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しおりを挟む「さて、他にはどうだい?」
他――他――特に思いつかない。
「他には、特にないな。それよりも、お前の方はどうなんだ?」
「僕の方はもう何もないよ。聞くべきことは全て聞いた。もちろん、またいずれ君に聞くこともあるだろうけど、それはまた後日ってことで」
「わかった。俺の方ももうない。なら、これで終わりだな」
俺がそう言った瞬間、バサッという大きな音を立ててエニグマの背中から翼が生えた。
「気が早いな。用がなくなればすぐにか」
「下にいる灰色の連中に、ここを君に譲ると言わなければいけないしね。さあ……」
エニグマはそう言って右手を俺の方に差し出した。
俺がいぶかしむと、エニグマが言った。
「僕の手を取ってくれ。下まで運ぶよ」
「空を飛ぶのか?」
「そう。手っ取り早いだろ」
まあ、確かに。
俺はすっと右手を差し出そうとするも、どういう形で掴まればいいのかわからなかった。
そのため右手を出したかと思うと、左手を前に出し、また右手をといった具合で右往左往した。
エニグマはクククと意地悪く笑うと言った。
「ではまずは飛ぶとしよう。掴まり方は君に任せるよ」
そう言うと、エニグマの背から生えた翼が大きく羽ばたいた。
もの凄い風が巻き起こる。
俺は、巻き上がった砂煙を避けるために右手を顔の前に翳した。
その指の隙間から覗き込むと、エニグマの身体がもう浮かび上がっていた。
エニグマはそのまま二メートルくらいの位置まで行くとピタリと止まり、地面に平行に身体を横たえた。
そして、再び右手を前に差し出した。
俺はエニグマに近づくと、その手を両手で握った。
途端に俺の身体が浮き上がった。
みるみるうちに地面から離れる。
そして背中の方向に向かって、静かに移動し始めた。
逆向きだったな。でも、まあいいか。
三層のパルテノン神殿がどんどん遠ざかっていく。
と、ゆるやかに斜面に沿って降りていく。
凄いな。滑るように空を飛んでいる。まさに滑空って感じだ。
気持ちがいい。空を飛ぶってこんな気分なのか。
だがそれは、すぐに終わりを迎えた。
「さあ、着地だ。足をついてくれ」
エニグマがそう言った途端、ピンと伸びたつま先に何かが当たった。
俺は少しだけ膝を曲げ、もう少し下がるのを待つ。
そして頃合いを見て膝を伸ばした。
足裏に地面を感じる。俺はその瞬間、エニグマの手を離す。
そして完璧な着地をしたのだった。
「ここは……集落のど真ん中だな」
俺が辺りを見回すと、灰色の連中が周りを取り囲んで騒いでいた。
「そう。言い聞かすのだから、ここが一番さ」
エニグマがいつの間にか着地し、俺の背後にいた。
他――他――特に思いつかない。
「他には、特にないな。それよりも、お前の方はどうなんだ?」
「僕の方はもう何もないよ。聞くべきことは全て聞いた。もちろん、またいずれ君に聞くこともあるだろうけど、それはまた後日ってことで」
「わかった。俺の方ももうない。なら、これで終わりだな」
俺がそう言った瞬間、バサッという大きな音を立ててエニグマの背中から翼が生えた。
「気が早いな。用がなくなればすぐにか」
「下にいる灰色の連中に、ここを君に譲ると言わなければいけないしね。さあ……」
エニグマはそう言って右手を俺の方に差し出した。
俺がいぶかしむと、エニグマが言った。
「僕の手を取ってくれ。下まで運ぶよ」
「空を飛ぶのか?」
「そう。手っ取り早いだろ」
まあ、確かに。
俺はすっと右手を差し出そうとするも、どういう形で掴まればいいのかわからなかった。
そのため右手を出したかと思うと、左手を前に出し、また右手をといった具合で右往左往した。
エニグマはクククと意地悪く笑うと言った。
「ではまずは飛ぶとしよう。掴まり方は君に任せるよ」
そう言うと、エニグマの背から生えた翼が大きく羽ばたいた。
もの凄い風が巻き起こる。
俺は、巻き上がった砂煙を避けるために右手を顔の前に翳した。
その指の隙間から覗き込むと、エニグマの身体がもう浮かび上がっていた。
エニグマはそのまま二メートルくらいの位置まで行くとピタリと止まり、地面に平行に身体を横たえた。
そして、再び右手を前に差し出した。
俺はエニグマに近づくと、その手を両手で握った。
途端に俺の身体が浮き上がった。
みるみるうちに地面から離れる。
そして背中の方向に向かって、静かに移動し始めた。
逆向きだったな。でも、まあいいか。
三層のパルテノン神殿がどんどん遠ざかっていく。
と、ゆるやかに斜面に沿って降りていく。
凄いな。滑るように空を飛んでいる。まさに滑空って感じだ。
気持ちがいい。空を飛ぶってこんな気分なのか。
だがそれは、すぐに終わりを迎えた。
「さあ、着地だ。足をついてくれ」
エニグマがそう言った途端、ピンと伸びたつま先に何かが当たった。
俺は少しだけ膝を曲げ、もう少し下がるのを待つ。
そして頃合いを見て膝を伸ばした。
足裏に地面を感じる。俺はその瞬間、エニグマの手を離す。
そして完璧な着地をしたのだった。
「ここは……集落のど真ん中だな」
俺が辺りを見回すと、灰色の連中が周りを取り囲んで騒いでいた。
「そう。言い聞かすのだから、ここが一番さ」
エニグマがいつの間にか着地し、俺の背後にいた。
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