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第3章 学園編
22 実技授業
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次の日アシスタントとして参加した授業は、ユーリスのクラスだった。
ちょっと期待して早めに行ってみたけど、ユーリスの周りは常に誰かがいて目が合いすらしない。
この日の授業は実技で、いろいろな器具や障害物が置かれた訓練場にクラスで集まった。
訓練の内容は、守護獣と器具を使ってパフォーマンスをしたり障害物を超えたりする訓練を通じて守護獣を適切に操れるようにするというものだ。
めいめいの生徒が自分に適した課題を選んで訓練し、学期の最後にそれを披露するのが試験になってる。
訓練が始まると、向こうでは猿の守護獣にお手玉を教える生徒、こちらではトンビの守護獣にフリスビーキャッチを仕込む生徒、といった感じで楽しそうに取り組んでいる。
やっぱり、座学よりこういう実践の方がいいなと思った。
ユーリスは、四つ足の中型守護獣の大半が選択する障害物コースの走破を選択したようで、ノスニキを連れて何人かの生徒とコース付近に移動していた。
流石にフェンリルの姿で課題をこなすつもりはないらしい。
とはいえ狼犬のままでも、ノスニキにコースは簡単すぎるように見えた。
そのせいか、ユーリスはコースを回る様子もなく他の不真面目な生徒と立ち話している。
真面目にやれ真面目に。
注意をしようかどうか迷って様子を少し伺った。
話し相手の生徒が、何か面白かったのか笑いながら身を寄せてユーリスの肩をポンポン叩く。
……馴れ馴れしすぎないか?もっと距離おくべきでは?
…………いやいやいや、落ち着け俺。友達なら普通にこれくらいあるだろ。学校エアプか。いや、今世はエアプだけど。
込み上げてくる感情に自分で引きながら言い聞かせる。
変な思考を振り払うように頭を振ると、くらっと立ちくらみがして足が少しふらついた。軽い吐き気もする。
昨日の夜は油断すると過去にユーリスに変なことをしてなかったか考え出してしまったので、ほぼ寝ずに書籍の要約作業をしていた。
大丈夫だ。眠気もないし、これくらい。
まだ話している2人から目をそらし、自分の支援対象の訓練の様子を追う。
そこで、対象の1人が目に留まった。
セントバーナードの守護獣を連れた小柄な生徒で、肝心の守護獣はペッタリと地面に伏せて訓練をする気配がない。
一方の生徒はやらせたいようで、首を引っ張ったりお腹を叩いたりして何とか立ち上がらせようとしていた。
だいぶ困ってるようだ。
話しかけようか少し迷う。
アシスタントの立場でしゃしゃり出ていいものか。
教授を呼んでくるべきかもしれない。
いや、多少のアドバイスくらいはいいだろう。ダメだったら教授を呼べばいい。
研究科の生徒として、出来ることは最大限やらないと。
「お困りでございますか?」
生徒に話しかける。確か、ティモル・ネイサムという名前だったはず。
「あ、ブライトン様。あの、グレが起きてくれなくて……。」
俺まで様付けで呼ぶなんて育ちがいいな、と思いながら守護獣に視線をやる。
グレと呼ばれた大型犬が、伏せたままちろりとこちらを見上げる。
だるだるの口元が地面にむちゃっと付いていて、やる気のなさが滲み出ていた。
「ブラッシングは試されましたか?」
「あ、してないです……。」
ティモルは慌てて腰の道具ポーチから大きなコームを取り出した。
グレの背後に回ると、背中に当てて梳きはじめる。
「ネイサム様、やる気を高めるには頭と四肢を交互に梳くのですよ。お見せしても?」
そう言うとティモルは櫛を渡してくれた。グレの前にしゃがみ触って大丈夫そうか伺うと、相変わらずくたっとしている。
問題なさそうだ。
頭からコームを入れてマッサージするように動かした。
