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第3章 学園編
3 ご機嫌取り
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で、アルネスター殿下のとこから帰ってきたらなんかめちゃくちゃユーリスの機嫌が悪いんだけど……。
ノスニキはそんなユーリスを横目で見て面倒はごめんだとばかりに部屋の隅でうたた寝を始めた。
原因は分かってる。
殿下と会ったからだ。
正確には、彼と俺が守護獣の育成について話が弾み過ぎてしまったからというか。
そりゃね、俺だって最初はノスニキの評判を聞いた殿下がユーリスに目を付けたんだと思ったよ。
元々クリスタス公爵家は王家と親密な貴族だし、ユーリスの兄ちゃんは殿下に気にいられてたって聞いてる。
ただ、ユーリスと殿下はあんまり親交が無くて、というか今までユーリスがあんまり歳の近い王族や貴族の子供と関わりたがらなかったというか。
まあ、一緒にいればどうしても守護獣比べになるし、そうするとその頃のノスニキと順調に成長してる他の子の守護獣の差を見せつけられてプライドが傷つくだろうから気持ちわからないでもない。
だからこそ、殿下に呼ばれたユーリスが、どう普通に装ってても内心この謁見にどれほど期待してたかに俺がちゃんと思い至ればよかった。
殿下は最初の方こそユーリスにノスニキの今の能力や習得技なんかを聞いていたけど、次第にそこに至る育成方法を掘り下げてくるようになった。
もちろんユーリスだって一通りの育成については答えられるけど、何故そう育てたかと聞かれれば俺がそう教えたからだ。
そんな部分を俺がポツポツ代わりに答えていたら、いつのまにか殿下と育成トークがメチャクチャ盛り上がってしまった。
だって、なんか、殿下と話してると前世でこのゲームの育成パート専用攻略サイトで他のプレーヤーと交流してるような気分になったんだもん。
俺が覚えてるゲームのアルネスターの印象は超偉そうな俺様キャラって感じだったけど、今日会った殿下の印象はちょっと違くて、もっと親しみやすさがあるというか。
話し込んで遅くなったからって夕食まで誘ってくれたし。
この世界がゲームそのままなばかりじゃないってのは気づいてたけど、キャラの性格が違うなんて事まであるんだな。
そりゃ今のユーリスもゲームでの人間性とだいぶ違うけど、基本的なボンボン気質は変わらない。でも殿下はそもそも気質から違う感じがする。
結局夕飯まで一緒に食べて帰って来たら、主役になるはずだったユーリスが俺に出番を横取りされて完全に拗ねてる、というのが今の状況だ。
流石に今回はつい育成トークに夢中になってわきまえなかった俺が全面的に悪いと思う。
「ユーリス様、出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした。」
「何で?僕はルコが研究科の特待生として相応しいってことが殿下に伝わって良かったと思ってるぞ。」
ソファに足を組んで座り、目を合わせずにユーリスが言う。
嘘つけ。じゃあ何でそんなにぶすくれてんですかね。
「ただ、殿下と話してる時のルコはちょっと態度が優し過ぎだと思う。僕にはいつも厳しいのに。」
ブツクサ言ってるけど、言いがかりが無茶苦茶過ぎる。初対面の自国の王子に厳しい庶民って何だよ。不敬罪で斬首されろってか。
でも、自分の株を上げたいのを我慢して俺が特例入学でも浮かないように配慮してくれたのは分かった。
その気持ちは少し、いや正直かなり嬉しい。
「どうしたらご機嫌を直して頂けますか?私にできる事があれば仰ってください。」
ユーリスの足元に跪いて見上げる。そっぽを向いていた瞳がチラリとこちらを見下ろした。
「……学園にいる間も僕の世話するって約束して。」
「無論です。」
「ノスの育成もこれからずっと一緒にしてくれなきゃ駄目だ。」
「分かりました。それだけですか?もっと難しい事でもよろしいですよ。」
