嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ

文字の大きさ
上 下
25 / 46
お近づき編

25, スリーピング強面

しおりを挟む

その後は男の服に着替えて一人で朝食を食べ、稽古部屋に向かった。
一通り自分の役を通しで練習した後、他の役のセリフや動きを確認しようと台本を読み直していく。

そうして自分の演技が全体とバランスが取れているか思い描いてみた。

「うーん。やっぱりみんなと合同稽古もしたいな。」

稽古をしに帰りたい。けど、舞台に出ることを反対されている以上それも許してもらえない気がした。

視線を台本から室内に移す。
ここも多分、寝室と同じでジョンが僕のために作った部屋なんだと思う。
彼の研究室のすぐ側にある僕の稽古部屋。

本当に僕が舞台に立つことに反対していたら、こんな部屋作るだろうか?

だから、きっとジョンは分かってくれる。
この部屋にいるとそう思えるんだ。

……うん。今はできることをしよう。
そう思いなおしてまた台本に目を落とした。



そうして稽古に励んで時間は午後。
目の前には静かに寝息を立てているジョンがいる。

僕は彼の部屋に勝手に入って、その寝顔を覗き込んでいた。

上半身はクッションに預けて起こしている状態なので、多分居眠りなんだろう。
脇には開いた本が置いてある。
難しい内容で僕にはよくわからない。
丁度昼食後の眠くなる時間帯だし、こんなの読んでたらそりゃ寝ちゃうよ。

台本を読んでいるうちに原作小説を確認したい箇所が出てきて、僕の部屋の本棚に無かったからジョンが持ってないか聞きにきたんだけど……
気持ち良さそに寝てんなぁ。

今のジョンの眉間にはシワがなくて、威圧的な三白眼も隠れているから顔立ちの綺麗なところが起きている時よりよくわかる。
本当かっこいい顔してんだよね。

スタイルも良いし、軍神アルスの役とか似合いそう。
演技はダメダメだろうな。
そこまで考えて、ふふっと笑い声を漏らす。

「……。」

彼の顔から広い胸板に視線を落とした。
さっき抱きしめられた時の温もりを思い出す。
それが少し恋しくなって、思わずベッドに乗り上げてしまった。
本をどかして横に並んで座り、ジョンの体に凭れかかる。
触れたところがじんわりあったかくてホッとした。
僕、この人の体温好きかもしんない。

もっと温もりを感じたくなって、起きる気配がないのをいい事に今度は足にかけられた布団をまくりジョンの太ももを跨いで対面で座る。
こうすると、太ももが触れる僕の足やお尻にも体温が伝わってくる。
そのまま上体を倒して張り出す胸板に頬を押し当てた。
怪我をしている場所に触れないように注意を払って上半身を押しつければ、さっきより密着部分が増えてずっと温かい。

とくとくって聞こえてくる静かな心音も心地よかった。
あ、何か……ねむ……。

屋敷に来てから寝付けなかったのが嘘みたいに、瞼が重くなって僕は眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

うまく笑えない君へと捧ぐ

西友
BL
 本編+おまけ話、完結です。  ありがとうございました!  中学二年の夏、彰太(しょうた)は恋愛を諦めた。でも、一人でも恋は出来るから。そんな想いを秘めたまま、彰太は一翔(かずと)に片想いをする。やがて、ハグから始まった二人の恋愛は、三年で幕を閉じることになる。  一翔の左手の薬指には、微かに光る指輪がある。綺麗な奥さんと、一歳になる娘がいるという一翔。あの三年間は、幻だった。一翔はそんな風に思っているかもしれない。  ──でも。おれにとっては、確かに現実だったよ。  もう二度と交差することのない想いを秘め、彰太は遠い場所で笑う一翔に背を向けた。

ガラス玉のように

イケのタコ
BL
クール美形×平凡 成績共に運動神経も平凡と、そつなくのびのびと暮らしていたスズ。そんな中突然、親の転勤が決まる。 親と一緒に外国に行くのか、それとも知人宅にで生活するのかを、どっちかを選択する事になったスズ。 とりあえず、お試しで一週間だけ知人宅にお邪魔する事になった。 圧倒されるような日本家屋に驚きつつ、なぜか知人宅には学校一番イケメンとらいわれる有名な三船がいた。 スズは三船とは会話をしたことがなく、気まずいながらも挨拶をする。しかし三船の方は傲慢な態度を取り印象は最悪。 ここで暮らして行けるのか。悩んでいると母の友人であり知人の、義宗に「三船は不器用だから長めに見てやって」と気長に判断してほしいと言われる。 三船に嫌われていては判断するもないと思うがとスズは思う。それでも優しい義宗が言った通りに気長がに気楽にしようと心がける。 しかし、スズが待ち受けているのは日常ではなく波乱。 三船との衝突。そして、この家の秘密と真実に立ち向かうことになるスズだった。

[完結]閑古鳥を飼うギルマスに必要なもの

るい
BL
 潰れかけのギルドのギルドマスターであるクランは今日も今日とて厳しい経営に追われていた。  いつ潰れてもおかしくないギルドに周りはクランを嘲笑するが唯一このギルドを一緒に支えてくれるリドだけがクランは大切だった。  けれども、このギルドに不釣り合いなほど優れたリドをここに引き留めていいのかと悩んでいた。  しかし、そんなある日、クランはリドのことを思い、決断を下す時がくるのだった。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

処理中です...