R18/短編/超絶美貌の魔王様が求めてやまないのは運命のヘイ=ボン村人だけ

7,

次の日から、僕は魔王様の部屋の掃除を毎日することにした。
魔王様に出してもらった雑巾と桶で掃除してる。

桶は使う時には綺麗な水がなみなみと現れて、雑巾はどんな汚れも落ちる魔法の掃除道具だ。
お部屋は初日はどんなに拭いても雑巾に埃の一つもつかなかったけど、次の日からは拭くと埃とか汚れが付くようになった。
汚れたお部屋は僕が拭くとピカピカになる。
ピカピカにしておくと、お仕事から帰ってきた魔王様がありがとうって言ってくれるからすごく嬉しい。

もっと役に立てないかな。
そう考えたある日、お部屋に花を飾ったらいいんじゃないかと思いついた。
綺麗なお花を見たら、魔王様はきっと喜んでもっと僕を褒めてくれるだろう。
ふふふ。
さっそく魔王様にどんなお花が好きか聞きに行こう。
花瓶の場所も聞かなきゃ。

はやく聞きたくて小走りで魔王様の書斎に行ってみる。
重厚な椅子以外はスッキリとして目立った物がない部屋に、いつもいるはずの魔王様はいなかった。

書斎の奥にある扉の先は僕みたいな異界の魂が召喚される神殿になっている。
ひょっとしたらそっちにいるのかも。
扉をあけて神殿に続く廊下を進む。
しばらく行くと広くて天井の高い空間に出た。

神殿だ。少し奥に誰かが立っているのが見えた。
僕より少し大きい男の子みたい。
何だか見慣れない服を着てる。
形は教会の神父様の服みたいだけど、緋色で腰に帯を巻いてるところが神父様と違う。帽子もつばがなくて黒い冠みたい。

「貴方だあれ？魂さん？」

呼びかけると、男の子がこちらを向いた。
顔立ちは今まで見たことない感じで、何だか鼻筋やまぶたがぺったりしてる。髪も目も真っ黒。珍しい。
男の子、だと思ったけど、僕よりはもっとお兄さんかも。

「えっと……」

僕の問いかけに男の人が口を開く。言葉は通じるみたい。
答えを聞く前にドォンという音が左のほうからしたのでそちらを見ると、魔王様とまた別の男の人が魔法をぶつけ合ってるのが見えた。

あれは……戦ってるんだよね？
たまに魔王様がデュラハンさんやドラゴンさんと遊びで魔法の打ち合いしてるところは見るけど、何だかそれより乱暴な感じだ。

「魔王様、誰と戦ってるの？危ないね。」

何となく目の前の知らない人に話しかけてみる。
いい人そうだし、言葉はわかるみたいだから。

「サティ！」

男の人が答える前に魔王様に呼ばれたから、そっちをみる。
魔王様と戦ってる男の人がゴウッて火柱を飛ばして、魔王様が小さく唸ってそれを薙ぎ払った。
何だか相手の男の人の雰囲気が怖い。
喧嘩……なのかな。
魔物さんたちの話だと魔王様はすごい強いらしいけど、あんな乱暴な感じだとそのうち怪我しちゃうかもしれない。
止めなきゃ。

「魔王様ー喧嘩はダメだよー？」

「サティ、今は少し向こうへ行っていよ……ッ」

僕に向かって魔王様が呼びかける間、喧嘩してる男の人が波動を放ってそれが魔王様の肩に直撃した。