【R18/完結】転生したらモブ執事だったので、悪役令息を立派なライバルに育成します!

ナイトウ

文字の大きさ
上 下
33 / 65
第3章 学園編

6 研究科

しおりを挟む
眩しさと鳥の声で意識がふと戻る。

……眩しい?
少し体を起こすと俺の腰に乗っていた腕がボスっとマットレスに落ちた。
横を見れば起きる気配の無いユーリスの寝顔がカーテンから入る朝の光で浮かび上がる。

嘘だろ、あのままユーリスの部屋で寝ちゃうとか。今何時だ?
垂れてくる中のものをシーツに落とさないように押さえながらベッドを降りると、計ったかのように鐘楼から6時を告げる鐘が鳴った。

こんな時間まで寝てたなんて。
浴室に向かう前にまだベッドで寝ているユーリスをつい恨めしげに睨む。
いつもと違うシチュエーションに気分が乗ったんだが何だか知らないが、昨日のはヤり過ぎだ。
自制してくれたのは最初に頼んだ時だけで、後はひたすら盛られて途中から記憶がない。多分意識がトんだまま寝て今に至るんだと思う。

ここが屋敷なら職務怠慢と言われても仕方ないし、下手したら一緒に寝ている所を誰かに見られていたかもしれない。
ここだって、昨日朝は来ないように学園の従者に告げていなかったらと思うと背筋が冷える。

ユーリスに流されていたらダメだ。気を引き締めていかないと。
冷たい水で体や中を濯いで喝を入れた後、ユーリスの体も拭くためにお湯の用意にとりかかった。



育成科の教室までユーリスとノスニキを見送った後、自分は研究科のある別棟に移動する。

育成科は守護獣を持つ貴族の子弟が17歳から2年間通う専門学校みたいなものだ。大抵の生徒は家庭教師の個別指導や私塾で一般教養の学習は済ませてるので、学園では主に守護獣の強化訓練について学んで実践する。

研究科は、通常育成科を修了した後に更に守護獣について学ぶために在籍する学科だ。オリエンテーションの話し振りだと、学校というよりは大学のゼミや研究室に近い印象だった。
いくつもクラスがある育成科と比べても研究科の生徒は全体で20人程度しかいない。進学基準が厳しいってのもあるけど、大抵の貴族の子弟は育成科を卒業したら宮廷の役職に就くか、国軍に入るか、親の所領経営を手伝うのが一般的だからあまり守護獣の専門家としてのキャリアは選ばないんだろう。
研究科も2年制だけど、専門家になるなら卒業後も学園に在籍を続けて目指す感じだ。

「おっはよーー!」

廊下を歩いていると背後から声を掛けられた。
振り返ると、首に細い蛇が巻きついた男が人懐こそうな笑顔でこちらを見ている。
研究科の生徒だ。昨日のオリエンテーションの自己紹介では俺と同じ1年って名乗っていた。
長身だけど少し線が細くて全体的に色素が薄い体は、顔つきも手伝って軽薄な印象を受ける。
確か名前は……

「君ルコだっけ?俺は覚えてる?ミレーユ・タルマンだよ。こっちの超美人さんはレイラちゃんさ。よろしくねー。」

ミレーユが自分と守護獣の名を告げてくる。
こっちは覚えられていたらしい。育成科を飛ばしていきなり研究科に入ったのなんて俺くらいだからか悪目立ちしているのは何となく昨日感じた。

「はい。ルコ・ブライトンと申します。よろしくお願いいたします。」

何とも軽そうなノリに少し面食らいながら返す。

「同学年なんだから敬語とかいいよいいよールコ。」

「しかし、私は平民ですので。」

「俺も平民だよ!!お揃い!」

いきなりガシッと肩を組まれる。
いや、距離感おかしいだろ。首に巻きついた蛇も頬にスリスリしてくる。

「なのに守護獣がいるんですか?」

初めて見る蛇の守護獣に、手を伸ばして頭の横を指先で掻いてやる。
気持ち良さそうにレイラが舌をチロチロ動かした。

「そうだよ!俺の母親は没落した貴族で、商人の父親に金で買われたんだよねぇ。半分貴族の血が入ってるからレイラが守護獣になってくれたのさ。ラッキー。」

そう言ってミレーユはレイラの頭にチュッチュとキスをした。
こいつ、今ノリに似合わなすぎる重い出自をさらっと言ったぞ。

「はぁ、レイラちゃんは本当に可愛いでちゅねー!」

レイラに頬擦りをするミレーユ。

「可愛がってるんだな。」

本人が不要というので、俺も普通に接する事にする。
守護獣と契約できるのはこのゲームの主人公みたいな一部の例外を除けば貴族と王族だけなので、俺にとっては学園中が目上みたいなものだ。でも流石にそれでずっと2年間過ごすのは気が休まらないと思っていた。ミレーユみたいな存在に出会えたのは正直ありがたい。

「まあね!大好きな俺の分身だから!ルコもレイラを可愛がってくれてありがとぉ!」

ミレーユが屈託のない顔で笑う。
よかった。悪いやつじゃなさそうだ。
しおりを挟む
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
感想 8

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...