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しおりを挟むトキノにとって、アカオは世界の全てだった。
幼い頃から優しくて何でもできる兄が大好きだったし、二次性徴が来る頃にははっきりとアカオに性的な魅力を感じるようになっていた。
大好きなアカオの隣にいたくてアカオのする事は何でも真似をして、追い越した。
そうするとアカオはいつも笑ってトキノを褒めた。
凄いな、敵わないよ。と大好きなアカオに称賛されるのがトキノが何かをする唯一の動機だった。
そんなトキノが、大学の専攻だけはアカオに関係なく選んだのも、理由はやっぱりアカオだった。
その時は具体的にアカオとどうにかなる事を考えていたわけではなかったが、憧れの気持ちでアカオと子供が作れたらいいなと思った。
身勝手な願望だとは自分でも自覚していたが抑えられなかった。
そうして生物工学で世界的に有名な教授のラボに入れてもらい研究しているうちに、何となく解決法が見えてきた。
科学原理を効率よく取り入れた事で妖術の質も上がり、一気に尻尾の数が増えたのも想定外だったが幸運だった。
兄は間違いなく妖狐一族の当主になるだろう。
現当主の父は、内向的なトキノよりも人望のあるアカオを気に入っている。
そう考えたトキノは、ある日父を妖術にかけ跡継ぎはトキノだと思わせた。
六尾の父を、十二尾のトキノが操るのはギリギリで多少骨が折れたが成功した。
父が急逝したのは予想外だったが、果たして当主の座はトキノに転がり込んできた。
トキノがそんな事をしたのは、そうしないとアカオが当主になってどこかの女狐とつがいになってしまうからだ。
妖狐の掟の外ならばいくらでも妨害できるが、流石に当主になられたらトキノでも抗うのは難しい。
それ以上の考えは無かったし、トキノが当主になれば優しいアカオはきっとずっとそばで支えてくれると思った。
それが、何か様子がおかしいとは思っていたけどまさか一族から離れて海外に行こうとするなんて。
アカオからそれを知らされた時、トキノの頭は真っ白になった。
それならアカオが当主になった方がマシだった、というのも本心だった。
その不用意な一言が、アカオの本音を引き出すとも知らずに。
トキノはこんなにアカオを愛しているのに、アカオはトキノが大嫌いだという。
それを知ってから、トキノの中で何かのタガが外れてしまった。
元々アカオに内緒で借りて、アカオが捨てた古い持ち物やお下がりの衣服なんかを置いていた2DKの一室に、アカオを閉じ込める準備を数日で進めた。
そして弟のことを疑いもしない無防備なアカオを薬で眠らせ、計画通り捕まえた。
目覚めたアカオがトキノに対して攻撃的に罵って来たなら、トキノも強引に犯して手に入れるつもりだった。
でも、目覚めたアカオはやっぱりトキノが大好きなままの優しい兄で、必死にトキノを宥めようとしてくる。
なのに無理やり本音を言わせれば、トキノのことを嫌いだと言った。
思い返せば行動だけで見れば確かにトキノはいつも何かと兄に張り合ってわざと負かしていた。
笑って褒めてくれてるからと言って、何故それに気づかなかったのか。嫌われて当然だ。
頭では分かっていても、心がアカオを手放すことを拒んだ。それに、トキノから逃れようと必死なアカオもとても可愛い。
今のアカオの頭の中はきっと自分のことでいっぱいだろう。
そう考えるだけでトキノは気分が良かった。
しかも普段はにこやかな表情しか見せないアカオが、今は色々な表情を見せてくれる。
抱かれたくなくて嘘泣きを始めた時は可愛すぎて欲望を我慢するのが大変だった。
それで健気に好きにしていいとか、おもちゃにしていいとか言うものだから、昔からアカオにしないでと言い含められていた読心をしてみたら本音に見えるように術をかけていて、言うとおりぐしゃぐしゃに犯してやろうかと思った。
そう言えば、自分が罪悪感で思いとどまると本気で思っているのだ。
本当にこの兄は無防備でたまに憎らしくなる。
そんなアカオがそれ以上に愛おしくて、トキノはアカオが求めている通りの言葉を吐いてやった。
そうすれば途端にアカオの態度が甘くなる。
アカオはそれで機嫌を取っているつもりだが、トキノはもっと別の方法で機嫌を取ってもらう気でいた。
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