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13, 尋問

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シュンツがスカートを整えて座り直した所で、コホンと咳払いがした。

「本日は、ミレイナ様にお伺いしたき事がありご無礼を承知で参りました。」

奴の従者がスラスラと言う。

「わたくしに?貴方はどなた?」

「申し遅れました。私はフローレ公国、ベレーネ伯爵の嫡子、マーレイ・ベレーネです。以後お見知り置きを。」

「エリザリケ様のお友達ね。よろしくお願いしますわ。」

シュンツがふんわり笑う。
神話に出てくる女神でも通用しそう。

「はい。では早速ですが、ご出身はどちらでございますか?元々王都にお住まいではなかったと聞いております。」

「あら、わたくしのことが知りたいの?」

「はい。ルチアーノ殿下の親しいご友人でいらっしゃいますので、お互いによく理解し合いたいと考えております。」

「ふふっ、素敵なお考えね。いいわ。わたくしの出身はギジャルバですわ。グリハルド家はピナラーラ山の麓に屋敷を構えていますの。」

「王都からそこまで遠くないようですが、失礼ながらもう何十年も宮廷に出仕されていませんね。」

「ええ、王家への忠誠を、与えられた地の民を守ることで示してまいりました。」

シュンツは俺たちが作った設定をスラスラと話す。

「しかし、ルチアーノ殿下がギジャルバの地にお越し遊ばしてわたくしたちはとうとう出会ったのです。殿下のお側にいたくて、こうしてご無沙汰しておりました宮廷に参りました。」

シュンツの言うことはまるきり嘘じゃない。実際余たちはギジャルバに小旅行に出かけた時、たまたまそこに住むグリハルドの当主に会ったのだ。
当主は余の境遇を知って同情してくれ、ある見返りと引き換えに叙爵証書と家系図の予備を貸してくれた。
家系図はその予備を出入りの商人に頼んで細工させミレイナ嬢の名を書き足した。
どちらも本物だから、専門家に鑑定されてもミレイナが架空だとバレてはいない。

当主が提示してきた協力する見返りは一つだけ。家宝の髪飾りをミレイナ嬢が常に身につける事だった。
なんとも不思議な条件だったけど、特に困る事もないから引き受けた。
おかげでこの作戦が決行できたってわけ。

「あの日君に会えてよかった。好きなだけ王宮にいていいからね。」

「あらぁ、王妃になってずっといていいのではなくて?」

「あっ、そうだよ!君は王妃になるんだ。」

「うふふ、嬉しいですわルチアーノ殿下♡」

向かいの席からエリザリケとマーレイの視線が刺さる。
しかし恐れることはない。
パパ上にだってエルペーニャ貴族にだって、一度もミレイナ嬢の存在を疑われたことはないからだ。
余の手配は万全だからな。

「……ミレイナ嬢、貴重な話をどうも。」

奴がしばらくの沈黙の後席を立った。
おーおーとっととどっか行っちゃえ。

「あら、もう行ってしまうの?エリザリケ様もマーレイ様も一緒にトランプしません?せっかく知り合ったのですから、同じ時を過ごしましょうよ。」

シュンツが屈託無い笑顔で誘う。
止めろよ。もう十分見せつけたんだから、わざわざ関わることないだろ。

「ミレイナ嬢、お気遣いは有り難いのですが、これからエリザリケ様はエルペーニャの船会社に投資を考えているフローレ公国の出資家たちと会合がございますので。」

ハキハキと説明したマーレイが続いて出口に向かう。
ふんっ、婚約破棄すればフローレの儲け話も無くなるのに無駄なこった。

「ルチアーノ、俺とも一緒に過ごそうな。」

出て行く直前、振り返った奴が整った顔に口の端だけ笑みを浮かべてのたまった。
また、と口の動きだけを最後に付け足して。

「っ……誰がっ!!余はお前なんかと同じ空間にいるのも嫌なんだからな!!」

俺の言葉に一層楽しげに笑って、エリザリケは出て行った。



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