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しおりを挟むトキノは少し青ざめて首を振った。
「違う……俺は、ただ兄さんと離れたくなくて……」
その言葉にアカオは力無く笑いかける。
「別にもういいよ。好きにしたらいい。僕みたいな実力の足りない妖狐なんて、それくらいでしか当主の役に立たないだろ。」
アカオの瞳にまた薄く涙が溜まる。
その瞳で、アカオはトキノを見つめて力無く微笑んだ。
「僕は、大事な弟が喜んでくれたらそれでいいから。おもちゃにでもしてくれたら満足だよ。」
また嘘をついているのか、トキノがそう疑い生まれて初めてこっそりと術でアカオの心を読んでみても、言葉と同じ感情があるだけだった。
「兄さん、そんな風に言わないで。俺、本当に兄さんを愛してるんだ。」
トキノがアカオを抱き寄せ、きつく抱きしめてくる。
その衝撃でアカオの目から涙が一筋流れ落ちた。
「でも、今から僕を犯すんだろ。そんなことされたら僕、トキノの気持ちなんて信じられないよ。遊ばれてるだけだ。」
「違う……じゃあ、待つよ。兄さんに俺の気持ちが伝わるまでちゃんと待つから。でも、お願いだからそばにはいて欲しい。どこにも行かないで……」
「トキノ……ありがとう。嬉しい。」
アカオはそっと抱きついてくるトキノの背中を撫でた。
内心、
ぶわあぁぁぁっっっっかぁぁぁ!!!
とほくそ笑みながら。
さっきの涙はもちろん嘘泣きだ。
妖術で涙腺を弄った。
念の為にトキノが読心術を使う可能性も考えダミーの感情も同時に用意して。
案の定トキノは術を使い、アカオの嘘を信じたようだ。
今まではアカオがやるなと言い含めていたのをちゃんと守っていたのに。
単に妖術を使ったらすぐにトキノに気配でバレていただろう。
でも、人型に転じる術を使った時に紛れて施したのでバレなかったようだ。
有り余る能力に恵まれ素直なままでも生きてこれたトキノは、きっとこんなせせこましい術の使い方など考えもしないのだろう。
でもアカオは違う。
限られた才能と器で実力以上に自分を見せる方法を模索しずっと周囲を欺いてきた。
トキノの本性を見せられた時はほんの少し、本当にほんの少し諦めそうになったけど、このまま黙っておかまを掘られてやる義理は無いとすぐに思い直す。
ついに子作りとか気持ちの悪い事を言い出した弟をどうにかしなくては、アカオの望む人生は訪れないように思えた。
何とかこんな風に騙し騙し欲求を交わしながら、徐々に自分に対する感情を冷ますしかない。
この閉じ込められた状態も、トキノにその気が無くなれば自ずと解放されるだろう。
あれを狙おう。
何だっけ、蛙化現象とかってやつ。
アカオは同回生の女子から聞き齧っただけの言葉を引き合いに出してみた。
日常で何かちょっと期待を裏切る事をするといいらしい。
手始めに今おならとか出ないかな、と考えていると、抱き合っているトキノがモゾモゾ動き出した。
背中に回っていた筋ばった手が前に回り、パン一で晒したままの乳首を長い指先が触れてくる。
「お、おい!」
「だって、ずっとくっついてたら触りたくなる。」
「待つって言っただろ。……あっ」
乳首の先端をこしこし引っ掻かれて思わず声が出た。
「最後まではしないよ。でも、兄さんをいっぱい気持ち良くして俺無しじゃイけなくなったら俺のこと好きになるかもしれないじゃん。兄さん言ったよね。好かれる努力しろって。」
身じろいで離れようとしたが、抱き込まれている体勢では不利すぎてあっという間に両手がまた鎖に繋がれてしまった。
短い鎖のせいで、必然的に仰向けになりトキノが覆い被さってくる。
「AVの見過ぎだって。」
「見たことない。兄さんの寝顔の方が何倍もヌけるし。」
「毎朝起こしに来たのはそういうっ……ひっ」
右の乳首をぬるりと舐められた感触に息を呑んだ。
「嬉しいな。嫌われてると思ったけど、弟としては大事に思ってくれてて。」
うっとり言うトキノ。罪悪感に訴えるつもりが、裏目に出たかもしれない。
「あ、ああ、もちろん。だから馬鹿な事はぁ……あ」
左の方を摘まれてくりくり刺激される。
「じゃあ、恋になるのもあと少しだね。」
そうはならないだろ。
そう諌めようとした時。
「さっきの泣いてる兄さん、嘘泣きでもキュンってしちゃった。」
その言葉に二の句が告げなくなった。
「まさか言葉まで嘘じゃ無いよね、兄さん。」
くにくにと人の乳首を指先で弄びながら、じっと見下ろしてくるトキノにアカオの口の端が引き攣った。
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