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トキノは程なくして射精した。
今までにないくらいの速さで、本人が少し情けなくなるくらいだった。

アカオはしばし余韻でぼうっとしているトキノを見つめた後、思い出したようにベッド脇に手を伸ばしさっきトキノがアカオの体を拭く時に用意したティッシュで手の中に受け止めたトキノの精液を拭き取った。

「兄さん」

トキノはアカオの関心を自分に戻したくて、背を向けて片づけをしているアカオを背後から抱きしめる。
抱きしめると、もう最大値だろうと思っている好きな気持ちが更に膨らむのが不思議だった。

顎をつかんでアカオを振り向かせ、少し身じろぐのを無視してキスをする。
応えてくれはしないが、拘束されていないのに暴れる様子もないのを良いことに抱き寄せてより密着しながら貪っていく。
舌を入れたくて歯列を舐めれば、抵抗なく噛み合わせの隙間から潜り込む事もできた。

触れ合っていたら、発散したばかりの欲が直ぐにまた募る。
寛げたままの股間を、抱き込んだアカオの臀部にぐいぐい押し付けた。

「ちょっ、猿かよ。」

「狐だけど。兄さんだって今日何度もイったくせに。」

「好きでなったわけじゃない。」

「俺だって、兄さんがエロ過ぎるせいだし。」

喋りながら両手でアカオの体をまさぐり、両方の乳首に降れようとしたとき。

ぐぅ………とアカオのおなかが鳴った。
トキノの手がピタッと止まる。

「……ごめん、おなか空いちゃって。」

「じゃあご飯用意してくるね。」

 トキノはあっさりと離れ、少し兆していたものをボトムスにしまうとベッドを降りた。

「お昼は上海焼そばだよ。」

「あ、好き。」

「うん、知ってる。」

トキノは端正な顔で薄く微笑んだ後、部屋を出ていった。
それを見送った後でふうっとため息を吐く。

どうにか四肢をつながれた状態からは脱却できた。
トキノの機嫌も何だか良くなったし、今日はもう少し譲歩を引き出せるかもしれない。

しかし、誤算もある。
トキノにされるのがものすごく気持ちいい事だ。
そのせいで、一方的に弄ばれて気持ちは嫌なのに乱れてしまう。
快感で感情が高ぶると、トキノへの怒りや拒否感が薄れて受け入れてしまいそうになる。

求められて手淫したのも、思い返せば強く拒否すればトキノは引き下がりそうな雰囲気だった。
なのに何だか流されて請われるままに触れてしまった。

このままなし崩しにどんどん既成事実を作られてしまったら……

冗談じゃない、と思って考えを打ち消す。
自分はトキノから離れて好きに生きるんだ。
そう決意を新たにした。

少し時間がかかったが、トキノが昼食を持って帰ってきた。
トキノが遅かったのは隠し撮りした映像を見て一発抜いていたからだが、そんな事はアカオの知る由ではない。
全裸の体を毛布を掛けて隠し、その膝に皿をおいて自分の手で食べた。

「美味しい。エビがぷりぷりだし、オイスターソースの濃さもちょうどいい。」

アカオは慣れた様子でトキノの料理をほめる。
トキノもそれを嬉しそうに聞きながら自分の分の料理を口に運んだ。
もちろん食べ終わった後はまた盛ってきたトキノにアカオは散々鳴かされたが、何とかバックバージンは守れた。

週が明けると、トキノが授業や研究室にいる間はおもちゃに開発され、帰ってきたらトキノにいたずらされる、という生活が数日続いた。しかし、どうにかまだ最後の一線は死守している。

アカオは大半の単位は足りているが、ゼミの単位や卒論はまだだ。
卒論の締め切りはまだ先だが、ゼミは毎週ある。アカオが就活を再開した事は教授に報告したから当面は任意参加にしてもらっているが、無断で欠席するのは失礼だろう。

しかしゼミに欠席の連絡がしたいと言っても、トキノは自分がしておくと言うだけで取り上げたスマホをアカオに返すことはなかった。
食い下がるとあからさまに不機嫌になって、話を終わらせようと盛ってくるので、トキノの言葉を信じるしかない。

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