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僕が告白した後、魔王様はいつもの魔王様だった。

毎日夜になるとお部屋に帰ってきて、一緒にご飯を食べて少しおしゃべりして寝る。
朝になると僕を起こして朝ごはんをまた一緒に食べて、僕の身支度を手伝ってくれた後お仕事に行く。

僕は告白した後、魔王様に好きになって貰えるように一生懸命アピールしてる。

例えば村の女子が大人になったら恋人に腕枕されたいとコソコソ話していたのを思い出し、魔王様に腕枕してあげることにした。
僕の申し出に魔王様は首を傾げながら頭を乗せてくれたけど、体格が大きい魔王様の頭はツノも生えてるからそれなりに重くてすぐに腕が痺れてどいてもらった。
その後何故か魔王様も僕に腕枕してくれて、少し村の女子の気持ちがわかっちゃった。

あとは母さんが料理を作ってることに感謝しない父さんにいつも怒っていたので、僕はそれまでよりもっと魔王様の料理に感謝するようにした。

本当は、父さんが男は惚れた女を養って一人前だって言ってたから僕が狩りや畑仕事で魔王様を養おうと思った。だけど、魔王様に自分でごはんを用意したいって少しだけ話したら凄く悲しそうにされたのでそれはやめた。

こんな風に頑張ってるわけだけど、魔王様はいつもどおり。

「魔王様って、恋するのかな?」

今日もたくさん遊んだ後、草原で一休みしてる間に横で寝転んでいるザイに聞いてみた。
ザイはうつ伏せになっておもちゃのボールを両手でつついている。

「こい?なに?」

「相手のことを好きとか、……え、エッチしたいって思うこと。」

「えっち?」

「えっと、赤ちゃんが出来る行為?」

僕も魔王様も男だから出来ないけど。
……魔王様って、綺麗だけど男だよね?

「赤ちゃん?交尾ってこと?」

「そ、そう、かな?」

「うーん、魔王様が発情してるの見たことないよ。」

「魔王様が、発情……」

変な想像が浮かぶのを、頭を振って振り払う。

「ね、それよりサティ!あそぼ!あそぼ!」

「ボール?」

「うん!」

ザイからボールを受け取り思いっきり投げる。
ザイはすぐさま走りだし、ボールが落ちる前にキャッチした。
着地をすると踵を返して戻ってくる。

僕の目の前に来たと思った瞬間、

いきなりぽっかりザイの足元の地面が真っ黒の空間になった。
何が起こったかわからない顔のザイと目が合う。

「ザイ!」

とっさに手を伸ばしザイの手を掴んだ。僕の足元にまで黒い空間が広がって、そのまま僕たちはいきなり現れた暗い穴に落ちてしまった。

呆然としたまま、真っ暗になったと思ったらすぐに明るくなってドスっと地面にぶつかる衝撃を感じる。

「っうわ!」

痛む体を起こして周りを見た。
草原にいたはずが、土の地面とすこし開けた空間を囲む林が目に入る。

「サティ!?」

不意に名前を呼ばれて振り向く。

そこには知らない男の人が2人立っていた。

ううん、1人は僕がよく知ってる人だった。けど、僕の知らない姿をしている。

そこには同い年なはずのトマが、大きくなった姿で立っていた。20歳くらいのお兄さんに見える。

「トマ?」

「サティ……?うそだ、どういう、こと?」

「トマ、騙されるな。サティは村の犠牲になって死んだだろう?あれもサティの姿を借りた魔物だよ。」

トマの後ろにいる人が話しかける。
声は男の人に聞こえるけど、顔や体はローブが覆っていてよく分からない。


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