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5, ご主人様と下僕
しおりを挟む何だか体がふわふわぽかぽかしているのだ。
どうしてだろう。
いつも過ごしている穴蔵の床は、もっと硬くて冷たいのだ。
「ふわぁ~、きもちぃのだぁ~……」
堪らず自分を包むモコモコに擦り付けるように体をうにうにさせていると、バシリと音がして頭に衝撃が走った。
「ぴゃあ!!」
思わず頭を抱えて叫ぶ。
「起きろ。寝汚いやつだな。」
ジンジンする頭を堪えて声のした方を見れば、見覚えのある男が右手を構えてこちらを見下ろしていた。
途端に頭がハッキリしてきて、これまでの事を思い出す。
お菓子を貰いに見つけたお家に行って、こいつが出てきて、美味しいものを食べて、それで、凄く気持ちいい事をされたのだ!!
全く、俺様こんな事は初めてで驚いたぞ。
穴蔵以外で寝たのも久しぶりだ。
……寝た?
「その空っぽな頭、少しはハッキリしたか?」
「いいいい今は人間の暦で何日なのだ!?」
慌てて男に聞いてみる。
「11月1日だが?」
「ああああ!しまったのだ!帰り損ねたのだぁ!!」
「おい、お前……」
「帰り道っ!帰り道は!?」
ぐるぐると辺りを見回して俺様が来た暗闇に通じる道の気配を探ってみるけど、さっぱり見えない。
「あのな……」
「やっぱり昨日のうちに門が閉っちゃってるのだぁ……」
「おい。」
「ううっ、どうしよう……。このままいたら、魂が穢れて悪い悪魔になっちゃうのだ!」
「おい。」
「そしたら、そしたら……いっぱい人間に酷いことして、退魔師に痛いことされちゃうのだぁ~!!」
「おい!」
突然視界が揺れて体が倒れた。
ボスンと座っていた柔らかい寝床に沈み、横にいた男が今度は俺様の上にいる。
男は俺様の両腕を掴んで寝床に押しつけ、上にのしかかっていた。
「またぶち犯されたいか?」
男に耳元で囁かれて思わず体が跳ねる。
反射的に顔を横に振った。
「じゃあ、私の話を黙って聞け。そのスカスカなおつむにも多少入れとかないと私が面倒なんだよ。」
今度は縦にぶんぶん頭を振ると、ようやく体が離れていった。
少し離れた所の椅子に座ったので、俺様も起き上がってそちらを向く。
手足も動くようになっていた。
「まず、お前名前は?」
「なまえ?」
「あればでいい。私の名はユジンだ。」
言われて、遠い昔に呼ばれていた名前をかろうじて答える。
「……リュス。」
「……リュス、お前は当面帰れない。」
「じゃ、じゃあ、やっぱり俺様はっ」
「大丈夫だ。今のお前は私の従僕だから人間の世界にいても魔物や怨霊にならない。条件を満たせばな。」
「条件?」
「私の唾液や精子を定期的に取り込むこと。昨日散々くれてやっただろ?だから今は大丈夫だ。」
「だえき?せーし?」
「あーもー物知らずだな悪魔は。お口の汁と、おちんちんの汁だよ。わかれバカ。」
呆れたように言われてムッとしたが、ようやく理解できた。
ユジンに昨日いっぱい飲まされたり、お尻に出されたやつだ。
「あ、あの気持ちいい事にそんな意味が……」
納得顔の俺様を見て、ユジンがため息を吐いた。
「……お前、本当馬鹿だな。契約しといてあれだが今後が不安だ。」
ん?待てよ
「何でなのだ?」
「何で?そりゃ、術に主人の一部が必要だからだよ。血や肉だと私が痛いだろうが。汗は出る出ないがコントロールし辛いし。」
「違くて、何で俺様はお前の従僕になってるのだ?」
「は?はぁ……馬鹿。」
ユジンが顔を顰めてこめかみを押さえた。
そんなに変な事聞いたか?
だって、俺様は頼んでないぞ。
家に入ったのもこいつに招かれたからだし、昨日のうちに帰れなかったのもこいつが変な事を始めたからで……
!!
「ああーー!お前!俺様をわざとお前の従僕にしたんだな!」
こいつは最初から俺様を従僕にするつもりだったのだ!そうに違いない!悪いやつめ!
「よかった……そこは理解出来て……」
俺様は怒っているのに、何故か向こうはすこし安心した顔をしている。
「酷いぞ!元に戻せ!」
俺様はボスボスとふかふかの寝床を叩いた。
「私の従僕としての役割を果たせたら戻してやる。そうだな。次にお前たちの世界と人間の世界が近づくのはヴァルプルギスの夜だったよな。それまででどうだ。」
「何でお前の言う事を聞かなきゃいけないのだ!!」
「あっそ。じゃあ、このまま人間の世界を彷徨って、穢れて、怨霊になれば?」
「うわぁ~ん!!嫌なのだぁ~~!!」
あまりの葛藤に寝床につっぷして足をバタバタさせる。
「半年私の言う事を聞くだけだぞ。悪魔のお前の寿命で考えれば一瞬だろ?」
言われて少し考える。
怨霊になりたくない。でも、こいつの言う事を聞くのも嫌だ。
「い、一応聞くけど、何……すればいいのだ?」
「ん?悪魔退治の手伝い。私、教会の退魔師なんだ。」
「そんな怖い事嫌なのだ~~~!!」
その後も散々ごねたけど、ユジンは一歩も譲らず俺様は仕方なく要求を飲んだ。
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