上 下
38 / 46
【R15】番外編

4

しおりを挟む
「で、帰ってきたと。」

目の前に座るガロ座長と奥さんのエリゼさんに事の顛末を一通り話した後、ガロ座長に確認されたのでこっくり頷く。

次の日、僕はカペラ座に帰ってきていた。

「エリゼ、これ俺たち真面目に聞く必要ある?」

「あんた!いくらそうでも本人の前で言うんじゃないよ。」

うんざり顔のガロ座長を肘でエリザさんが突いた。

「もーちゃんと真面目に聞いてよ!未だに週2でシてる2人なら何か妙案があるかと思って相談してるんだから!」

僕は負けじと微妙な態度の2人に食い下がる。
ガロ座長が口に付けたコップの水をぶっと吐き出した。

「っ!?エリゼ何ルネに話してるんだよ!?」

「ごめん、なんか話の流れで……」

エリゼさんがバツが悪そうに言う。
僕はこの問題についてちょくちょくエリザさんに相談していた。

「教えてもらった事色々試してみたけど、ダメだった。」

「そっか。伯爵さんは育ちがいいから、くっつけばすぐに盛ってくるお猿さんとは頭のつくりが違うんだよきっと。」

「誰のことかな!?」

ガロさんが無精髭の散った頬を赤くして叫んだ。

「ルネよぉ、状況は分かったけど家出までしなくても。お前伯爵に無断で勝手な行動したら罰される立場だろ?」

「ガロ座長、世間に疎いなぁ。あれはもうエドヴァル様が貴族典範を改正して無くなったよ。」

僕をダシにしたデモに失敗した反王制派は、今度はこれをきっかけに法律がおかしいと批判し出した。
それを治めるための改正で、妻だけに課される罰則規定が無くなったんだ。
古いこの国も、新しい考えに影響されて少しづつ変わっていくみたい。

「知るかよ。王室と世間のゴタゴタにゃ興味ないね。」

「まあ、ということで、僕はしばらくここに住むから。空いてる部屋ある?」

「二階の突き当たりの部屋。」

「ありがと。」

「待てよ。まだ泊めるとは言ってないだろ。俺は悩んでるなら今すぐ戻って伯爵と腹割って話し合うのがいいと思うがな。拗ねてたって何も変わんないだろうが。」

「でも、それではっきりシたくないって言われたら……。」

「本当にそうか分かんねぇだろ。」

「そうだよルネ。伯爵さんはいつもみたいに照れてるだけだとあたしは思うよ。」

「……違うよ。だって、ジョンは照れてる時はカチコチになっちゃうもん。」

僕は、気づいてしまって一番ショックだったことを口にした。

「今までもちょっとずつ慣れてくれたから、僕だって最初は慣れれば大丈夫だって思ってた。でも、今のジョンは自分の意思で僕の誘いを躱してるとしか思えない。」

それが何故かは分からないけど、どんな理由であれそれは僕とエッチしたくないからするんだろう。

「だとしても、お前がどうしたいかはきちんと伝えたら?」

ガロ座長がいい含めるように言う。
でも……


「ジョンとエッチしたいって言って、もし嫌がられたら……いやだ……」


想像しただけで声が震えて涙が出てきた。
それを見たエリザさんが隣に座って頭を撫でてくれる。
ガロ座長は正しい。いつもの僕だったら、はっきり聞いてると思う。
でも、ジョンに対してだとそれが怖い。
自分がこんなになるくらいジョンを好きになってることを改めて思い知った。
ガロさんはそんな僕を見て頭をガシガシ掻いている。

「全く、お前がここまでなるたぁな。まあ……いいんじゃないか。ちょっと気持ちが落ち着くまでいれば。けど、その間に頭整理しとけよ。帰ったら話し合いできるようにな。」

「分かった。ありがとうガロ座長。」

「客扱いはしないからな。せっかくだから新入りの演技指導してもらうぜ。」

「うん、もちろんだよ。」

家出先に居座りの許可をもらった僕は、空き部屋に荷物を運びに行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

処理中です...