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第3章 学園編
10 書庫
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暫く厩舎で守護獣の観察をした後、戻った所でたまたま会った教授の1人に資料を頼まれた。
あと少しでユーリスの授業が終わる頃だけど、仕方ないので書庫に向かう。
学園の巨大な書庫には、守護獣に関する文献や卒業生、研究者の論文が所狭しと棚に敷き詰められている。
今は夕方で陽が傾き、室内はかなり暗い。
とりあえず指定されたタイトルの書籍を探そうとして目を凝らしながら棚を眺め初めて気付いた。
この書庫、一切整理がされてなくないか?
並べ方に全く規則性がなく、タイトル順にも著者名順にもなってない。
一度も定期的な整理も利用のルール決めもせず、取り出した後終わったら適当に返す、そんな事を何年も続けてきた書庫じゃなかろうか。
しかも個人の写本なんかだと背表紙にタイトルすらない。
端からタイトルを見て、なかったら本を開いて中身を見る、という事をしなくてはいけないってことだ。
信じらんない。クリスタスの屋敷にある本棚だって定期的にだれかが整理していたし、前世の学校図書や図書館じゃありえない事態だ。
ここ、王立の学校だろ?何でこんな事態になってるんだ?
考えていても仕方がないので、集める図書のリストを手に端の棚から1つ1つランプで背表紙を照らしながらタイトルをチェックしていく。
恐ろしく効率が悪い。
どうりで教授も明日までに用意すればいいって言うわけだ。
こんなのタイトル順で並べておけばものの10分で済むのに。
あと1冊という所まで見つけた所で、ユーリスの終業時間はとうに過ぎていた。
日はとうに落ちてそろそろ夕食が運ばれてくる頃だ。
残りは明日早朝に探すことにして一旦戻ろう。
あまりランプを使いすぎると煤で本が痛むし。
「何をしている。こんなに暗くなってから書庫に出入りするな。ランプの煤で本が痛むだろう。」
背後から声がして、振り返ると暗い中にランプを掲げたジキスが立っていた。
パンパンになった革鞄を肩から下げている。
「申し訳ございません。」
「これだから下級民は無知で困る。」
「申し訳ございません。直ぐに出ます。」
「何を探していた。」
目線を上げると、俺がランプと一緒に持っていた文献リストをジキスが見ている事に気付いた。
「あの、明日にいたしますので……」
「今日できる事を明日にしようとするのは愚者だ。」
いやおま、さっき煤がつくからやめろって……
俺に突っかかりたいだけじゃないのか?
「『ネコ科守護獣の生態と習得技に関する一考察』です。」
「確かあの辺だ。」
ジキスがまだ俺の見ていない少し遠くの棚を指差す。
何でわかるのか疑いながらも棚を探すと、程なくして本当にその本を見つけた。
「ございました。誠にありがとうございます。」
ジキスのところに戻り感謝の気持ちを込めて頭を下げる。
何だ。結構いい奴じゃないか。
「用が済んだらさっさと出るぞ。本が痛む。」
ジキスもいつのまにかここの蔵書らしい本を手にしていて、パンパンの鞄を開けてそれを押し込む。
その時中に鍵がつけられた本が詰まっているのが見えた。
え、あの机の本、いちいち持って帰るの?
聞く理由もないので、思うだけで特には言及せず踵を返したジキスの後を追う。
教授の部屋は研究科の棟をでる途中にあるので、帰るらしいジキスとしばらく並んで歩くことになる。
「それ、頼まれたのか?」
手に抱えた書籍を見やったジキスに問われた。
「あ、はい。」
「2年のやつらか?」
そこで初めて、ジキスの質問の意図を理解する。
「いえ、教授にです。ご心配のような事はございません。」
「誰が貴様なんかの心配するか。奴らがまた他人に自分がすべき事を押し付けてるなら救いようのないクズだと思っただけだ。」
「お優しいんですね。」
「貴様は人の言うことが理解できない低脳だな!」
早足になったジキスの耳が少し赤くなってるのがランプの明かりでも分かった。
これはミレーユがからかいたくなる気持ちもわかる。
あと少しでユーリスの授業が終わる頃だけど、仕方ないので書庫に向かう。
学園の巨大な書庫には、守護獣に関する文献や卒業生、研究者の論文が所狭しと棚に敷き詰められている。
今は夕方で陽が傾き、室内はかなり暗い。
とりあえず指定されたタイトルの書籍を探そうとして目を凝らしながら棚を眺め初めて気付いた。
この書庫、一切整理がされてなくないか?
