46 / 65
第3章 学園編
19 ユーリスは がまん を おぼえた!
しおりを挟む
ガシャンッと背後で食器がぶつかる音がして、熱っと小さな悲鳴が聞こえる。
振り返ると眉をしかめて手を押さえるユーリスの姿があった。
「いかがしましたか?」
慌てて近寄ってみれば、カップが倒れ紅茶がソーサーとクロスに大量に溢れていた。
手にしたカップを置き損ねて手に紅茶が掛かったのだろう。
「お見せください。」
濡れた左手を取り、指先を確認する。
見た目では特に外傷はないけど、軽い火傷くらいはしてるかもしれない。
「すみません、冷えた水を持ってきていただいても?」
驚いてこちらを見ている給仕に告げると、慌てて外に出て行った。
これくらい言われなくても動いて欲しい、と少しトゲのある気持ちが湧いてしまう。
「まだ痛みますか?」
ハンカチで紅茶を拭き取りながら尋ねる。
「……ちょっと。」
大したことはないはずだけど、見た目よりは酷いのかもしれない。
慰めるように手の甲を指の腹で撫でると、滑らかな皮膚の下に隆起した血管や筋の感触がした。
つい何度も指を往復させてその感触を味わう。
「っ……ルコ、もういいから、手、離せ。」
軽く振り払われてはっとした。
欲望丸出しの行動に走っていたのを咎められて恥ずかしさが湧いてくる。
「失礼いたしました。」
「下がっていい。あと、必要な時はこっちから呼ぶから。」
視線を合わせずにユーリスが言う。
嘘だ。部屋を移ってから一度だって呼んでくれたことないじゃないか。
言外に会いたくたいと言われ、自分はまたやらかしてしまったのだと気付いた。
そりゃそうだ。
仕事を口実に呼ばれてもないのに押しかけて、手を撫で回すセクハラ行為まで働いたんだから。
「も、申し訳ございません。出過ぎた真似をしました。」
クンクン鼻を鳴らしてこちらを見ているノスニキの前を横切って、とぼとぼと出口に向かい部屋を後にする。
ノスニキがフォローしてくれるのはありがたいけどちょっと俺やり過ぎちゃってどうしようもないみたい。
ふらつく足取りで自室のあるフロアを歩いていると、まばらに歩く生徒の中にミレーユとジキスがいた。
「あ、ルコおはよ。ご飯食べた?俺らこれから食堂いくとこ。今日のメニュー何だった?」
ミレーユが話しかけてくる。
止まらず通り過ぎようとするジキスの首根っこをしっかり掴んで。
「ごめん、食事はしてないんだ。」
「じゃあ俺らと一緒に食べる?」
「私を一緒にするな!貴様が私が出るタイミングで勝手に付いてきただけだろうが!離せバカミレーユっ」
「朝は食べない方でさ。悪いけど。」
「そう。何か昨日より更に顔色悪いよ。休んだら?」
「ありがとう。そうする。」
「おい!私を無視するなってば!」
2人と別れて部屋に戻り、筆記用具やノートを取り出してまた廊下に出る。
何かしていないといられなかったので、週末の二日間は結局は暮れるまで書庫に行って整理作業を進め、夜はまた眠れるまでレポートを添削した。
週明け、まだ誰も教室に来ていないうちに2年のそれぞれの引き出しに書き上げた添削レポートをつっこむ。
自分の分は提出ボックスに先に入れた。
そのすぐ後、ジキスがいつものように本が詰まった大きな革鞄を下げて部屋に入って来た。
こちらを一瞥もせずに机に鞄を置き、中から自分の添削済みレポートを取り出して提出ボックスに近づく。
入れる時に、先に入っていた俺のレポートをじっと見た。
「少し見てもいいか?」
俺に向けての言葉だと最初わからなくて、黙っていたらジロリと睨まれた。
やっと意図に気づいて承諾すると、ジキスが自分のレポートと入れ違いに俺のレポートを取り出して読み始める。
心なしかちょっと緊張した。
振り返ると眉をしかめて手を押さえるユーリスの姿があった。
「いかがしましたか?」
慌てて近寄ってみれば、カップが倒れ紅茶がソーサーとクロスに大量に溢れていた。
手にしたカップを置き損ねて手に紅茶が掛かったのだろう。
「お見せください。」
濡れた左手を取り、指先を確認する。
