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お近づき編
26, Side ジョン
しおりを挟む何かいい匂いがする事に意識が呼び覚まされ、目を開ければ日に透ける緑がかった金髪の輝きが飛び込んできた。
布団よりも重たく温かいものが体に被さっている感覚にもすぐに違和感を覚える。
それらの正体を認識した時、俺は自分が死んだのだと思った。
でなければ、ルネが俺にしがみついて寝ているなんて夢みたいなことが起きるわけはない。
どうやら天国に召されたようでよかった。
ふむ。天国というのは自宅とあまり変わらないのだな。
どうせならルネに似合うふわふわな設えの部屋ならよかったのに。
まあ贅沢は言うまい。彼がいるだけでどこだろうと極楽なのだから。
それにしても俺のようなゴツゴツしたものに乗せられているルネが可哀想だ。
さぞかし寝心地が悪いだろうから、ベッドの方に寝かせてやろう。
ルネを持ち上げるために腕を動かそうとするとズキリと痛い。
む、天国なのに負傷したままとはなかなか不便なものだ。医者はきちんと診てくれるのだろうか。天国では人は働かないと聞くが。
「んん……」
俺の動いた振動が伝わったのか、ルネが可愛く呻いて身動いだ。落ちないようにだろうが俺の太ももに跨った体がきゅっと股を締め背中に回された手に力が篭る。俺の首筋に触れる絹糸みたいな髪からふわりと彼の匂いが香った。
まずい。勃起しそうだ。
天国でも人は勃起するのか。
どこまでも罪深い生き物だな。
しかし今は困る。俺の汚い陰茎をこの天使のような人に擦り付けるわけにはいかない。
なるべく複雑な化学式を思い浮かべ、だめ押しで人生で初めて作った工作機械を迂闊な叔父に不注意で破壊されたことを思い出す。
うむ、落ち着いてきた。
改めて片手でどうにかルネをベッドに寝かせようと試みる。
引き離そうとすると、腕がぎゅっとすがりついてきた。
その様子が愛らしすぎて目眩がしてくる。
「……やだ……独りに、しないで……僕、ここだよ……」
聞こえた言葉に手を止める。
起きたのかと思えばどうも寝言のようだ。
せっかく天国にいるのに、ルネは何か悲しい夢を見ているのだろうか。
そう思うとこちらまで胸が痛くなり、どうにか良い夢に変わるように念じながら擦り寄ってくる頭を撫で続けた。
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