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しおりを挟む目が覚めたら、アカオは知らない部屋にいた。
「へ?」
狐のくせに狐につままれたような表情を浮かべる。
慌てて起きようと腕を動かして、手首が何かに引っかかった衝撃と痛みが走った。
「った……なんだよこれ……」
両手首に丈夫な布のバンドが巻かれていて、そのバンドから伸びるロープの端はアカオが寝ているパイプベッドの金属部分に繋がれているらしく引いてもビクともしない。
「は?え?」
異常な事態に一気に冷や汗が出てパニックを起こしそうになる。
身じろぐと、体にかけられている毛布で隠れた足首も同じような拘束をされている感触がした。
知らない部屋で四肢を拘束されている。
その事実に息が荒くなり、恐怖で身体がこわばる。
「兄さん。」
その時、ベッドと木製の棚、片付いた机とシンプルなスツールくらいしか家具のない6畳ほどの部屋のドアが開いて、トキノが現れた。
よく知った顔を見たアカオは、あらゆる不自然さを見落としてトキノが自分を助けにきてくれたのだと瞬時に思い込んだ。
「トキノ!よかった、助けて!」
拘束された腕を突き出し、必死に状況を訴える。
けど、トキノは驚く気配もなく無表情だった。
「だめだよ。少なくとも兄さんがこの生活を受け入れてくれるまでそこからは動けないと思って。」
言いながら部屋に入ってきて、手にしていた食事の乗ったお盆を室内のデスクに置く。
その言葉の意味がアカオには最初分からなかったが、記憶を辿れば自分が最後に一緒にいたのはトキノだった。
つまり、自分をこの状況にしたのはこの目の前の弟。
やっとアカオはそう理解した。
「はぁ?何の冗談?イタズラなら笑えないぞ。ここどこなんだよ。」
犯人がトキノと分かってアカオは安堵した。
悪ふざけだと思ったからだ。
冷静な自分はこの弟がそんな事をするだろうかと頭の片隅で警告を発していたが、そう思いたかった。
「冗談でもイタズラでもないよ。兄さんは今日からここで、俺だけ見て生きるの。」
ベッドサイドに腰掛けてアカオを見つめるトキノが至極真面目に言う。
言ってる事はめちゃくちゃなのに、まるで世間話でもするかのようだった。
「あのなぁ……っ」
諌めようとした言葉は、トキノが強引にアカオの顎を掴んで唇を重ねたせいで続かなかった。
ぬるりと舌が入り込んできて、ぐちゅぐちゅとアカオの舌を絡め取って擦り上げる。
体を押し返そうにも、手首と足首のロープの長さが足りなくてトキノに触れることも蹴り上げることもできない。
長い指を上下の顎の隙間に強く押し込んでくるので、噛み付くこともできずにトキノにされるがまま口内を犯される。
「ん゛っ!……っぷはぁ……」
漸く貪るようなキスをして唇は離れていった。トキノはアカオが暴れないように顎を強い力で押さえ込みながら唇がつきそうなくらいの至近距離でアカオを見つめる。
「兄さんのこと、愛してるんだ。側にいてくれるならそれでよかったけど。」
近過ぎて目の焦点が合わないから、トキノがどんな顔で言っているのかアカオには分からなかった。
「そうじゃないみたいだから、もう閉じ込めておくことにしたよ。」
痛いくらいの強い力でアカオを押さえつけながら、トキノは愛おしげにアカオのうなじやシャツから覗く鎖骨あたりをついばみ始めた。
それがいつものグルーミングと一緒で、トキノが今までどんな感情を込めてそれをしてきたのかをやっとアカオは理解した。
「トキノっ!おい!トキノってば!!」
不自由な体でとにかくめちゃくちゃに暴れてトキノの愛撫から逃れようと試みる。
それを圧倒的に優位な体勢で軽々と押さえ込んでトキノはアカオの肌に唇を這わせ続けた。
時折ぢゅっと強く吸い付かれて表面にわずかに痛みが走る。今までのグルーミングではなかった感触はトキノがアカオの身体に所有痕を付けてる証拠だった。
それに気付いたアカオはゾッとしたが、相変わらずトキノのグルーミングは巧みでだんだん混乱していた頭が落ち着いてくる。
とにかく、今はどうにかトキノを説得してこの状況を脱しないと。
アカオは一旦抵抗をやめて体の力を抜いた。
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