見た目では特に外傷はないけど、軽い火傷くらいはしてるかもしれない。
「すみません、冷えた水を持ってきていただいても?」
驚いてこちらを見ている給仕に告げると、慌てて外に出て行った。
これくらい言われなくても動いて欲しい、と少しトゲのある気持ちが湧いてしまう。
「まだ痛みますか?」
ハンカチで紅茶を拭き取りながら尋ねる。
「……ちょっと。」
大したことはないはずだけど、見た目よりは酷いのかもしれない。
慰めるように手の甲を指の腹で撫でると、滑らかな皮膚の下に隆起した血管や筋の感触がした。
つい何度も指を往復させてその感触を味わう。
「っ……ルコ、もういいから、手、離せ。」
軽く振り払われてはっとした。
欲望丸出しの行動に走っていたのを咎められて恥ずかしさが湧いてくる。
「失礼いたしました。」
「下がっていい。あと、必要な時はこっちから呼ぶから。」
視線を合わせずにユーリスが言う。
嘘だ。部屋を移ってから一度だって呼んでくれたことないじゃないか。
言外に会いたくたいと言われ、自分はまたやらかしてしまったのだと気付いた。
そりゃそうだ。
仕事を口実に呼ばれてもないのに押しかけて、手を撫で回すセクハラ行為まで働いたんだから。
「も、申し訳ございません。出過ぎた真似をしました。」
クンクン鼻を鳴らしてこちらを見ているノスニキの前を横切って、とぼとぼと出口に向かい部屋を後にする。
ノスニキがフォローしてくれるのはありがたいけどちょっと俺やり過ぎちゃってどうしようもないみたい。
ふらつく足取りで自室のあるフロアを歩いていると、まばらに歩く生徒の中にミレーユとジキスがいた。
「あ、ルコおはよ。ご飯食べた?俺らこれから食堂いくとこ。今日のメニュー何だった?」
ミレーユが話しかけてくる。
止まらず通り過ぎようとするジキスの首根っこをしっかり掴んで。
「ごめん、食事はしてないんだ。」
「じゃあ俺らと一緒に食べる?」
「私を一緒にするな!貴様が私が出るタイミングで勝手に付いてきただけだろうが!離せバカミレーユっ」
「朝は食べない方でさ。悪いけど。」
「そう。何か昨日より更に顔色悪いよ。休んだら?」
「ありがとう。そうする。」
「おい!私を無視するなってば!」
2人と別れて部屋に戻り、筆記用具やノートを取り出してまた廊下に出る。
何かしていないといられなかったので、週末の二日間は結局は暮れるまで書庫に行って整理作業を進め、夜はまた眠れるまでレポートを添削した。
週明け、まだ誰も教室に来ていないうちに2年のそれぞれの引き出しに書き上げた添削レポートをつっこむ。
自分の分は提出ボックスに先に入れた。
そのすぐ後、ジキスがいつものように本が詰まった大きな革鞄を下げて部屋に入って来た。
こちらを一瞥もせずに机に鞄を置き、中から自分の添削済みレポートを取り出して提出ボックスに近づく。
入れる時に、先に入っていた俺のレポートをじっと見た。
「少し見てもいいか?」
俺に向けての言葉だと最初わからなくて、黙っていたらジロリと睨まれた。
やっと意図に気づいて承諾すると、ジキスが自分のレポートと入れ違いに俺のレポートを取り出して読み始める。
心なしかちょっと緊張した。
16
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
お気に入りに追加
1,143
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜
百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。
最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。
死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。
※毎日18:30投稿予定

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる