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第2章 入学前編
6 薬草採集
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午前中は水を汲んだり火を起こしたり家のことをしているうちに過ぎ、持ちこんだ食材で簡単な昼食を摂った。
朝からずっとケージで寝ていたノスニキが今度は窓際で昼寝をしている。
「午後は私も少し落ち着きますので一緒に森に参りましょうか。」
「うん。」
食後にまたソファに寝そべったユーリスが返事をした。
午前中俺が家のことをしている最中もユーリスはそこから何の気なしにこちらを眺めているだけだった。
流石にヒマなんじゃないだろうか。
この辺りは森があるだけで他に何も無い。
やっぱり普段通り随行を連れて狩りやボードゲームで遊べる体制で来たほうがよかったと思う。
「退屈させて申し訳ありませんがあと少しお待ち下さい。」
「別に退屈じゃない。」
「ならよいのですが。」
びっくりするほどの聞き分けに違和感を覚える。
改めてどうしてユーリスがこんな所に来たがったのか考えると、やっぱりノスニキのためじゃないかと思えた。
ユーリスが紫紺の森に来た目的は自生する植物の採取くらいしか無いだろう。
この世界の森に広く自生するヤマユリの花びらは、ゲームでもありふれた経験値素材でアイテムショップで買えたけど、採集クエストに出ると低確率で通常の50倍の経験値が手に入る青ヤマユリが入手できた。
青ヤマユリが守護獣の育成に特に有効なのはこの世界でも周知の事実だから、育成素材のために森に入るというのは守護獣持ちならよくある話だ。
ゲームと違うのは、青ヤマユリは採取してしばらく経つと普通のヤマユリに劣化するので、見つけたらすぐに守護獣に食べさせる必要があるってこと。
何だかんだ、ノスニキが進化しないのを気にしてレアな育成アイテムを探しに来たって所だろう。
それなら素直にそうと認めて人海戦術で捜索した方が良いのに、素直じゃ無い。
手早く食卓を片付けて夕飯の下準備を済ませた後、探索に適した身支度をして出発した。
ユーリスと森でしばらくヤマユリや成長促進効果のあるハーブを集めていると雨が降って来た。
「すぐやむかな?」
そうユーリスが言った後に否定するように遠くで閃光が明滅し、追ってピシャッゴロゴロと低い雷鳴が響く。
「いえ、これから多分強くなります。今日は念のため戻りましょう。」
思った通り雨脚はいよいよ強くなって、ぬかるみに足を取られながら別荘に戻る。
帰りつく頃には体はぐっしょり濡れて夏なのに肌寒く感じた。
ドアをくぐるとノスニキがトコトコやって来る。俺たちの体から水しぶきが飛んでいるのをみて顔をしかめて足を止めた。
「ノスガルデルタ様、少々お待ちください。私たちの体を乾かさないとあなたまで濡れます。」
「あー靴のなかぐちゃぐちゃで気持ち悪い。」
煩わしげに言って玄関に置いたスツールに座ったユーリスの足元にひざまづいき靴紐を解いた。
ブラシで払っても無駄そうなので、自分も泥まみれの靴を脱いで裸足になる。
雫を垂らしながらランドリー室に向かい、いくつかタオルを引っ掴むとまた玄関に戻った。
ユーリスは不快感が我慢できなかったのか勝手に上着とシャツを脱いで床に放り落としている。
小柄では無いけど細身の体は、数年前から始めた武術の稽古もあってきめの細かい肌の下からうっすら綺麗な筋肉が浮き出ていた。
着替えの時に見慣れているはずなのに、いつもと環境が違うせいか何故か直視できない。
少し目をそらしながら近寄り、気まずいものを隠すようにタオルで体を巻いた。
朝からずっとケージで寝ていたノスニキが今度は窓際で昼寝をしている。
「午後は私も少し落ち着きますので一緒に森に参りましょうか。」
「うん。」
食後にまたソファに寝そべったユーリスが返事をした。
午前中俺が家のことをしている最中もユーリスはそこから何の気なしにこちらを眺めているだけだった。
流石にヒマなんじゃないだろうか。
この辺りは森があるだけで他に何も無い。
やっぱり普段通り随行を連れて狩りやボードゲームで遊べる体制で来たほうがよかったと思う。
「退屈させて申し訳ありませんがあと少しお待ち下さい。」
「別に退屈じゃない。」
「ならよいのですが。」
びっくりするほどの聞き分けに違和感を覚える。
改めてどうしてユーリスがこんな所に来たがったのか考えると、やっぱりノスニキのためじゃないかと思えた。
ユーリスが紫紺の森に来た目的は自生する植物の採取くらいしか無いだろう。
この世界の森に広く自生するヤマユリの花びらは、ゲームでもありふれた経験値素材でアイテムショップで買えたけど、採集クエストに出ると低確率で通常の50倍の経験値が手に入る青ヤマユリが入手できた。
青ヤマユリが守護獣の育成に特に有効なのはこの世界でも周知の事実だから、育成素材のために森に入るというのは守護獣持ちならよくある話だ。
ゲームと違うのは、青ヤマユリは採取してしばらく経つと普通のヤマユリに劣化するので、見つけたらすぐに守護獣に食べさせる必要があるってこと。
何だかんだ、ノスニキが進化しないのを気にしてレアな育成アイテムを探しに来たって所だろう。
それなら素直にそうと認めて人海戦術で捜索した方が良いのに、素直じゃ無い。
手早く食卓を片付けて夕飯の下準備を済ませた後、探索に適した身支度をして出発した。
ユーリスと森でしばらくヤマユリや成長促進効果のあるハーブを集めていると雨が降って来た。
「すぐやむかな?」
そうユーリスが言った後に否定するように遠くで閃光が明滅し、追ってピシャッゴロゴロと低い雷鳴が響く。
「いえ、これから多分強くなります。今日は念のため戻りましょう。」
思った通り雨脚はいよいよ強くなって、ぬかるみに足を取られながら別荘に戻る。
帰りつく頃には体はぐっしょり濡れて夏なのに肌寒く感じた。
ドアをくぐるとノスニキがトコトコやって来る。俺たちの体から水しぶきが飛んでいるのをみて顔をしかめて足を止めた。
「ノスガルデルタ様、少々お待ちください。私たちの体を乾かさないとあなたまで濡れます。」
「あー靴のなかぐちゃぐちゃで気持ち悪い。」
煩わしげに言って玄関に置いたスツールに座ったユーリスの足元にひざまづいき靴紐を解いた。
ブラシで払っても無駄そうなので、自分も泥まみれの靴を脱いで裸足になる。
雫を垂らしながらランドリー室に向かい、いくつかタオルを引っ掴むとまた玄関に戻った。
ユーリスは不快感が我慢できなかったのか勝手に上着とシャツを脱いで床に放り落としている。
小柄では無いけど細身の体は、数年前から始めた武術の稽古もあってきめの細かい肌の下からうっすら綺麗な筋肉が浮き出ていた。
着替えの時に見慣れているはずなのに、いつもと環境が違うせいか何故か直視できない。
少し目をそらしながら近寄り、気まずいものを隠すようにタオルで体を巻いた。
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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