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第3章 学園編
30 10人抜き
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10人抜きって……ゲームのクライマックスで主人公が王立軍のメンバー相手に挑むやつだよな?
それはいくつかの訓練大会で優勝した優秀な生徒に与えられる伝統的な挑戦権で、勝ち進むほどに卒業後王立軍に所属した時の階級が上がることになってる。
まず挑戦権が貰えるほど学園内で実績を残すのが十分すごいことだ。
そして強力な守護獣を従える精鋭が集まった王立軍内の、更に選ばれた十傑と呼ばれる騎士たちが対戦相手になる。
2,3人でも倒せば十分というのがこの世界での感覚だ。
ゲーム内でもこの10人抜きイベントはプレーヤーの間で謎ガチ要素と言われてて、とにかく全勝が難しい。
そのくせキャラによっては10人抜きを達成しないと見れないイベントなんかがある。
そのせいでゲームは乙女ゲーくらいしかしないという大多数の女性層を殺しにかかってると言われていた。
それを、入学して1ヶ月足らずのユーリスが挑んでるってどういうことだ。
まだ訓練大会もずいぶん先だよな?
同じ疑問を聞いていたほぼ全員が思っていたようで怪訝そうにしている。
「へーっ!俺10人抜き見るの初めて。去年アルネスター会長がやった時風邪でいなかったんだよね。まだやってる?見に行こ行こ!」
ミレーユだけが楽しそうに反応した。
本当なら俺だってめちゃくちゃ見たい。
「と、とにかく、参ります。場所は闘技場ですか?」
ケニーが頷いたので、ゲームではバトルフィールドとして設定されている学園内に設置された闘技場に向かった。
移動中ケニーに聞いてみても、彼も生徒の間で騒ぎになってから気づいたので何故10人抜きの試合が始まったかはわからないらしい。
確かに今日は特別講師として十傑が来ることになっていた。
国の威信を将来の幹部候補に見せる意図もあるのか十傑全員が揃い踏みになる目玉講義だ。
俺も出たくて教授に頼んだけど、大事な行事で俺が顔を出して生徒が騒いだら恥だと結局待機を命じられた。
多分この試合はあらかじめ決まってたことじゃないだろう。
ユーリスがゲリラ的にけしかけたんだと思う。
でなきゃもっと前に話題になってたはずだ。
でも、何故そんな事をしたんだ?
考えても結局わからないうちに、学内の施設とは思えない大きな闘技場に着く。
いかにもゲームらしいコロッセオのような大げさな石造りの建物に入ると二階部分にある観客席には生徒が鈴なりになっていた。
人の壁をかき分けて一階中央のバトルエリアに視界が到達する前に、轟音が響いて歓声が上がる。
慌ててひしめく体の間から階下を覗くと、土煙の中で大きな白虎が倒れていた。
「バトルエンド!勝者、ユーリスフレッド&ノスガルデルタ!!」
遠い昔ゲームで聞いた審判の声が聞こえる。
それを搔き消す野太い歓声と怒号で耳が割れそうだ。
しかもバトルBGMまで聞こえてきて、驚いて見渡すと観客席の一角で数人の生徒がトランペットやサックスを奏でていた。
足元では彼らの守護獣だろうチンパンジーがシンバルを鳴らし、オナガザルが尻尾で太鼓を叩いている。
何だこのノリ。ここは甲子園球場か。
「きたーー!クリスタス怒涛奮闘まさかまさかの7人抜きだーーー!!!」
また別の聞き覚えのある声が会場いっぱいに響く。
実況役のキャラクターボイスだった。
今度はその音の元を探せば、白い髪のワンサイドに白黒まだらのメッシュを垂らした少年が、バトルエリア近くの実況席で興奮した様子で試合の様子を見ていた。
肩に髪の色と同じ白い体の鳥が留まっていて、嘴からは彼のメッシュとそっくりの白黒の紐のようなものが垂れている。
審判の声が響く時は鳥の口がパクパク動いていた。
マイクも何もないのに彼や審判の声が広い闘技場内に響き渡るのはきっとあの守護獣の能力なのだろう。
「アルネスター殿下によって認められたユーリスフレッド・アルディ・クリスタスの仕掛ける十傑に対する奇襲戦!身の程しらず恥知らずとも言える挑戦と思いきや!流石は稀代の才能と謳われたクリスタス公爵子息!あっという間に残すはあと3人!あと3人となりました!ユーリスフレッド・クリスタス!学園の栄誉を背負って前代未聞の偉業を打ち立てるかぁぁ!」
会場に目いっぱい溢れる実況とそれに煽られる観客。
またバトルエリアに目を向ければ、白いペルシャ猫に変化した白虎を騎士が抱き上げていた。
そのままエリア外にいる白衣を着た青年に渡すと、肩に留まった色鮮やかな鳥が回復をかける。
それはいくつかの訓練大会で優勝した優秀な生徒に与えられる伝統的な挑戦権で、勝ち進むほどに卒業後王立軍に所属した時の階級が上がることになってる。
まず挑戦権が貰えるほど学園内で実績を残すのが十分すごいことだ。
そして強力な守護獣を従える精鋭が集まった王立軍内の、更に選ばれた十傑と呼ばれる騎士たちが対戦相手になる。
2,3人でも倒せば十分というのがこの世界での感覚だ。
ゲーム内でもこの10人抜きイベントはプレーヤーの間で謎ガチ要素と言われてて、とにかく全勝が難しい。
そのくせキャラによっては10人抜きを達成しないと見れないイベントなんかがある。
そのせいでゲームは乙女ゲーくらいしかしないという大多数の女性層を殺しにかかってると言われていた。
それを、入学して1ヶ月足らずのユーリスが挑んでるってどういうことだ。
まだ訓練大会もずいぶん先だよな?
