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しおりを挟むヘイ=ボンになるために頑張るつもりの僕だけど、どうやって頑張ればいいかはわかんない。
魔王様には日々僕がヘイ=ボンかどうか聞いてるけど首をかしげるばかりだ。
そうするとどうなるか。
やることがなくてとっても暇。
だってここではご飯は魔王様がくれるし屋敷はいつもピカピカで、耕す畑も世話する家畜もいない。
なので、僕は魔王様がお仕事してる間に屋敷を日々探検してる。
ほら、何かヘイ=ボンになるヒントが見つかるかもしれないし。
というわけで、広い屋敷のある扉の前に僕は向かった。
昨日初めて入った部屋で、今日は探索の続きだ。
一枚板で作られた重厚な扉をうんしょと開ける。
「サティーーー!」
直後、中から転がるように塊が飛び出してきて体当たりされた。
「わあ!」
塊と一緒に床に転がると、すかさず僕の顔を舌がペロペロ舐める。
「ちょっ……!ザイ……まっ……」
少し前出会った魔物のザイがのしかかって、長くて薄い舌で顔中を舐め回してくる。
フサフサで三角の耳がパタパタ動いて、モコモコの長い尻尾がちぎれそうなくらいブンブン暴れるから僕の脚にパサパサあたる。
耳や尻尾以外は僕とそう変わらない男の姿で、両手で逃げられないよう僕の肩を抑えていた。
ザイは狼男らしい。僕がお婆ちゃんから言い聞かされた家畜や人を襲う凶暴な魔物ってイメージでは全然ないけど。
「ハッ、ハッ……舐める!……サティ!……好き!……好き!」
ペロペロする合間に興奮した声を漏らすザイ。
「どいてっ、んぶっ……」
何か言おうとしても、口を舐めまわされるので喋りにくい。
とりあえずどうにか押しのけると、ザイはバッと飛び退いた。
「撫でて!?撫でて!?」
その場でゴロンと仰向けになって背中を地面に擦り付けるように捩っている。
しゃがんでそのお腹を撫でてあげると気持ちよさそうにわふっわふって声を漏らした。
「遊ぶ!?サティ、遊ぶ!?」
一通り撫でてやると、次は僕の周りをバヒョバヒョ飛び跳ねながら聞いてくる。
「いいよ。じゃあ、そっちでね。」
扉の向こうを指すと、ダダダダってものすごい勢いでそっちに走っていく。
開いたドアの向こうには、牧草地が広がっていた。
魔王様の屋敷の扉は、いろんな場所につながっている。
森だったり、海辺だったり、山の上だったり。
そして、それぞれの地にいろんな魔物さんが住んでいるみたい。
そんな感じだから、普通にお部屋になってるのは魔王様の部屋だけで、だから僕もこっちに来てから魔王様の部屋に寝泊まりしてるんだ。
遠くまで走って行ってしまったザイの後に続いて牧草地に足を踏み入れる。
近くに生えた木の下で適当な棒切れを拾った。
「ザイー。いっくよー。」
呼べば遠くに豆粒くらいになったザイが振り向いてこちらに駆けてくる。
そこに向かって思いっきり枝を投げると、上手いタイミングで空中でキャッチして持ってきた。
口にくわえた枝が僕の前に差し出されたのでそれを受け取ってまた投げる。
今度は枝を持ってくるザイから逃げるように走り出せば、追いかけっこが始まった。
「サティ!かけっこ!かけっこ!」
枝を放り投げて僕を追うザイ。
狼の足だからすぐ追いつけるだろうに、かけっこが長続きするように明らかに手加減して走ってる。
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