この際、変な性癖全開のプレイとかでも機嫌が直るなら受け入れよう。
「……こ、こ、」
「こ?」
ノスニキはそんなユーリスを横目で見て面倒はごめんだとばかりに部屋の隅でうたた寝を始めた。
原因は分かってる。
殿下と会ったからだ。
正確には、彼と俺が守護獣の育成について話が弾み過ぎてしまったからというか。
そりゃね、俺だって最初はノスニキの評判を聞いた殿下がユーリスに目を付けたんだと思ったよ。
元々クリスタス公爵家は王家と親密な貴族だし、ユーリスの兄ちゃんは殿下に気にいられてたって聞いてる。
ただ、ユーリスと殿下はあんまり親交が無くて、というか今までユーリスがあんまり歳の近い王族や貴族の子供と関わりたがらなかったというか。
まあ、一緒にいればどうしても守護獣比べになるし、そうするとその頃のノスニキと順調に成長してる他の子の守護獣の差を見せつけられてプライドが傷つくだろうから気持ちわからないでもない。
だからこそ、殿下に呼ばれたユーリスが、どう普通に装ってても内心この謁見にどれほど期待してたかに俺がちゃんと思い至ればよかった。
殿下は最初の方こそユーリスにノスニキの今の能力や習得技なんかを聞いていたけど、次第にそこに至る育成方法を掘り下げてくるようになった。
もちろんユーリスだって一通りの育成については答えられるけど、何故そう育てたかと聞かれれば俺がそう教えたからだ。
そんな部分を俺がポツポツ代わりに答えていたら、いつのまにか殿下と育成トークがメチャクチャ盛り上がってしまった。
だって、なんか、殿下と話してると前世でこのゲームの育成パート専用攻略サイトで他のプレーヤーと交流してるような気分になったんだもん。
俺が覚えてるゲームのアルネスターの印象は超偉そうな俺様キャラって感じだったけど、今日会った殿下の印象はちょっと違くて、もっと親しみやすさがあるというか。
話し込んで遅くなったからって夕食まで誘ってくれたし。
この世界がゲームそのままなばかりじゃないってのは気づいてたけど、キャラの性格が違うなんて事まであるんだな。
そりゃ今のユーリスもゲームでの人間性とだいぶ違うけど、基本的なボンボン気質は変わらない。でも殿下はそもそも気質から違う感じがする。
結局夕飯まで一緒に食べて帰って来たら、主役になるはずだったユーリスが俺に出番を横取りされて完全に拗ねてる、というのが今の状況だ。
流石に今回はつい育成トークに夢中になってわきまえなかった俺が全面的に悪いと思う。
「ユーリス様、出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした。」
「何で?僕はルコが研究科の特待生として相応しいってことが殿下に伝わって良かったと思ってるぞ。」
ソファに足を組んで座り、目を合わせずにユーリスが言う。
嘘つけ。じゃあ何でそんなにぶすくれてんですかね。
「ただ、殿下と話してる時のルコはちょっと態度が優し過ぎだと思う。僕にはいつも厳しいのに。」
ブツクサ言ってるけど、言いがかりが無茶苦茶過ぎる。初対面の自国の王子に厳しい庶民って何だよ。不敬罪で斬首されろってか。
でも、自分の株を上げたいのを我慢して俺が特例入学でも浮かないように配慮してくれたのは分かった。
その気持ちは少し、いや正直かなり嬉しい。
「どうしたらご機嫌を直して頂けますか?私にできる事があれば仰ってください。」
ユーリスの足元に跪いて見上げる。そっぽを向いていた瞳がチラリとこちらを見下ろした。
「……学園にいる間も僕の世話するって約束して。」
「無論です。」
「ノスの育成もこれからずっと一緒にしてくれなきゃ駄目だ。」
「分かりました。それだけですか?もっと難しい事でもよろしいですよ。」
この際、変な性癖全開のプレイとかでも機嫌が直るなら受け入れよう。
「……こ、こ、」
「こ?」
16
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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