R18/短編/ツンな激つよつよ平民将軍、平凡官吏に絶賛デレデレ執着中!

ナイトウ

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我十五にして学に志す。
三十にして立つ。

なーんて偉い人の言葉を間に受けて生きてみたけど、凡人の私には無理な話だったみたい。

 31歳。特に遅くも早くもない年齢で科挙に合格し中央政府の役人になったその年、宮中で出会ったものに私の心はすっかり奪われてしまった。

『晃(こう)の国境は十日で百里を走る』なんてのは調子のいい宮廷詩人の美辞麗句だけど、実際今の晃国の勢いは凄まじい。
兵団は西へ東へ北へ南へ、どこすこ進軍して新しい地を平定していく。
それもこれも皇帝武焔(ぶえん)の実力故だ。

けど、広がり続ける領土の管理は実際のところ結構大変。
国は文官も武官も慢性的な人手不足で、最近は私みたいな代々役人の家系に限らず能力のある人間はじゃんじゃか中央に吸い上げられている。

武焔帝の凄い所は、配下に置いた異民族からの人材登用さえ惜しまない所だ。
その分反逆者や失敗、失態を犯した人材を切り捨てるのも早いけど。

そんなこんなで帝がこれまでに登用した異民族出身の武人の中で随一と噂されるのが飛駿(ひすん)族の袁耀爾晶(えん・よう・じせい)将軍といえる。
まさに一騎当千の言葉通りの男で、西方のジベト族との戦では袁耀将軍率いるたった50の騎兵が5万の軍団を率いる族長を討ち取り制圧してしまった。今や城下の茶屋の子どもすら知ってる英雄譚だ。

その時まだ下級指揮官だった彼は、一気にこの功績により正三品に昇位し10万師団のトップに任命され将軍になった。当時若干27歳、一年前の話だ。
そしてその凱旋のため宮中に騎馬で参上した彼を見物した事が、私の人生の転機だった。

飛駿族はその名の通り馬術に優れた北方の小遊牧民だ。そして袁耀将軍もまた、天下無双の名馬を供にしている。

その崇高な青鹿毛の馬は碧麟(へきりん)様という。

ヘキ様はもう、ほんっっっとうに、格好良くて痺れる馬だ。

初めて将軍を乗せた彼を帝の御殿前に広がる中央広場で見た時、私は衝撃で動けなくなった。
ヘキ様の頭の後ろに後光が差して見え、あまりの感動にその場で滂沱してしまった。

馬がこんなに素晴らしいものだったなんて知らなかった。もっと早く知っていれば、科挙なんて受けずヘキ様の厩舎係になる道を全力で探しただろう。

ヘキ様についてとにかく小さな事でも知りたくて、あらゆる飛駿族に関する文献を読み漁りその騎馬文化について調べ尽くした。
それと、騎手である袁耀将軍のことも。
2人の絆はこれまたため息が出るほど尊い。
揺るぎない信頼関係で固く結ばれた、種族を超えた深いつながり。
ああああ、尊い!!

ということで、今日も私はヘキ様の厩舎に忍び込んでいる。

「ヘキ様、お元気ですか?」

話しかけると、前足をふみふみして首を振ってくれる。
はわわ、可愛らしい。訓練中の凛々しい姿とのギャップがたまんない。

最初はなんだこいつって顔してたけど、秘密の逢瀬を重ねるうちに認知してくれた。
そうなると益々ヘキ様への思いは募り、さらに足繁く通うようになる。

「今日の贈り物です。お召し上がりください。」

手桶に入れた特性飼い葉を差し出すと鼻面を突っ込んでムシャムシャ食べてくれる。
相変わらず美しい食べっぷり。

少し食べた後、顔を持ち上げて手桶の取っ手を持った私の手を鼻でくいくい押してきた。

きゅうぅぅん!かわいい!

はっ、下に置けってことかと察して桶を地面に下ろす。
するとヘキ様は首を伸ばしてまた食べだした。

目の前には、艶やかな黒毛の下に張りのある筋肉が張り巡らされた首筋。
はあ……しゅてきぃ……。

思わず頬を寄せるとその肉の感触が堪らない。
ふへへ、顔が笑っちゃうね。

ガタンッ

にへにへしてると、入口の方から物音がした。
それでもヘキ様の筋肉と離れ難く、頬をくっつけたまま音のした方を見やる。

そこには、袁耀将軍が立っていた。
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
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