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第1章 幼少期編
2 守護獣
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「ルコ、上出来だったよ。旦那様があれだけ優しいのは珍しい。あんたやっぱり賢い子だね。」
ミラ侍従長が廊下で告げてくる。
あれで?
「よかったです。失礼を働いてしまいましたので、忍びなく思っておりました。」
腑に落ちない気持ちを抑えて猫被りで返す。
「初めはみんな旦那様を怖がってああなるもんさ。中にはあの場でクビになった新人もいたよ。」
試用もせずに解雇とか酷いな。
「あんまり居心地は良くないだろうがあんた金がいるんだろ。しっかり働いとくれ。しょっちゅう使用人が逃げ出すからいつも人手不足なのさ。」
「はい。ミラ侍従長、未熟者ですがよろしくお願いいたします。」
ああ、めっちゃブラックそう……と思っても背に腹は代えられない。
他じゃ寝ずに働いたって稼げないくらいの給料だ。
父さんが死んでから必死に農場を切り盛りする母さんや兄さんたちに、非力な俺が唯一出来ること。
俺はなぜか今ゲームの世界にいるらしいが、この12年は俺にとってちゃんと現実だし、前世の記憶があったって今の家族は家族だと思える。
幸い俺は平民なのに守護獣と主従契約してしまうような主人公属性もないし、モブとしてゲームで描かれないところで普通に生きることになるだろう。
つまり今までと何も変わらない。
ただ、せっかくなんでひとつだけ。
「そういえばミラ侍従長、お尋ねしたいのですが……」
「何だい?」
「ユーリスフレッド様の守護獣に、我々使用人がお目にかかる機会はあるんでしょうか。」
そう、守護獣だ。
例のゲームの育成パートは、ファンすら「ジャンル間違えたの?」と困惑するくらい恋愛ゲームのサブ要素にしては出来が良く、獣のデザインもメチャクチャ良い。それだけにパート内で出会う様々な守護獣に当然愛着が湧く。
ユーリスの守護獣、狼型のノスガルデルタはダークグレーの毛並みがミステリアスな少し影のある獣だ。クズなユーリスに呆れながらも付き合ってやる案外優しいキャラで、育成パート専用攻略サイトではみんな親しみを込めてノスニキと呼んでいた。
実力も十分で、その最終形態は育成パートではラスボス手前の中ボス的な存在だ。
ゲーム内の態度からユーリスがまともにノスニキを育成したとは思えないので、それであの強さなら元々のポテンシャルは相当だろうというのが育成ガチ勢の見解だった。
そしてみんな、ノスニキを育てられる育成に特化したスピンオフゲーの開発を切望していた。
そのノスニキとひとつ屋根の下にいるとなれば見たくなるのもしょうがない。
「何であんた、坊っちゃまが守護獣を持ってると知ってんだい?」
え、まずいこと言った?守護獣持ってることって隠すような事じゃないよな……?
「そう人伝に聞いたのですが、公になっていない事であればもう口にいたしません。」
「そうだね。坊っちゃまの守護獣のことは触れない方がいい。」
「かしこまりました。」
何か事情があるんだろうか。
ゲームではユーリスはノスニキにいばり散らして態度は悪かったけど、存在を隠してる感じはしなかったぞ。
ミラ侍従長が廊下で告げてくる。
あれで?
「よかったです。失礼を働いてしまいましたので、忍びなく思っておりました。」
腑に落ちない気持ちを抑えて猫被りで返す。
「初めはみんな旦那様を怖がってああなるもんさ。中にはあの場でクビになった新人もいたよ。」
試用もせずに解雇とか酷いな。
「あんまり居心地は良くないだろうがあんた金がいるんだろ。しっかり働いとくれ。しょっちゅう使用人が逃げ出すからいつも人手不足なのさ。」
「はい。ミラ侍従長、未熟者ですがよろしくお願いいたします。」
ああ、めっちゃブラックそう……と思っても背に腹は代えられない。
他じゃ寝ずに働いたって稼げないくらいの給料だ。
父さんが死んでから必死に農場を切り盛りする母さんや兄さんたちに、非力な俺が唯一出来ること。
俺はなぜか今ゲームの世界にいるらしいが、この12年は俺にとってちゃんと現実だし、前世の記憶があったって今の家族は家族だと思える。
幸い俺は平民なのに守護獣と主従契約してしまうような主人公属性もないし、モブとしてゲームで描かれないところで普通に生きることになるだろう。
つまり今までと何も変わらない。
ただ、せっかくなんでひとつだけ。
「そういえばミラ侍従長、お尋ねしたいのですが……」
「何だい?」
「ユーリスフレッド様の守護獣に、我々使用人がお目にかかる機会はあるんでしょうか。」
そう、守護獣だ。
例のゲームの育成パートは、ファンすら「ジャンル間違えたの?」と困惑するくらい恋愛ゲームのサブ要素にしては出来が良く、獣のデザインもメチャクチャ良い。それだけにパート内で出会う様々な守護獣に当然愛着が湧く。
ユーリスの守護獣、狼型のノスガルデルタはダークグレーの毛並みがミステリアスな少し影のある獣だ。クズなユーリスに呆れながらも付き合ってやる案外優しいキャラで、育成パート専用攻略サイトではみんな親しみを込めてノスニキと呼んでいた。
実力も十分で、その最終形態は育成パートではラスボス手前の中ボス的な存在だ。
ゲーム内の態度からユーリスがまともにノスニキを育成したとは思えないので、それであの強さなら元々のポテンシャルは相当だろうというのが育成ガチ勢の見解だった。
そしてみんな、ノスニキを育てられる育成に特化したスピンオフゲーの開発を切望していた。
そのノスニキとひとつ屋根の下にいるとなれば見たくなるのもしょうがない。
「何であんた、坊っちゃまが守護獣を持ってると知ってんだい?」
え、まずいこと言った?守護獣持ってることって隠すような事じゃないよな……?
「そう人伝に聞いたのですが、公になっていない事であればもう口にいたしません。」
「そうだね。坊っちゃまの守護獣のことは触れない方がいい。」
「かしこまりました。」
何か事情があるんだろうか。
ゲームではユーリスはノスニキにいばり散らして態度は悪かったけど、存在を隠してる感じはしなかったぞ。
32
↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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