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出会い編
3, 公式愛妾は王妃いびりがお好き?
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『青瞼の女男』
それが宮廷でつけられた僕の影のあだ名だ。
舞台ではスポットライトに使うカーボン灯の明るさに顔が負けないように、瞼にくっきり青いシャドーを入れるから。
そんなんはまだいい。
他に『性悪女男』なんてのもある。
ストレートに悪口だし、捻りがない。
女男はまあ、事実だから仕方がないと思ってる。
僕は住民登録上は色々あってたまたま女になったけど、実際は男だから。
でもそれが功を奏して舞台に上がってからは『男なのに女役を演じる役者』という異色の経歴で話題になり、人気者の道を駆け上がれた。
見た目も細身で女顔だから、こんなキャリアでなければ男らしさが無いと悩んでたかも。
しかし、その挙句が皇帝の愛妾って、人生わからんもんだな。
うんと伸びをするとコルセットに肩甲骨が当たった。痛い。
宮廷に上がる前から外ではキャラ作りで女の服を着てるけど、こんなに窮屈な格好をずっと続けるのは初めてだ。
「お気に召しませんか?」
仕立て屋が不安そうに聞いてくる。
「いーえ。陛下に毎晩愛されて体が辛いんですわぁ!!」
態とらしくチラリと横を見る。
そこには青ざめて悲壮な顔つきのマリーズ王妃がソファに座っていた。
うん。ごめん。本当。
今日も良心がジクジク痛む。
けどこれもエドヴァル様の指示なんだ。
今は、『偉そうに王妃を呼びつけてドレス作りに付き合わせると言う名目で寵愛をひけらかす』シーン。
因みに、周りには偵察や野次馬で見に来ている様々な王侯貴族の召使いや外国の使者がうじゃうじゃ控えている。
この模様は瞬く間に王宮や周辺国に伝わり果ては庶民の耳に届くってわけ。
僕の悪態とそれに耐える健気な王妃様の様子がね。
王妃が眉根を寄せて放つ悲しみオーラに耐え、気持ちを切り替えて役に徹する。
「あらぁ、その紫の生地、テキスタイルが斬新ね。同じ柄で深緑は作れんのかしら?真珠とピンクサファイアをあしらって1着欲しいわ。」
「ふ、深緑ですか?」
上客の僕の言葉とはいえ、仕立て屋は少し逡巡した。
そりゃそうだろう。
「そうよ!素敵でしょう。あなたもそうは思わなくて?マリーズ様。」
僕の言葉に周囲がざわつき、王妃のお付きの侍女が般若のような顔で睨んでくる。
はいここ今日の胸糞悪いハイライト。
深緑はこの国では王妃を象徴する色だ。
なので、大抵の貴婦人はその色でドレスを仕立てることを避ける。
今僕は、『私こそ王妃よ』ってめちゃくちゃマリーズ様を煽ってるわけ。
うん。我ながら酷いけど、周りの空気が凍りついているところを見ると今の僕最高にいい演技出来てるみたい。
でもマリーズ様、流石に怒ろう?
もう耐えなくていいよ。
僕のほっぺたひっぱたいていいよ。
後ろの侍女でも代行可。
思ってたよりこのシナリオ酷すぎるもん。
「……ええ、似合うと、思います。」
青ざめた表情で小さな声を発したマリーズ様。
何それ?本当にあんたそれでいいの?
震えてんじゃん。
あーもー僕ちょっともう無理。
「んー。でもやっぱりぃ、その紫の生地にしますわ!」
ムシャクシャするから更に2着、エドヴァル様の支払いで発注してやった。
それが宮廷でつけられた僕の影のあだ名だ。
舞台ではスポットライトに使うカーボン灯の明るさに顔が負けないように、瞼にくっきり青いシャドーを入れるから。
そんなんはまだいい。
他に『性悪女男』なんてのもある。
ストレートに悪口だし、捻りがない。
女男はまあ、事実だから仕方がないと思ってる。
僕は住民登録上は色々あってたまたま女になったけど、実際は男だから。
でもそれが功を奏して舞台に上がってからは『男なのに女役を演じる役者』という異色の経歴で話題になり、人気者の道を駆け上がれた。
見た目も細身で女顔だから、こんなキャリアでなければ男らしさが無いと悩んでたかも。
しかし、その挙句が皇帝の愛妾って、人生わからんもんだな。
うんと伸びをするとコルセットに肩甲骨が当たった。痛い。
宮廷に上がる前から外ではキャラ作りで女の服を着てるけど、こんなに窮屈な格好をずっと続けるのは初めてだ。
「お気に召しませんか?」
仕立て屋が不安そうに聞いてくる。
「いーえ。陛下に毎晩愛されて体が辛いんですわぁ!!」
態とらしくチラリと横を見る。
そこには青ざめて悲壮な顔つきのマリーズ王妃がソファに座っていた。
うん。ごめん。本当。
今日も良心がジクジク痛む。
けどこれもエドヴァル様の指示なんだ。
今は、『偉そうに王妃を呼びつけてドレス作りに付き合わせると言う名目で寵愛をひけらかす』シーン。
因みに、周りには偵察や野次馬で見に来ている様々な王侯貴族の召使いや外国の使者がうじゃうじゃ控えている。
この模様は瞬く間に王宮や周辺国に伝わり果ては庶民の耳に届くってわけ。
僕の悪態とそれに耐える健気な王妃様の様子がね。
王妃が眉根を寄せて放つ悲しみオーラに耐え、気持ちを切り替えて役に徹する。
「あらぁ、その紫の生地、テキスタイルが斬新ね。同じ柄で深緑は作れんのかしら?真珠とピンクサファイアをあしらって1着欲しいわ。」
「ふ、深緑ですか?」
上客の僕の言葉とはいえ、仕立て屋は少し逡巡した。
そりゃそうだろう。
「そうよ!素敵でしょう。あなたもそうは思わなくて?マリーズ様。」
僕の言葉に周囲がざわつき、王妃のお付きの侍女が般若のような顔で睨んでくる。
はいここ今日の胸糞悪いハイライト。
深緑はこの国では王妃を象徴する色だ。
なので、大抵の貴婦人はその色でドレスを仕立てることを避ける。
今僕は、『私こそ王妃よ』ってめちゃくちゃマリーズ様を煽ってるわけ。
うん。我ながら酷いけど、周りの空気が凍りついているところを見ると今の僕最高にいい演技出来てるみたい。
でもマリーズ様、流石に怒ろう?
もう耐えなくていいよ。
僕のほっぺたひっぱたいていいよ。
後ろの侍女でも代行可。
思ってたよりこのシナリオ酷すぎるもん。
「……ええ、似合うと、思います。」
青ざめた表情で小さな声を発したマリーズ様。
何それ?本当にあんたそれでいいの?
震えてんじゃん。
あーもー僕ちょっともう無理。
「んー。でもやっぱりぃ、その紫の生地にしますわ!」
ムシャクシャするから更に2着、エドヴァル様の支払いで発注してやった。
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