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お近づき編
27, 初めてのチュウ?
しおりを挟むああ、あったかいなぁ。
寒い日なんかはよく義父さんの布団に入れてもらったっけ。
その時みたい。
心地よさに思わず顔を目の前の温かいものに擦り付ける。
「う゛う゛っ……」
すり寄ったものから地を這うような呻き声が聞こえて、ぱちっと目を覚ました。
室内の光は西日でオレンジを帯びている。
だいぶ眠ってたみたい。
意識が覚醒すると、自分がすり寄っていたものまできちんと把握できた。
「っ……ジョンっ、あの……ごめん。」
慌ててジョンの上から退いてベッドに座る。
「構わん。どうにか耐えられた。」
「あっ、そうだよね。重かったよね。本当にごめんなさい……。僕、枕が変わると寝られない体質だから最近寝不足でつい……。」
「そうだったのか。気が付かなくてすまない。」
「いや、ジョンのせいじゃないよ。それに今はよく眠れたんだ。貴方の体があったかくて、安心出来たのかも。」
「む、そうか……。ところで、何故俺たちは天国にいるんだ?」
「え!?いないよ?僕たちちゃんと生きてるよ?」
何だなんだまた何か言い出したんだけど。
「……では……これは現実……」
ジョンの顔が見る間に真っ赤になっていく。
嫌な予感がした。
「ジョン!待って、落ち着いて!」
ジョンの左手を握って逃げられないようにする。
そうするとジョンは握られた手と僕の顔を交互に見た。
困り果てた大型犬みたいで、目尻に少し涙が浮かんでいる。
その様子に胸がキュンとした。
何でこの怖い顔が僕の中のかわいいを更新していくわけ?
「あのさ、そう何回も逃げられると僕も気になるというか……拒否されてるみたいで。もう少し慣れてくれても良いんじゃないかなって。」
「む……そ、そう、か……」
「うん。見慣れちゃえばそのうち恥ずかしくなくなるよ多分。」
「わ、分かった。」
一層眉間のシワを深くして口を引き結ぶと、ずいっとジョンが顔を近づけてきた。
端正な顔が目の前に迫ってきて心臓が跳ねる。
これ以上近づかれたら、あらぬところがくっつきそうだ。
そう思ったら思わず目をぎゅっと瞑ってしまった。
どうしよう。このままキスされる!?
そう思っても体が逃げ出そうとはしない。
視界が無くなっても意識してしまうジョンの気配に集中する。
心臓がドキドキしてうるさい。
…………何も起きないな……?
そっと目を開けると、目の前には変わらずジョンの顔。
「じ、ジョン?」
「……。」
返事がない。
「あの……」
「……。」
返事がない。
「おーい。」
目の前でヒラヒラ手を振っても反応がない。
うん。とうとう照れすぎて固まるという技を習得してしまったようだ。
それに気づいて、微動だにしないジョンを前にあっけに取られる。
に、逃げなくなっただけ進歩、なのかな?
前向きに考えてみる。
う、うん。そう思おう。
「もっと、僕が一緒にいることに慣れて下さいね?」
目の前の動かない顔を覗き込み、弾力が強い黒髪をくすぐるように指を差し入れた。
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