45 / 65
第3章 学園編
18 嫉妬
しおりを挟む
「何か顔色悪くない?大丈夫?」
平日の最終日、教授に頼まれて教室で次の授業の教材を用意していたらミレーユに声をかけられた。
「そうか?別になんともないけど。」
「でも、最近朝も早くきてるみたいだし、夜も遅くまでいるよね?何でそんなに真面目なの?ひょっとして中央狙い?」
ミレーユの言う中央研究所ってのは、王直属の国で一番権威がある学術機関、らしい。
所属学者の中には守護獣研究者もいると聞いた。
話を聞く限りでは守護獣を持つものにとって、王立軍に入る以外では一番の出世コースという印象だ。
「別にそういうわけでは……」
「無理に決まってる。ここに来て1週間経つのにアシスタントや書庫の整理ばかりやって教授のご機嫌取りしかしてないやつが。」
横から久々にジキスの声を聞いた。
「そんなつもりはございません。」
ノートに目を落としてこちらを見もしない横顔に返す。
「ジーちゃんルコのことよく見てるぅ~」
「なっ、それしかしてなきゃ嫌でも目に入る!その呼び方やめろ!」
ミレーユのからかいには秒で反論。
煽り耐性は相変わらずないみたいだ。
「ずるい~俺の事ももっと見て~。」
「黙れっ!だれが……」
その時教室に学園の召使いが紙の束を抱えてきた。
「今週のレポートをお持ちしました。」
~・~・~
その日は早めに自室に帰り、レポートのチェックに取り掛かかる。
100を超えるレポートの束は中々圧巻だ。
まずは1年生のレポートからざっと目を通す。
基礎がおろそかなレポートも多いけど、個性が見えてなかなか面白い。
続けて2年生のレポートは、学園の講義で教わった型にはまった通りのものが目立った。
もちろん中には下見の時からなかなか良い育成をしていそうな生徒もいて、そういう奴のレポートはだいぶマシだ。
よし、と気合を入れて自分のノートを取り出し、最初のレポートを書いた生徒の名前を探した。
作業しているうちに夜が明けて、鐘が朝7時を告げるのを聞いて手を止める。
徹夜したおかげでレポートは半数以上添削できていた。
残りは今日と明日の夜にやれば終わるだろう。
週末はユーリスが公爵の屋敷に帰るはずだから、お供で俺も帰る必要があった。
学園ではすっかり距離を置かれてしまって話す事もなくなってしまったが、それでも俺はユーリスの執事だ。
里帰りには同行するし、屋敷にいる間は執事の仕事をするのが当然だろう。
久々に一緒に過ごせると思うと気持ちが弾んだ。
身支度を整えて足早にユーリスの部屋に向かう。
丁度朝食が運ばれるところで、給仕係に食後に会いたいことを伝えて外で待つ。
ユーリスは結構早食いなので、そう待たずに中に呼ばれた。
中に入ると、学園が用意した専属のフットマンがユーリスの横に控えているのが目に付く。
気にしない振りをしてユーリスに礼をした。
「おはようございます坊っちゃま。屋敷へ出発するのは8時ごろでよろしいでしょうか。」
「ああ、今週は帰らないから。ルコも寮でゆっくりしてなよ。」
「……さようでございますか。」
「うん。週末は当面帰らないでノスの訓練をしようと思うんだ。」
「では、訓練をお手伝いいたします。」
「必要ない。自分でできるよ。マシュー、紅茶くれないか。」
ユーリスがフットマンに命じると、マシューと呼ばれた男が当然のようにカップに紅茶を注いで運んだ。
それに、はっきりとした胸のムカつきを覚える。
「かしこまりました。失礼いたします。」
これ以上いたら苛立ちが態度に出てしまいそうで、諦めて部屋を去ることにした。
そこに、室内にいなかったノスニキがするりと壁を抜けて入ってくる。
黒い瞳が俺を見て鼻をピスピス鳴らした。
しゃがんで黒銀の頭を撫でて耳の裏をかいてやると、気持ちよさそうに目を細める。
ノスニキはじっとこちらの顔を見つめた後、首を伸ばしてペロっと俺の口の周りを舐めた。
平日の最終日、教授に頼まれて教室で次の授業の教材を用意していたらミレーユに声をかけられた。
「そうか?別になんともないけど。」
「でも、最近朝も早くきてるみたいだし、夜も遅くまでいるよね?何でそんなに真面目なの?ひょっとして中央狙い?」
ミレーユの言う中央研究所ってのは、王直属の国で一番権威がある学術機関、らしい。
所属学者の中には守護獣研究者もいると聞いた。
話を聞く限りでは守護獣を持つものにとって、王立軍に入る以外では一番の出世コースという印象だ。
「別にそういうわけでは……」
