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第3章 学園編
21 誤解
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今週も、特にやることは変わらない。
授業のアシスタント中に守護獣たちを観察して、書棚を整理して、カード目録を作る。
ユーリスとは、いよいよ授業中や学内で見かけても目も合わせてくれなくなってしまった。
今の俺はもう研究科の生徒として公爵家に恥じない働きをするしかない。
週の中日、書庫で整理作業を進めているとルドルスがやってきた。
「バージニスタス様、何かお探しですか?」
タイトルを聞くと、既にカードを作った書籍だったのでカード目録で配架番号をチェックして目的の本を取り出す。
最近俺が勝手に本を動かしてるので、必然的に俺がいる時だと利用者は俺に本のありかを聞くようになってきた。
「持ち帰りますか。」
「ん。」
肯定の返事を受けて、裏表紙の裏に取り付けた貸出カードを抜き出し今日の日付とルドルスの名前を書いて貸出中のカードボックスに入れた。
「返す時はこのカードをまた本に戻してから、ラベルに書いてある棚に背表紙に付した番号順になるようお戻しいただけますでしょうか。」
「ん。」
従兄弟だからだろうか。返事の仕方がユーリスそっくりだ。
思わずクスリと笑ってしまったら、ルドルスが怪訝そうに片眉をあげた。
「失礼いたしました。ユーリスフレッド坊っちゃまのお返事とよく似ているもので。」
「よく話すから、話し方も似たんだろう。」
「そうなのですか?」
ずっとユーリスのそばにいるけど、ユーリスがバージニスタス家の人と会ったことなんて一度しか知らない。
俺が屋敷に勤め始めたばかりの頃、ユーリスが公爵夫人のお茶会に呼ばれたのに付き添いで行ったきりだ。
その時のことははっきり言えば最悪だった。
ノスニキが移動中ずっと俺の膝に乗っているせいでユーリスが俺に散々嫉妬するわ、着いたら着いたでノスニキをバカにされたとヘソを曲げるわで機嫌が直るのに本当苦労した。
結局、それ以来ユーリスはお茶会に行っていないはずだけど。
「母は茶会が好きで月に2回はやるからな。ユーリスが君を連れてきたのは一回だけだったが、次からは義伯父上と毎回来ていた。」
知らなかった。月2回というと、2人とノスニキでアッシュタールの遠乗りに行ってた頻度と同じだ。
何で俺には知らされてなかったんだろう。初回でユーリスの機嫌を損ねたから?
今の状況も合わさって、退けられていた事実に頭がくらりと立ち眩む感覚がする。
「何が悪くて2回目以降連れていただけなかったのでしょう。」
思わず目の前の男に聞いてしまった。
口にしてから、無礼な物言いだったかと少し後悔する。
「僕が君に話しかけたことじゃないか?」
特に気にした風もなくルドルスが言った。
話しかけた事?そういえば、ユーリスの後ろでノスニキを抱いていた俺に話しかけてきた少年がいたな。あれはルドルスだったのか。勤め始めたばかりでまだ貴族の誰が誰か分かってなかった。
確か、あの時ノスニキのことを小さいとか可愛いとか言われて、ユーリスがバカにされたと思ったのか怒ったんだったな。
少年からはそんなつもり全く感じなかったからフォローしたけど、ますます不機嫌になっただけだった。
もしかして、俺がノスニキをちゃんと庇えなかったから連れて行ってもらえなくなったのか。
「ありがとうございます。……よく分かりました。」
俺って、上手くやれてる気でいたけど気づかないだけで結構今までもユーリスに見限られてたのかもしれない。
そう思うとめまいが増す気がした。
いや、してしまったことは後悔してももうどうしようもない。
今から出来ることをして挽回して行こう。
ルドルスが去った後、中断していた作業を再開してその日はいつもより遅くまで居残った。
授業のアシスタント中に守護獣たちを観察して、書棚を整理して、カード目録を作る。
ユーリスとは、いよいよ授業中や学内で見かけても目も合わせてくれなくなってしまった。
今の俺はもう研究科の生徒として公爵家に恥じない働きをするしかない。
週の中日、書庫で整理作業を進めているとルドルスがやってきた。
「バージニスタス様、何かお探しですか?」
タイトルを聞くと、既にカードを作った書籍だったのでカード目録で配架番号をチェックして目的の本を取り出す。
最近俺が勝手に本を動かしてるので、必然的に俺がいる時だと利用者は俺に本のありかを聞くようになってきた。
「持ち帰りますか。」
「ん。」
肯定の返事を受けて、裏表紙の裏に取り付けた貸出カードを抜き出し今日の日付とルドルスの名前を書いて貸出中のカードボックスに入れた。
「返す時はこのカードをまた本に戻してから、ラベルに書いてある棚に背表紙に付した番号順になるようお戻しいただけますでしょうか。」
「ん。」
従兄弟だからだろうか。返事の仕方がユーリスそっくりだ。
思わずクスリと笑ってしまったら、ルドルスが怪訝そうに片眉をあげた。
「失礼いたしました。ユーリスフレッド坊っちゃまのお返事とよく似ているもので。」
「よく話すから、話し方も似たんだろう。」
「そうなのですか?」
ずっとユーリスのそばにいるけど、ユーリスがバージニスタス家の人と会ったことなんて一度しか知らない。
俺が屋敷に勤め始めたばかりの頃、ユーリスが公爵夫人のお茶会に呼ばれたのに付き添いで行ったきりだ。
その時のことははっきり言えば最悪だった。
ノスニキが移動中ずっと俺の膝に乗っているせいでユーリスが俺に散々嫉妬するわ、着いたら着いたでノスニキをバカにされたとヘソを曲げるわで機嫌が直るのに本当苦労した。
結局、それ以来ユーリスはお茶会に行っていないはずだけど。
「母は茶会が好きで月に2回はやるからな。ユーリスが君を連れてきたのは一回だけだったが、次からは義伯父上と毎回来ていた。」
知らなかった。月2回というと、2人とノスニキでアッシュタールの遠乗りに行ってた頻度と同じだ。
何で俺には知らされてなかったんだろう。初回でユーリスの機嫌を損ねたから?
今の状況も合わさって、退けられていた事実に頭がくらりと立ち眩む感覚がする。
「何が悪くて2回目以降連れていただけなかったのでしょう。」
思わず目の前の男に聞いてしまった。
口にしてから、無礼な物言いだったかと少し後悔する。
「僕が君に話しかけたことじゃないか?」
特に気にした風もなくルドルスが言った。
話しかけた事?そういえば、ユーリスの後ろでノスニキを抱いていた俺に話しかけてきた少年がいたな。あれはルドルスだったのか。勤め始めたばかりでまだ貴族の誰が誰か分かってなかった。
確か、あの時ノスニキのことを小さいとか可愛いとか言われて、ユーリスがバカにされたと思ったのか怒ったんだったな。
少年からはそんなつもり全く感じなかったからフォローしたけど、ますます不機嫌になっただけだった。
もしかして、俺がノスニキをちゃんと庇えなかったから連れて行ってもらえなくなったのか。
「ありがとうございます。……よく分かりました。」
俺って、上手くやれてる気でいたけど気づかないだけで結構今までもユーリスに見限られてたのかもしれない。
そう思うとめまいが増す気がした。
いや、してしまったことは後悔してももうどうしようもない。
今から出来ることをして挽回して行こう。
ルドルスが去った後、中断していた作業を再開してその日はいつもより遅くまで居残った。
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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