嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ

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出会い編

15, どこまでも無口な男

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それからルパートさんや他の使用人が現場に来て、伯爵を部屋に連れて行った。
僕も後ろをついていく。
しばらくして部屋に医者が来て治療にあたった。
飛んできた医者によると、濃度も薄いもので処置が良かったので大事には至っていないが、1週間は負傷した右肩を動かしてはいけないらしい。

医者が帰った後集まっていた使用人達もルパートさんが帰して、部屋に伯爵とルパートさんと僕だけになる。

「あ、あの、本当に申し訳ございません。僕のせいで伯爵様にお怪我を……。」

ベッドに横になっている伯爵に謝罪した。

医者への説明で、原因は棚にあった薬液を被ったからということが僕にも分かった。
伯爵は僕を庇って怪我をしたんだ。
たまたま薬液の濃度が薄くて本当によかった。

「……。」

伯爵は何も言わないでチラリとルパートさんを見た。
もう僕とは口もききたくないみたい。

「奥様。部屋に無断で入られたことは良い事ではありません。しかし危険物があるとご説明もしておりませんでしたし、部屋を散らかしていたのは旦那様ですので奥様だけの責任ではございません。」

「でも、償いをさせて下さい。何でもします。治るまで看病もさせて下さい。」

必死に伯爵を見つめると、目を逸らしまたルパートさんに目配せした。その拒絶の態度に絶望的な気持ちになる。

「それでしたら治るまでと言わず……」

「ルパート。」

ルパートさんの言葉を伯爵が睨みながら低い声で遮った。

「失礼いたしました。奥様のお手を煩わせるまでもございません。医者も看護師もおりますし介助も使用人達でいたしますので、どうかお気に病まず。」

伯爵が小さく頷く。
僕なんかに看病されなくないんだろう。

「……分かりました。伯爵様、本当に心からお詫びします。あの、せめて治るまでおそばにいてもいいでしょうか。顔も見せませんし、近寄りもしません。ただ、無事な姿を拝見したいです。」

僕は静かに首を垂れた。
どんなに嫌われてようと、怪我をさせたまま何もしないなんて出来ない。

「る、ルパート……」

少し裏返ったような声が聞こえる。
こっちは下を向いてるので表情は分からなかった。

「あれ?旦那様呼ばれました?耳の調子が悪くて。」

「ルパート。」

「はて、聞こえませんねぇ。」

「っ…………。その……見舞い、なら……。」

聞こえた声に顔を急いで上げる。

「はい!毎日します!ありがとうございます!!」

「む……今日はもう……。」

「あっ、そうですよね。本当に助けていただいてありがとうございました。ゆっくりお休みください。お大事に。」

礼をして自室に戻った。
流石に精神的に疲れたからか、ベッドに入ったら直ぐに寝られた。
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