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第2章 入学前編
20 旅立ち
しおりを挟むき い て ま せ ん が 。
しつこく服を脱がそうとするユーリスを断固たる態度で引き剥がした。朝食もお預けにしてベッドに腰掛け、膝を付き合わせて問いただす。
目の前には、ユーリスが持ち出してきた俺宛の入学許可証。所属は守護獣研究科で、身分は特待研究生とある。
「ありえません。まさか文書を偽造したのですか?」
「違う。本物だ。」
「そんなわけがないでしょう。私には守護獣がいないので入学資格がありません。」
「だから、実績から判定した特待生扱いだよ。父上が推薦したんだ。ずっと昔に同じように守護獣無しでも実績で入学した例があったからそれを持ち出してさ。」
「実績ってなんの事ですか?」
「もう最終形態だったはずのアッシュタールが、ルコの育成指導でユニコーンになっただろ。」
「はあ。」
「それに幼体だったノスが成体でも覚えた例がない物理無効の技を覚えたし、あげく制限付きとはいえ幼体から一足飛びにフェンリルに変化したしね。」
「あの、それは私の功績ではなく単に旦那様やユーリス様の心の変化に共鳴しただけだと私は思います。私の育成はそれを多少サポートしただけかと。同じことはこの間視察にいらした学園の教授にもお伝えしました。」
先日、幼体からフェンリルになったノスニキの話を聞いた学者たちが視察に来た。その時に進化の場を見ていたとして色々質問されたので、俺が感じたことを話したのだ。
「うん。あれ、ルコの入学判定だったみたい。」
「はぁ?言ってくださいよ……」
「父上と僕も後から聞かされたんだ。先に言ったら過剰に功績を取り繕う恐れがあるからって。」
そもそも推薦したことを言っといてくれ。
「で、ルコがその時に守護獣の進化には主人が獣に発する見えない波が影響してるんじゃないかって言ってたよね?」
確かに言った。この世界ではまだ認知されてないみたいだけど、X線とかマイクロ波とかは存在してるだろうし。主人が守護獣にしか作用しない類の電磁波を発していて、それを浴びるから獣が変化するんじゃないかって思ったんだ。ただそれ以上は俺の前世知識も限界。
「その辺の話を聞いてルコに興味を持ったみたいだな。まあ、もし守護獣が見えない波で育てられるなら、ドラゴンの一個師団育てて周辺国に攻め込んだりできるから国が興味持つのも分かる。」
あまりに軽く物騒な話してるんだけど……。
「そんな恐ろしいことに加担したくありません。」
「大丈夫だって。そんな突拍子も無い計画、ルコの在学中に実用化出来るわけないだろ。僕はルコと一緒に過ごせればいいから。学園には世話役が沢山いるみたいだけど、ルコの方がイロイロと気楽に頼めるから許可が降りてよかった。」
楽しそうに笑うユーリス。
イロイロに含みがありすぎる。
このボンボン、自分が快適に暮らしたいがために学園の規則を捻じ曲げやがった。
しかも国のヤバい研究に俺を巻き込んで。
このタイミングで俺が断ったら、確実に公爵の顔に泥を塗ることになる。もっと早くに知っていたらまだ断れたかもしれないのに……。
……こいつ、だから黙ってやがったな。
「あーお腹すいた。先に食事にしてよ。ルコのお着替えショーは後でいいからさ。」
ユーリスが立ち上がってすたすたと食事用のテーブルに向かう。
不本意ながら、逆らえる立場でないのでのそのそと立ち上がったところで食事の乗ったワゴンが届けられた。
パンを皿に盛っていると背後に気配がしてぎゅっと抱きしめられる。
体をぐっと密着させてきて気が付いた。
……あれ、何か俺より身長高くなってないか?
ついこないだまで一緒くらいだったはずだけど。
「ずっと一緒だよルコ。」
耳元で囁かれてかぷっと噛まれた。
あーもう勘弁してくれ。
別に嬉しくないし、
トキメいてないし、
感じてない。
(第2章 おわり)
27
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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