「無理に決まってる。ここに来て1週間経つのにアシスタントや書庫の整理ばかりやって教授のご機嫌取りしかしてないやつが。」
横から久々にジキスの声を聞いた。
「そんなつもりはございません。」
ノートに目を落としてこちらを見もしない横顔に返す。
「ジーちゃんルコのことよく見てるぅ~」
「なっ、それしかしてなきゃ嫌でも目に入る!その呼び方やめろ!」
ミレーユのからかいには秒で反論。
煽り耐性は相変わらずないみたいだ。
「ずるい~俺の事ももっと見て~。」
「黙れっ!だれが……」
その時教室に学園の召使いが紙の束を抱えてきた。
「今週のレポートをお持ちしました。」
~・~・~
その日は早めに自室に帰り、レポートのチェックに取り掛かかる。
100を超えるレポートの束は中々圧巻だ。
まずは1年生のレポートからざっと目を通す。
基礎がおろそかなレポートも多いけど、個性が見えてなかなか面白い。
続けて2年生のレポートは、学園の講義で教わった型にはまった通りのものが目立った。
もちろん中には下見の時からなかなか良い育成をしていそうな生徒もいて、そういう奴のレポートはだいぶマシだ。
よし、と気合を入れて自分のノートを取り出し、最初のレポートを書いた生徒の名前を探した。
作業しているうちに夜が明けて、鐘が朝7時を告げるのを聞いて手を止める。
徹夜したおかげでレポートは半数以上添削できていた。
残りは今日と明日の夜にやれば終わるだろう。
週末はユーリスが公爵の屋敷に帰るはずだから、お供で俺も帰る必要があった。
学園ではすっかり距離を置かれてしまって話す事もなくなってしまったが、それでも俺はユーリスの執事だ。
里帰りには同行するし、屋敷にいる間は執事の仕事をするのが当然だろう。
久々に一緒に過ごせると思うと気持ちが弾んだ。
身支度を整えて足早にユーリスの部屋に向かう。
丁度朝食が運ばれるところで、給仕係に食後に会いたいことを伝えて外で待つ。
ユーリスは結構早食いなので、そう待たずに中に呼ばれた。
中に入ると、学園が用意した専属のフットマンがユーリスの横に控えているのが目に付く。
気にしない振りをしてユーリスに礼をした。
「おはようございます坊っちゃま。屋敷へ出発するのは8時ごろでよろしいでしょうか。」
「ああ、今週は帰らないから。ルコも寮でゆっくりしてなよ。」
「……さようでございますか。」
「うん。週末は当面帰らないでノスの訓練をしようと思うんだ。」
「では、訓練をお手伝いいたします。」
「必要ない。自分でできるよ。マシュー、紅茶くれないか。」
ユーリスがフットマンに命じると、マシューと呼ばれた男が当然のようにカップに紅茶を注いで運んだ。
それに、はっきりとした胸のムカつきを覚える。
「かしこまりました。失礼いたします。」
これ以上いたら苛立ちが態度に出てしまいそうで、諦めて部屋を去ることにした。
そこに、室内にいなかったノスニキがするりと壁を抜けて入ってくる。
黒い瞳が俺を見て鼻をピスピス鳴らした。
しゃがんで黒銀の頭を撫でて耳の裏をかいてやると、気持ちよさそうに目を細める。
ノスニキはじっとこちらの顔を見つめた後、首を伸ばしてペロっと俺の口の周りを舐めた。
16
お気に入りに追加
1,146
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー
秋空花林
BL
「やっと見つけたましたよ。私の姫」
暗闇でよく見えない中、ふに、と柔らかい何かが太陽の口を塞いだ。
この至近距離。
え?俺、今こいつにキスされてるの?
「うわぁぁぁ!何すんだ、この野郎!」
太陽(男)はドンと思いきり相手(男)を突き飛ばした。
「うわぁぁぁー!落ちるー!」
「姫!私の手を掴んで!」
「誰が掴むかよ!この変態!」
このままだと死んじゃう!誰か助けて!
***
男とはぐれて辿り着いた場所は瘴気が蔓延し滅びに向かっている異世界だった。しかも女神の怒りを買って女性が激減した世界。
俺、男なのに…。姫なんて…。
人違いが過ぎるよ!
元の世界に帰る為、謎の男を探す太陽。その中で少年は自分の運命に巡り合うー。
《全七章構成》最終話まで執筆済。投稿ペースはまったりです。
※注意※固定CPですが、それ以外のキャラとの絡みも出て来ます。
※ムーンライトノベルズ様でも公開中です。第四章からこちらが先行公開になります。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる