【R18/完結】転生したらモブ執事だったので、悪役令息を立派なライバルに育成します!

ナイトウ

文字の大きさ
上 下
13 / 65
第2章 入学前編

6 薬草採集

しおりを挟む
午前中は水を汲んだり火を起こしたり家のことをしているうちに過ぎ、持ちこんだ食材で簡単な昼食を摂った。

朝からずっとケージで寝ていたノスニキが今度は窓際で昼寝をしている。

「午後は私も少し落ち着きますので一緒に森に参りましょうか。」

「うん。」

食後にまたソファに寝そべったユーリスが返事をした。
午前中俺が家のことをしている最中もユーリスはそこから何の気なしにこちらを眺めているだけだった。

流石にヒマなんじゃないだろうか。
この辺りは森があるだけで他に何も無い。
やっぱり普段通り随行を連れて狩りやボードゲームで遊べる体制で来たほうがよかったと思う。

「退屈させて申し訳ありませんがあと少しお待ち下さい。」

「別に退屈じゃない。」

「ならよいのですが。」

びっくりするほどの聞き分けに違和感を覚える。
改めてどうしてユーリスがこんな所に来たがったのか考えると、やっぱりノスニキのためじゃないかと思えた。

ユーリスが紫紺の森に来た目的は自生する植物の採取くらいしか無いだろう。
この世界の森に広く自生するヤマユリの花びらは、ゲームでもありふれた経験値素材でアイテムショップで買えたけど、採集クエストに出ると低確率で通常の50倍の経験値が手に入る青ヤマユリが入手できた。

青ヤマユリが守護獣の育成に特に有効なのはこの世界でも周知の事実だから、育成素材のために森に入るというのは守護獣持ちならよくある話だ。
ゲームと違うのは、青ヤマユリは採取してしばらく経つと普通のヤマユリに劣化するので、見つけたらすぐに守護獣に食べさせる必要があるってこと。

何だかんだ、ノスニキが進化しないのを気にしてレアな育成アイテムを探しに来たって所だろう。
それなら素直にそうと認めて人海戦術で捜索した方が良いのに、素直じゃ無い。

手早く食卓を片付けて夕飯の下準備を済ませた後、探索に適した身支度をして出発した。

ユーリスと森でしばらくヤマユリや成長促進効果のあるハーブを集めていると雨が降って来た。

「すぐやむかな?」

そうユーリスが言った後に否定するように遠くで閃光が明滅し、追ってピシャッゴロゴロと低い雷鳴が響く。

「いえ、これから多分強くなります。今日は念のため戻りましょう。」

思った通り雨脚はいよいよ強くなって、ぬかるみに足を取られながら別荘に戻る。
帰りつく頃には体はぐっしょり濡れて夏なのに肌寒く感じた。

ドアをくぐるとノスニキがトコトコやって来る。俺たちの体から水しぶきが飛んでいるのをみて顔をしかめて足を止めた。

「ノスガルデルタ様、少々お待ちください。私たちの体を乾かさないとあなたまで濡れます。」

「あー靴のなかぐちゃぐちゃで気持ち悪い。」

煩わしげに言って玄関に置いたスツールに座ったユーリスの足元にひざまづいき靴紐を解いた。
ブラシで払っても無駄そうなので、自分も泥まみれの靴を脱いで裸足になる。

雫を垂らしながらランドリー室に向かい、いくつかタオルを引っ掴むとまた玄関に戻った。
ユーリスは不快感が我慢できなかったのか勝手に上着とシャツを脱いで床に放り落としている。
小柄では無いけど細身の体は、数年前から始めた武術の稽古もあってきめの細かい肌の下からうっすら綺麗な筋肉が浮き出ていた。

着替えの時に見慣れているはずなのに、いつもと環境が違うせいか何故か直視できない。
少し目をそらしながら近寄り、気まずいものを隠すようにタオルで体を巻いた。
しおりを挟む
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
感想 8

あなたにおすすめの小説

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

処理中です...