並べ方に全く規則性がなく、タイトル順にも著者名順にもなってない。
一度も定期的な整理も利用のルール決めもせず、取り出した後終わったら適当に返す、そんな事を何年も続けてきた書庫じゃなかろうか。
しかも個人の写本なんかだと背表紙にタイトルすらない。
端からタイトルを見て、なかったら本を開いて中身を見る、という事をしなくてはいけないってことだ。
信じらんない。クリスタスの屋敷にある本棚だって定期的にだれかが整理していたし、前世の学校図書や図書館じゃありえない事態だ。
ここ、王立の学校だろ?何でこんな事態になってるんだ?
考えていても仕方がないので、集める図書のリストを手に端の棚から1つ1つランプで背表紙を照らしながらタイトルをチェックしていく。
恐ろしく効率が悪い。
どうりで教授も明日までに用意すればいいって言うわけだ。
こんなのタイトル順で並べておけばものの10分で済むのに。
あと1冊という所まで見つけた所で、ユーリスの終業時間はとうに過ぎていた。
日はとうに落ちてそろそろ夕食が運ばれてくる頃だ。
残りは明日早朝に探すことにして一旦戻ろう。
あまりランプを使いすぎると煤で本が痛むし。
「何をしている。こんなに暗くなってから書庫に出入りするな。ランプの煤で本が痛むだろう。」
背後から声がして、振り返ると暗い中にランプを掲げたジキスが立っていた。
パンパンになった革鞄を肩から下げている。
「申し訳ございません。」
「これだから下級民は無知で困る。」
「申し訳ございません。直ぐに出ます。」
「何を探していた。」
目線を上げると、俺がランプと一緒に持っていた文献リストをジキスが見ている事に気付いた。
「あの、明日にいたしますので……」
「今日できる事を明日にしようとするのは愚者だ。」
いやおま、さっき煤がつくからやめろって……
俺に突っかかりたいだけじゃないのか?
「『ネコ科守護獣の生態と習得技に関する一考察』です。」
「確かあの辺だ。」
ジキスがまだ俺の見ていない少し遠くの棚を指差す。
何でわかるのか疑いながらも棚を探すと、程なくして本当にその本を見つけた。
「ございました。誠にありがとうございます。」
ジキスのところに戻り感謝の気持ちを込めて頭を下げる。
何だ。結構いい奴じゃないか。
「用が済んだらさっさと出るぞ。本が痛む。」
ジキスもいつのまにかここの蔵書らしい本を手にしていて、パンパンの鞄を開けてそれを押し込む。
その時中に鍵がつけられた本が詰まっているのが見えた。
え、あの机の本、いちいち持って帰るの?
聞く理由もないので、思うだけで特には言及せず踵を返したジキスの後を追う。
教授の部屋は研究科の棟をでる途中にあるので、帰るらしいジキスとしばらく並んで歩くことになる。
「それ、頼まれたのか?」
手に抱えた書籍を見やったジキスに問われた。
「あ、はい。」
「2年のやつらか?」
そこで初めて、ジキスの質問の意図を理解する。
「いえ、教授にです。ご心配のような事はございません。」
「誰が貴様なんかの心配するか。奴らがまた他人に自分がすべき事を押し付けてるなら救いようのないクズだと思っただけだ。」
「お優しいんですね。」
「貴様は人の言うことが理解できない低脳だな!」
早足になったジキスの耳が少し赤くなってるのがランプの明かりでも分かった。
これはミレーユがからかいたくなる気持ちもわかる。
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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