い出来ることないですか?」
「ティモルが受けたご恩は僕たちみんなのご恩ですー。」
反対側の隣にいる、パンダみたいな垂れ目の少年が朗らかに言った。
申し出自体は非常にありがたい。
この際甘えられる好意には甘えようかな。
「では、お手数ですが書籍の情報を記載するカードの作成にご協力頂けますか。」
「はい!」
元気よく返事をした3人をテーブルに案内して見本で自分が作成したカード目録を見せる。
ティモルはそれを見て目を丸くした。
カードと俺の顔を交互に見る。
「僕のレポートの添削って……」
あ、しまった。確かに筆跡で分かるよな。
うっかりしてた。
俺は慌てて人差し指を口に当ててその先を制した。それを見たティモルがハッとして何度も頷く。
「あ、あの、グレ、ちゃんと厩舎でお留守番出来るようになったんです!」
ティモルが頬を紅潮させて教えてくれる。
「そうですか。よかったですね。」
「はい!訓練も先週から何かすごい手応えあって、ひょっとして新しい技を覚えるかもしれません。防御が上がるような技が良いんですけど……」
そう無邪気に言っていたティモルだったけど、その週の終わりにはグレが幻獣クー・シーに進化したというニュースが学園を駆け巡った。
ただ、作業は書庫にある読書台の一つを4人で占領して進めている。
俺が作ったカード目録を渡すと、裏にルドルスやジキスが内容の要約をつけてくれる。
初見から書く俺と違って、大体の本の内容を把握してるからか二人ともすごい早い。
元々二人が優秀だってのもあるだろう。
ミレーユはたどたどしい手つきで本に図書カードを貼り付けているが、日が落ちた後はその日作業が終わった書籍をきっちり片付けてくれた。
珍しいのは、いつもミレーユの首に巻きついているレイラが今日は部屋の隅でジキスの子鹿型の守護獣ネイアと一緒にいる事だ。
2体で身を寄せ合って大人しくしていて、よほど仲が良いのかたまにお互いをグルーミングしている。
守護獣同士が交流しているのが珍しくて最初気づいた時にまじまじと観察していると、
「研究の邪魔だから厩舎に入れてるのにあいつが勝手に連れて来たんだ。大人しくしてるから戻すだけ面倒だし置いてるだけだからな。」
とジキスが聞いてもいないのに言ってきた。
厩舎に入れっぱなしは可愛そうだと思っていたので、これについてはミレーユのファインプレーだと思う。
「あの、失礼します。」
しばらく4人で作業していると、ユーリスのクラスメイトであるティモルが書庫に入って来た。
守護獣のグレは一緒じゃなくて、代わりにティモルに似た感じの小柄で可愛らしい生徒を2人連れている。
グレはおとなしくお留守番ができるようになったみたいだ。
「ネイサム様。ご機嫌麗しく。書籍を借りにいらしたのですか?」
席を立って3人の前に向かう。
「いえ、ルコ様のお手伝いをしたくて。」
「お手伝いでございますか?」
「はい。書庫の整理をされてると聞きました。」
「よくご存知ですね。」
「ユリスフォード様親衛隊としては従者の方の動向も当然の収集情報です!」
ティモルの隣の子猫みたいなつり目の少年がはきはきと言う。
「し、親衛隊……?」
前に耳にしたファンクラブのことだろうか。
そっか、この人たちが……。
「こらっ、まだご本人にお許し頂いてないんだから名乗っちゃダメだよ!」
ティモルが慌てて連れをたしなめた。
弁解するように俺を見て話を続ける。
「あの、勝手にお調べしてすみません。この間のお礼がしたくて……。僕にお手伝い出来ることないですか?」
「ティモルが受けたご恩は僕たちみんなのご恩ですー。」
反対側の隣にいる、パンダみたいな垂れ目の少年が朗らかに言った。
申し出自体は非常にありがたい。
この際甘えられる好意には甘えようかな。
「では、お手数ですが書籍の情報を記載するカードの作成にご協力頂けますか。」
「はい!」
元気よく返事をした3人をテーブルに案内して見本で自分が作成したカード目録を見せる。
ティモルはそれを見て目を丸くした。
カードと俺の顔を交互に見る。
「僕のレポートの添削って……」
あ、しまった。確かに筆跡で分かるよな。
うっかりしてた。
俺は慌てて人差し指を口に当ててその先を制した。それを見たティモルがハッとして何度も頷く。
「あ、あの、グレ、ちゃんと厩舎でお留守番出来るようになったんです!」
ティモルが頬を紅潮させて教えてくれる。
「そうですか。よかったですね。」
「はい!訓練も先週から何かすごい手応えあって、ひょっとして新しい技を覚えるかもしれません。防御が上がるような技が良いんですけど……」
そう無邪気に言っていたティモルだったけど、その週の終わりにはグレが幻獣クー・シーに進化したというニュースが学園を駆け巡った。
16
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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