同じ疑問を聞いていたほぼ全員が思っていたようで怪訝そうにしている。
「へーっ!俺10人抜き見るの初めて。去年アルネスター会長がやった時風邪でいなかったんだよね。まだやってる?見に行こ行こ!」
ミレーユだけが楽しそうに反応した。
本当なら俺だってめちゃくちゃ見たい。
「と、とにかく、参ります。場所は闘技場ですか?」
ケニーが頷いたので、ゲームではバトルフィールドとして設定されている学園内に設置された闘技場に向かった。
移動中ケニーに聞いてみても、彼も生徒の間で騒ぎになってから気づいたので何故10人抜きの試合が始まったかはわからないらしい。
確かに今日は特別講師として十傑が来ることになっていた。
国の威信を将来の幹部候補に見せる意図もあるのか十傑全員が揃い踏みになる目玉講義だ。
俺も出たくて教授に頼んだけど、大事な行事で俺が顔を出して生徒が騒いだら恥だと結局待機を命じられた。
多分この試合はあらかじめ決まってたことじゃないだろう。
ユーリスがゲリラ的にけしかけたんだと思う。
でなきゃもっと前に話題になってたはずだ。
でも、何故そんな事をしたんだ?
考えても結局わからないうちに、学内の施設とは思えない大きな闘技場に着く。
いかにもゲームらしいコロッセオのような大げさな石造りの建物に入ると二階部分にある観客席には生徒が鈴なりになっていた。
人の壁をかき分けて一階中央のバトルエリアに視界が到達する前に、轟音が響いて歓声が上がる。
慌ててひしめく体の間から階下を覗くと、土煙の中で大きな白虎が倒れていた。
「バトルエンド!勝者、ユーリスフレッド&ノスガルデルタ!!」
遠い昔ゲームで聞いた審判の声が聞こえる。
それを搔き消す野太い歓声と怒号で耳が割れそうだ。
しかもバトルBGMまで聞こえてきて、驚いて見渡すと観客席の一角で数人の生徒がトランペットやサックスを奏でていた。
足元では彼らの守護獣だろうチンパンジーがシンバルを鳴らし、オナガザルが尻尾で太鼓を叩いている。
何だこのノリ。ここは甲子園球場か。
「きたーー!クリスタス怒涛奮闘まさかまさかの7人抜きだーーー!!!」
また別の聞き覚えのある声が会場いっぱいに響く。
実況役のキャラクターボイスだった。
今度はその音の元を探せば、白い髪のワンサイドに白黒まだらのメッシュを垂らした少年が、バトルエリア近くの実況席で興奮した様子で試合の様子を見ていた。
肩に髪の色と同じ白い体の鳥が留まっていて、嘴からは彼のメッシュとそっくりの白黒の紐のようなものが垂れている。
審判の声が響く時は鳥の口がパクパク動いていた。
マイクも何もないのに彼や審判の声が広い闘技場内に響き渡るのはきっとあの守護獣の能力なのだろう。
「アルネスター殿下によって認められたユーリスフレッド・アルディ・クリスタスの仕掛ける十傑に対する奇襲戦!身の程しらず恥知らずとも言える挑戦と思いきや!流石は稀代の才能と謳われたクリスタス公爵子息!あっという間に残すはあと3人!あと3人となりました!ユーリスフレッド・クリスタス!学園の栄誉を背負って前代未聞の偉業を打ち立てるかぁぁ!」
会場に目いっぱい溢れる実況とそれに煽られる観客。
またバトルエリアに目を向ければ、白いペルシャ猫に変化した白虎を騎士が抱き上げていた。
そのままエリア外にいる白衣を着た青年に渡すと、肩に留まった色鮮やかな鳥が回復をかける。
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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