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お近づき編

25, スリーピング強面

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その後は男の服に着替えて一人で朝食を食べ、稽古部屋に向かった。
一通り自分の役を通しで練習した後、他の役のセリフや動きを確認しようと台本を読み直していく。

そうして自分の演技が全体とバランスが取れているか思い描いてみた。

「うーん。やっぱりみんなと合同稽古もしたいな。」

稽古をしに帰りたい。けど、舞台に出ることを反対されている以上それも許してもらえない気がした。

視線を台本から室内に移す。
ここも多分、寝室と同じでジョンが僕のために作った部屋なんだと思う。
彼の研究室のすぐ側にある僕の稽古部屋。

本当に僕が舞台に立つことに反対していたら、こんな部屋作るだろうか?

だから、きっとジョンは分かってくれる。
この部屋にいるとそう思えるんだ。

……うん。今はできることをしよう。
そう思いなおしてまた台本に目を落とした。



そうして稽古に励んで時間は午後。
目の前には静かに寝息を立てているジョンがいる。

僕は彼の部屋に勝手に入って、その寝顔を覗き込んでいた。

上半身はクッションに預けて起こしている状態なので、多分居眠りなんだろう。
脇には開いた本が置いてある。
難しい内容で僕にはよくわからない。
丁度昼食後の眠くなる時間帯だし、こんなの読んでたらそりゃ寝ちゃうよ。

台本を読んでいるうちに原作小説を確認したい箇所が出てきて、僕の部屋の本棚に無かったからジョンが持ってないか聞きにきたんだけど……
気持ち良さそに寝てんなぁ。

今のジョンの眉間にはシワがなくて、威圧的な三白眼も隠れているから顔立ちの綺麗なところが起きている時よりよくわかる。
本当かっこいい顔してんだよね。

スタイルも良いし、軍神アルスの役とか似合いそう。
演技はダメダメだろうな。
そこまで考えて、ふふっと笑い声を漏らす。

「……。」

彼の顔から広い胸板に視線を落とした。
さっき抱きしめられた時の温もりを思い出す。
それが少し恋しくなって、思わずベッドに乗り上げてしまった。
本をどかして横に並んで座り、ジョンの体に凭れかかる。
触れたところがじんわりあったかくてホッとした。
僕、この人の体温好きかもしんない。

もっと温もりを感じたくなって、起きる気配がないのをいい事に今度は足にかけられた布団をまくりジョンの太ももを跨いで対面で座る。
こうすると、太ももが触れる僕の足やお尻にも体温が伝わってくる。
そのまま上体を倒して張り出す胸板に頬を押し当てた。
怪我をしている場所に触れないように注意を払って上半身を押しつければ、さっきより密着部分が増えてずっと温かい。

とくとくって聞こえてくる静かな心音も心地よかった。
あ、何か……ねむ……。

屋敷に来てから寝付けなかったのが嘘みたいに、瞼が重くなって僕は眠りに落ちた。
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