脚はコームを入れながら掌でも揉みほぐすようにブラッシングする。
ちょっと期待して早めに行ってみたけど、ユーリスの周りは常に誰かがいて目が合いすらしない。
この日の授業は実技で、いろいろな器具や障害物が置かれた訓練場にクラスで集まった。
訓練の内容は、守護獣と器具を使ってパフォーマンスをしたり障害物を超えたりする訓練を通じて守護獣を適切に操れるようにするというものだ。
めいめいの生徒が自分に適した課題を選んで訓練し、学期の最後にそれを披露するのが試験になってる。
訓練が始まると、向こうでは猿の守護獣にお手玉を教える生徒、こちらではトンビの守護獣にフリスビーキャッチを仕込む生徒、といった感じで楽しそうに取り組んでいる。
やっぱり、座学よりこういう実践の方がいいなと思った。
ユーリスは、四つ足の中型守護獣の大半が選択する障害物コースの走破を選択したようで、ノスニキを連れて何人かの生徒とコース付近に移動していた。
流石にフェンリルの姿で課題をこなすつもりはないらしい。
とはいえ狼犬のままでも、ノスニキにコースは簡単すぎるように見えた。
そのせいか、ユーリスはコースを回る様子もなく他の不真面目な生徒と立ち話している。
真面目にやれ真面目に。
注意をしようかどうか迷って様子を少し伺った。
話し相手の生徒が、何か面白かったのか笑いながら身を寄せてユーリスの肩をポンポン叩く。
……馴れ馴れしすぎないか?もっと距離おくべきでは?
…………いやいやいや、落ち着け俺。友達なら普通にこれくらいあるだろ。学校エアプか。いや、今世はエアプだけど。
込み上げてくる感情に自分で引きながら言い聞かせる。
変な思考を振り払うように頭を振ると、くらっと立ちくらみがして足が少しふらついた。軽い吐き気もする。
昨日の夜は油断すると過去にユーリスに変なことをしてなかったか考え出してしまったので、ほぼ寝ずに書籍の要約作業をしていた。
大丈夫だ。眠気もないし、これくらい。
まだ話している2人から目をそらし、自分の支援対象の訓練の様子を追う。
そこで、対象の1人が目に留まった。
セントバーナードの守護獣を連れた小柄な生徒で、肝心の守護獣はペッタリと地面に伏せて訓練をする気配がない。
一方の生徒はやらせたいようで、首を引っ張ったりお腹を叩いたりして何とか立ち上がらせようとしていた。
だいぶ困ってるようだ。
話しかけようか少し迷う。
アシスタントの立場でしゃしゃり出ていいものか。
教授を呼んでくるべきかもしれない。
いや、多少のアドバイスくらいはいいだろう。ダメだったら教授を呼べばいい。
研究科の生徒として、出来ることは最大限やらないと。
「お困りでございますか?」
生徒に話しかける。確か、ティモル・ネイサムという名前だったはず。
「あ、ブライトン様。あの、グレが起きてくれなくて……。」
俺まで様付けで呼ぶなんて育ちがいいな、と思いながら守護獣に視線をやる。
グレと呼ばれた大型犬が、伏せたままちろりとこちらを見上げる。
だるだるの口元が地面にむちゃっと付いていて、やる気のなさが滲み出ていた。
「ブラッシングは試されましたか?」
「あ、してないです……。」
ティモルは慌てて腰の道具ポーチから大きなコームを取り出した。
グレの背後に回ると、背中に当てて梳きはじめる。
「ネイサム様、やる気を高めるには頭と四肢を交互に梳くのですよ。お見せしても?」
そう言うとティモルは櫛を渡してくれた。グレの前にしゃがみ触って大丈夫そうか伺うと、相変わらずくたっとしている。
問題なさそうだ。
頭からコームを入れてマッサージするように動かした。
脚はコームを入れながら掌でも揉みほぐすようにブラッシングする。
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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